INTERVIEW

きのこ帝国からもうさぎ帝国からも愛されるピアノ・トリオshabelが喋る、ホンネ(TRUE)とウソ(FALSE)

shabel『TRUE/FALSE』

 

冗談だらけの『TRUE/FALSE』全曲解説

――そして2018年、3枚目のEP『TRUE/FALSE』がリリースされます。まず1曲目はリード・トラックの“boolean”ですが、これはどういった曲ですか?

ぺいじゅん「shabelの曲は〈麻佑が持ってきたたくさんのメロディーを、僕が聴いて並べ替える。それをたけぶちさんに送ってビートを付けてもらう〉というやり方で作るんですけど、“boolean”のときはそのメロディーを、長短も気にせずに、とにかくたくさん作ってきてもらったんです。それを並べ替えつつ、ギュギュッと圧縮して出来たのが最初の形です。だからメロディーの展開が結構多くて」

2018年作『TRUE/FALSE』収録曲“boolean”
 

――その話だけを聞くとサウンド・コラージュみたいですけど、でも一貫したものも感じますよね。曲のテーマはありますか?

髙橋「2枚目のEP『Null Point Exception』の収録曲は、5曲中2曲がデモCDに入っていた“encore”、“domino toppling”のリメイクだったんですが、2枚目のEPがリリースされた2016年12月の時点で、バンドとしての持ち曲を全部出し切ってしまって。“boolean”に出てくるのは、そんなゼロの状態のときに生まれてきたメロディーたちなんです。ゼロになったからこそ、〈shabelはまだこういうメロディーがあるよ〉っていうのをいっぱい出したくなったというか。なので、テーマとしては〈0から1が生まれるたくさんの瞬間〉みたいなイメージが頭の中にありました」

たけぶち「ビート面でいえば、展開が多すぎるとお客さんがノリにくいから、ノリやすいようにあえて軽い疾走感のあるリズムを心掛けています。“bios”(『Restructuring of shabel』収録)っていう曲がちょうどそういうリズムなんですけど、それが好きっていう人がいたので〈お前らこういうのが聴きたいんだろ〉って(笑)」

ぺいじゅん「そういう意味では、shabelが今持ってるものを全部出してるのが“boolean”ですね。なので近年で作ってみて一番手応えがあった曲でもあります」

――〈boolean〉とはどういう意味なんですか?

たけぶち「我々3人とも本業でシステム・エンジニアをやっているんですが、〈boolean〉っていう言葉自体はプログラミングの文法のひとつで。真(TRUE)か偽(FALSE)かしかない演算子で、〈もし1+1が2だったらTRUE〉〈1+1が3だったらFALSE〉みたいな演算をするためのものです。アルバム・タイトルの『TRUE/FALSE』が先にあったので、〈じゃあ1曲目は“boolean”にしよう〉っていう感じで決まっただけで、意味は特にないんです」

――なるほど。

たけぶち「日本が誇るインスト・バンド、カシオペアのリーダーである野呂一生氏が〈インストは歌詞が無いからタイトルが歌詞である〉〈曲の風景をリスナーに伝えなければいけない義務がある〉〈だからタイトルは適当には決められないんだ〉ということを言っていたんです。だからカシオペアのヘヴィー・リスナーとして〈なんて素晴らしい考えだ〉と思いつつも、〈けど、shabelは全部適当なので、そんな堅いこと考えないよ〉ってことで、適当に決めてます」

ぺいじゅん「え、それカシオペアの話、要る(笑)!?

たけぶち「でも、リスナーに曲の意味を自由に想像してもらうためにも、〈boolean〉みたいな意味のない言葉をタイトルにしようと。〈何を想像してもあなたの自由です〉、そういう意味も曲名に込められているんです……今考えましたけど(笑)」

ぺいじゅん「絶対そうだと思った」

CASIOPEA 3rd“ASAYAKE”のライヴ映像
 

髙橋「でも曲名にメッセージ性を持たせたくないというのは実際にありますね。私は絵も描くのですが、絵にもタイトルは付けるけど、自由に感じてほしいのであくまで固定概念を与えたくないんですよね。だからたけぶちさんの話もあながち遠くはないかな」

――これまでの曲名にもIT用語・SE用語が使われてますが、それも特に意味は無い?

髙橋「IT用語・SE用語というところだと“bios”と“f.t.p.”の2曲(ファーストEPに収録)は、私がそれぞれからヒントを得て作った曲です。どんなものなのかは気になる方だけGoogleで画像検索してみていただければと」

ぺいじゅん「それ以外の曲は特に意味はないんですけど、今作の3曲目の“wall kicker”だけは違うね」

たけぶち「そうだね。これも実はSE用語で」

髙橋「ではない(笑)!

たけぶち「この曲は、ひたすらツービートで疾走するスラッシュメタル・ライクな曲なんですけど、激しい曲なので激しいエピソードを持たせてあげたいなと思って。で、自分の会社の先輩が働きすぎておかしくなっちゃって、ビルの壁をボコボコに蹴って帰ったという慟哭もののエピソードがあり、そことかけて“wall kicker”と名付けました(笑)」

髙橋「この曲はもともと、友達が結婚式でshabelを流したいって言ってくれて。でも結婚式で流すような曲がないなと思って作った曲なのに」

たけぶち「そうだったっけ? 悪いなあ、スラッシュメタルにしちゃって」

髙橋「言ったじゃん(笑)!

――では、飛ばしてしまった2曲目の“swamp hip”についても聞きたいのですが。

たけぶち「ここ10年くらい、インスト・バンドってみんなクラブ・ジャズを通ってきていて、それが当たり前になってるじゃないですか。shabelも〈fox capture planやtoconoma好きにオススメ〉なんて書かれることも多くなってきて、〈なら色気出すか〉と思って作ったのが最初ですね。クラブ・ジャズ的エレピで単調なリフを繰り返しながら、4つ打ちで展開していくっていう」

fox capture plan “エイジアン・ダンサー”
 

――そして4曲目は“dead eternity feeds all us living things”。直訳すると〈死んだ永遠が私たち生き物すべてを養う〉という物々しいタイトルですが、曲調はハネたリズムのワルツです。

たけぶち「この曲はデモCDの『I/O』時代からあった曲で、4拍子のピアノ・ソロ曲でした。当時は“default”というタイトルで、〈shabelの出発地点〉という意味で〈規定値〉という意味のタイトルを髙橋が付けたんですね。この曲をバンドで編曲することになり、まず3拍子にして、前半部分は〈君たちこういうのが好きでしょ〉っていうイメージのエセジャズにして」

髙橋「また出た! 〈君たちこういうのが好きでしょ〉(笑)」

たけぶち「続く展開を、8分の6拍子で3連ツービートで刻んでいます。この北欧のデスメタル界隈でよく使われるビートをみなさんに紹介したくて(笑)。で、作り終わった後にタイトルを、北欧のデスメタルのバンド、イン・フレイムスがデスメタル創成期に作った名曲“Dead Eternity”に引っかけて、曲名の各単語の頭文字を繋げると“default”になるように単語を続けていっただけです」

髙橋「まさかピアノ・ソロの曲がこんな形になるとはね(笑)」

イン・フレイムス“Dead Eternity”のライヴ映像
 

――本編最後の曲は“nervous breakdown”。同じようなリフが続くさまは、同じ階段をずっと登る騙し絵を想像させられました。

たけぶち「この曲も、胃カメラを飲んだら本当につらくて〈胃カメラ〉って仮タイトルだったんですけど(笑)」

髙橋「でも〈胃カメラ〉っていうタイトルだけは抵抗しましたね(笑)。この曲はアルバムの中で一番最後に作った曲なんですけど、ラスト1曲ということもあって我が出たのか、〈自分の作った構成をなるべくそのまま使わせてほしい〉って強く2人に要望していたんです。それで、作曲するときにトランプのゲームが進行していくところを思い描きながら作っていたこともあったので、トランプのゲームの名前にしたいと言ったんです。〈ダウト〉とか〈ババ抜き〉とか」

たけぶち「それで〈神経衰弱〉を英訳したタイトルになったんですけど、〈nervous breakdown〉は本当に神経が衰弱するほうの意味で(笑)。それが採用されてますけどね」

ぺいじゅん「ただ、このEPのこだわりとして、“boolean”で始まって“nervous breakdown”で終わるようにしたかったというのはありますね。どっちもピアノのアルペジオで始まって、明と暗が最初と最後にあるのがいいと思ったんです」

――そしてボーナス・トラックとしてLINEスタンプ等で人気のキャラクター〈うさぎ帝国〉のキャラクター・ソング“うさぎ帝国のうた”が収録されています。このコラボのきっかけは?

髙橋「うさぎ帝国の中の人と私が絵を通じて仲良くなって、大阪で一緒に絵のイヴェントをやったり、コラボグッズも作ったりしてるんですが、歌に関しては出会って間もない頃にライヴに来てくれたとき、〈うさぎ帝国の曲作ってよ!〉って言われたのが始まりですね。依頼してもらった時点で、中の人の“うさぎ帝国のうた”のイメージが結構固まっていて、それがアニソンやゲーム音楽みたいな方向性だと感じたので、ゲーム音楽を作っていたときの感覚が活かせると思ったんです。それで、shabelの音楽とうまく融合しようと思って、これまでのshabelではあまり使ってなかった電子音をバリバリ使っています」

“うさぎ帝国のうた”MV
 

――もうひとつ、アルバムのアートワークも髙橋さんが担当されていて。

髙橋「はい。アルバムが出来上がった後に、曲を聴きながら手が動くまま描いてます。何かイメージがあるわけではないんですけど、今作で言えば、たぶんリード曲である“boolean”のイメージが強く入ってはいるのかな」

『TRUE/FALSE』アートワーク
 

 

結局shabelって何バンドなのよ

――『TRUE/FALSE』について一通りお聞きする中で、〈いろんなジャンルを採り入れることに抵抗がない〉といったお話が出ましたが、shabelは現状、大別するとジャズというカテゴリに位置しています。例えば自分たちのCDをショップに置くとしたらどのジャンルに置きますか?

ぺいじゅん「僕は現状通りJ-Jazzのコーナーに置いていただきたくて。他に置くとしたらロック/ポップスだと思うんですけど、そこにいたらこうやって目にかけてもらえることなんてなかったと思うので、J-Jazzっていう括りだからこそ〈これジャズじゃなくない?〉って浮上できたんだと思うし、手に取ってくれる方も増えたと思うんですよね」

たけぶち「僕もそう思いますね。shabelはジャズではないんですけど、そんなこと言ったらカシオペアだってT-SQUAREだって〈あれがジャズだ〉って定義するのはなかなか難しいと思うんです。それに、例えばジャズ系バンドマンに間違って手に取ってもらって、〈ジャズにツーバス入れるのもアリだな〉なんて思えてもらたら嬉しいですからね。どんどん世の中がデスメタル化していけばいいなと(笑)」

髙橋「またツーバスの啓蒙活動してる(笑)。私もJ-Jazzでいいと思います。ジャズのコーナーに来られる方は他のジャズのCDと一緒に買ってくださる方も多いですし、ジャケ買いのチャンスもあるだろうし。だけど、遊びでJ-Popにも置いてみたい気持ちもあって。shabelはメロディーを特に意識して作っているので、歌モノしか聴いたことない人にも聴いてもらいたいです」

――じゃあshabelってジャンルで言うと何バンドですか? ジャズ・バンドですか?

髙橋「ジャズ……かなあ」

たけぶち「メロディック・デスメタルじゃない(笑)?

一同「(笑)」

ぺいじゅん「まあ確かにジャズよりかはメロディックだしデスメタルだからメロディック・デスメタルではある。そう意味では間違いではないんだけど、ジャズじゃないのにジャズっぽいこともやってるし、円グラフで〈shabelの何%はジャズです〉〈何%がデスメタルです〉って表現するよりも、〈いろんな要素の全部があってshabelです〉っていう感じなのかな。これが自分のやりたいことだけをやる人が集まった結果ですね。そういう意味では新しいのかもしれない」

――そういう実態があるのに無い、みたいな感じが〈TRUE〉であり〈FALSE〉なのかもしれませんね。

ぺいじゅん「〈TRUE〉も〈FALSE〉も、要素が全部合わさってshabelなんだろうな」

たけぶち「うまいこと言った!」

ぺいじゅん「でしょ(笑)?

一同「(笑)」

 


Live Information
shabel 3rd EP『TRUE/FALSE』レコ発イヴェント

2018年3月21日(水・祝) 東京・下北沢mona records
開場/開演:未定
出演:shabel、百様箱、Gecko & Tokage Parade
詳細はshabelオフィシャルサイトにて

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