INTERVIEW

いいポップスと悪いポップスの境界線を狙う―エレクトロ・ロックの新鋭ラモナ・フラワーズ、来るべき新アルバムを語る

いいポップスと悪いポップスの境界線を狙う―エレクトロ・ロックの新鋭ラモナ・フラワーズ、来るべき新アルバムを語る

「ベイビー・ドライバー」(2017年)をはじめ、音楽ファンにも人気の高い作品を数多く生み出してきた映画監督エドガー・ライトの代表作「スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団」(2010年)に登場する、魅力的なヒロインから名前を拝借した英国ブリストルの5人組、ラモナ・フラワーズ。

Mikikiでは、2017年夏に〈フジロック〉参加のため初来日を果たしたメンバー3名に取材を行っているが(★記事はこちら)、それから半年も経たずにバンドは単独公演のため再び来日。そのタイミングで今回は、メンバー全員にインタヴューすることができた。先行で公開された“Strangers”がリード曲となる、現在制作中のニュー・アルバム(今年リリース予定)についてや、レコーディング中に聴いていた音楽のことなど、話してもらった。

(左から)サム・ジェ-ムス、ウェイン・ジョーンズ、スティーヴ・バード、エド・ガリモア、デイヴ・ベッツ

 

タイトル・トラック“Strangers”で、全体の方向性が決まったんだ

――前回の来日は7月でしたが、〈フジロック〉は実際に出てみてどうでした?

サム・ジェームス(ギター)「とても楽しかったよ。今まで自分たちが出たフェスの中でも最高にアメイジングなフェスの1つだったね。結構、早い時間の出番だったのにオーディエンスがたくさん集まってくれたし、僕らの演奏を熱心に聴いてくれて嬉しかったよ。だいたい、イギリスでは朝の10時半から演奏が始まるなんてことはまずないからさ(笑)」

スティーヴ・バード(ヴォーカル)「10時半からウォッカは呑まないしね(笑)」

――あれから半年も経たずに来日ということになりますよね。この間はあんなに暑かったのに、今回はとても寒くて驚いたんじゃないですか?

※取材は2017年12月16日の来日公演の前日に敢行

ウェイン・ジョーンズ(ベース)「え、どこが寒いって(笑)? 俺たちイングランドに住んでいるんだよ、こんなの寒いうちに入らないよ! 短パンでも平気だね」

スティーヴ「(笑)。日本は大好きな国なので、こんなに早く来られて嬉しいよ。早くライヴがやりたくてウズウズしている」

サム「僕も日本のカルチャーや食べ物が大好きなんだ。東京観光はちょっとしたアドベンチャーって感じでいつもエキサイティングな気分になるよ。今、Facebookの公式ページは、トップ画像が日本で撮った写真になっているくらい。あれはすごくお気に入りの一枚だよ」

※現在は変更

――なるほど。では、制作中というニュー・アルバムからの先行シングル“Strangers”はどのように作られたのでしょうか。

ウェイン「前回のEP(2017年の『Magnify』)を作った後、最初に出来たのがこの曲だったんだ。これはすごくユニークな過程を経て出来上がったんだよね。というのも、各メンバーがバラバラにスタジオ入りして、少しずつビルドアップさせていったんだ」

デイヴ・ベッツ(キーボード)「別に、あえてそういう制作方法を試したわけではなくて、偶然の産物なんだよね。例えば最初にエドとウェインがスタジオ入りして作業を始め、彼らがランチ休憩で外に出て行ったのとほぼ同じタイミングで僕がスタジオに入り、途中まで出来上がっているトラックを聴く。で、かっこいいなと思ったので新たなアイデアを足して、さらに他のメンバーが……という感じで重ねていった」

――そういう作り方をしたことで、普段とは曲調が変わったりはしました?

スティーヴ「いや、過程がユニークだっただけで、特に曲調に影響はなかったよ(笑)。それぞれが楽曲のアイデアを持ち寄って、それをみんなで1つにまとめ上げ、最終的にプロデューサーが仕上げていくというのが僕らの通常のやり方なのだけど」

――なるほど。とはいえ、アルバムのタイトルは『Strangers』になるとのことで、タイトル・トラックにもなるわけですから、“Strangers”には特別な思い入れがあるんじゃないですか?

エド・ガリモア(ドラムス)「そうだね。この曲がニュー・アルバムの方向性を決定づけてくれたから。しかも、アルバムに収録されるすべての曲が〈Strangers〉というタグを付けられるぐらいの共通した要素も持ち合わせているんだ。そういう意味でも、非常にいいタイトルが付いていると思うよ」

 

〈エレクトロ・ドリームポップ〉、あるいは〈ディスコティック・ドリームポップ〉?

――“Strangers”のミュージック・ビデオでは、アメリカの公開オーディション番組「アメリカズ・ゴット・タレント」に出演していたキッド・ザ・ウィズ(Kid the Wiz)が主演を務めていますよね。

サム「そうなんだ。今までの僕らのビデオって、どちらかというとシリアスな内容のものが多かったので、今回はちょっと楽しい感じにしたかったというのがまずあってさ。それで、どんなビデオがいいのかみんなで考えていた時、ディレクターがキッドの映像を観せてくれてね。僕らも一発で気に入って、彼にオファーしたらOKしてくれたというわけ」

デイヴ「本当はキッドじゃなくてエドが踊る予定だったんだけどね、バック・ダンサーとか付けて(笑)」

――それはぜひ観たかったです(笑)。キッド本人には会ったんですか?

サム「いや、まだなんだ。会ってみたいけどね。彼の方からInstagram経由でメッセージを送ってくれたりはしてくれて。僕も彼のアカウントをフォローしてるんだけど、あのビデオで共演していた、彼の実際の彼女とスパイシーチキンを仲良さそうに食べてる様子なんかが写ってて微笑ましかったよ(笑)」

――あのビデオって、SNSに夢中になっている人をちょっと揶揄した内容ですけど、ストーリーはバンドで考えたもの?

サム「あれは監督のアイデアだね。そばにいる恋人のことより、まだ見ぬSNS上の相手の方がミステリアスで魅力的に感じるんだったら、僕らもストレンジャー(他人同士)のままの方がお互い刺激だったのかもね?っていう……(笑)。確かに、実生活でもそういう経験を何度かしたことがあるよ。SNSだけじゃなくて、例えばクラブとかへ遊びに行って誰かと出会った時の、その関係性を築き上げていく過程が一番楽しいというかさ。そこから先、長く続くかどうか?っていうのは相手とかタイミング次第なんだよね」

――確かに。ちなみにこの曲は3種類のリミックスも発表されていますよね。Glokことアンディ・ベル(ライド、元オアシス/ビーディ・アイ)が参加しているのは驚きました。

サム「うん、僕らも驚いた(笑)。彼のようなスーパースターが僕らの音楽を気に入ってくれて、リミックスまで手がけてくれたのは本当に光栄だよ」

スティーヴ「オアシスは大好きなバンドだしね。そういえばちょうど今朝もノエル・ギャラガーの新譜を聴いていたところだよ(笑)」

――では、ニュー・アルバムについても少し訊いていきたいのですが、これまでの作品との違いというと?

ウェイン「以前のアルバムはバンドでジャム・セッションしながら作った曲や、PC上でアレンジを構築した曲が混じり合っていたから、曲ごとにアレンジの方向性もかなり違っていたのだけど、今回はアルバムの方向性を決めてから、作業に入るまでの期間がものすごく短いんだ。その分、集中して作業しているから焦点がグッと絞られているし、アプローチの仕方もそんなに散漫になっていないんだよね。当然、これまで以上に自信作となりそうだし、今後はこういう制作方法でやっていきたいと思っているよ」

――新作のサウンドのテーマやコンセプトは?

サム「なんだろう……〈エレクトロ・ドリームポップ〉とでも言うべきかな。あるいは〈ディスコティック・ドリームポップ〉(笑)? 以前の僕らは、サウンド的にも若干シリアスな側面が強かったと思うんだけど、今回は少し楽し気な感じを心がけているんだ。ただ、歌詞はまだまだダークな側面があって、それがサウンドとユニークな相乗効果を生み出しているとも思う。あと、以前よりもソウルフルな楽曲が増えているかもね。意図してそうなったというよりも、この5人で曲を作り続けているうちに、自然とそっちの方向へ向かっていっているという感じかな」

――新作のプロデュースはクリス・ゼイン(パッション・ピット、フレンドリー・ファイアーズなど)で、彼とはセカンド・アルバム『Part Time Spies』(2016年)からの付き合いだと思うんですけど、お互いの関係性に変化はありますか?

スティーヴ「今となってはもう〈仲の良い友人〉という感じだね。彼と仕事をしていて良いなと思うのは、常に僕らと同じような考えを持ってくれているということ。わざわざ口に出さなくても、バンドが何をやりたいかを把握し、それをサウンドとして具現化させてくれるんだ。ある意味では〈6人目のメンバー〉とも言えるね」

『Part Time Spies』収録曲“Run Like Lola”
 

――インフォメーションを見ると、共作者としてKK (Kosuke Kasza)という方がクレジットされていますよね?

サム「そう、彼はクリスと同じチームに所属している日本人で、曲作りにも深く関わってくれている。メンバー4人だけで作業していると、時には行き詰まってしまったり、ちょっとしたことで険悪な雰囲気になってしまったりする瞬間がどうしてもあるんだけど、そんな時にコウスケがフレッシュなアイデアをくれたり、上手く緩衝材になってくれたりするんだ。いい奴だし。一緒にいて楽しいよ」

 

〈いいポップス〉と〈悪いポップス〉の境界線を狙う

――ちなみに、新作の制作中によく聴いている音楽は?

スティーヴ「僕はサンファのデビュー作『Process』(2017年)をよく聴いてる。彼は確か〈フジロック〉にも出てたよね?」

デイヴ「一昨年のアルバムだけど、アンダーソン・パックの『Malibu』はよく聴いているよ」

エド「僕はサンダーキャットの『Drunk』かな。サンダーキャットはメンバー全員が好きだね。例えば、僕らが共通して好きなサンダーキャットからの影響は、新作の、特にドラムやベースなどリズム・パートに現れていると思う」

スティーヴ「そうだね、何かしらの影響は必ず受けていると思う。もちろん、それ以外でも今まで自分たちが聴いてきた音楽が根底にはあるんだけど」

『Drunk』収録曲“Show You The Way”
 

――サンダーキャットは前回のインタヴューでも挙げてくれていましたね。では、アルバムに収録予定の楽曲で、特に思い入れのあるものは?

スティーヴ「僕は“Ghost”という曲かな。作るのが大変だったんだ。この曲は当初、“Coconut”っていうタイトルが付いていて(笑)、サウンドは良かったんだけどメロディーが思いつかなくてね。最終的にコード進行を変えてみたら、やっとしっくりくるようになった。歌詞も納得のいくものがなかなか出来ずに何度か書き直したし、そういう意味で思い入れの強い曲だよ」

エド「“Come Alive”という曲だね。この曲はちょっとポップ過ぎて、バンドとしてはリスクが大きいと思ったんだ。バンド内の暗黙の了解として、〈ラモナ・フラワーズではあまりポップな曲はやらないように〉というのがある気がしていてね。でも最終的に、自然の成り行きに任せることにしたんだ。〈ポップに仕上がりそうなら、それでいいや!〉って。結果、すごくお気に入りの曲になったよ。リリースを楽しみにしていてね」

――〈ポップ過ぎる=リスクが大きい〉というのは、具体的にはどういうこと?

サム「つまり、ポップスにはビートルズやウィークエンド、ケイティ・ペリーみたいな〈いいポップス〉と、思い出したくもないような〈悪いポップス〉というのがあると思っていて(笑)。その境界線を、超えないようにすることが大事だと思うんだよ。今回、“Ghost”は境界線ギリギリのところまで踏み込んでみた曲なんだ。ほかにも新作の楽曲では、リズム・パターンでかなり実験的なことをしていたり、ヴォーカルも今までにないアプローチに挑戦してりしているよ」

――他に、レコーディング中のエピソードとして印象に残っていることはありますか?

デイヴ「そうだなあ……〈誰が一番辛いものを食べられるか選手権〉を開催したことかな(笑)」

エド「あとは、カモに行く手を阻まれたことが印象に残ってるかな(笑)。スタジオはブリストルからちょっと離れた、かなり田舎の方にあって、買い出しなんかは近くの町まで車で行くんだけど、あるとき道の真ん中にカモがいてさ。まったく動かないんだよ。ヘッドライトで照らしても、クラクションを鳴らしてもビクともしない(笑)。もちろん轢くわけにもいかないからさ、外に出て道の端まで誘導したっていうことがあったよ」

――(笑)。では、最後に2018年の展望を聞かせてください。

スティーヴ「ニュー・アルバムを引っさげて世界中をツアーするよ。USツアーも決まっているし、次はもっと多くの都市でライヴができることを願ってる。他のアジアの国やヨーロッパ、いろんなところへ行きたいし、もちろん日本にも帰ってきたい。その合間に新曲もたくさん書いて、2019年にはまたその次のアルバムが出せるといいな。とにかく、今作が自分たちにとって自信作になりそうなので、より多くの人に聴いてもらえるようにしたいね」

サム「僕らはレディオヘッドが大好きなんだけど、彼らはアルバムを出すたびに新しい挑戦をしているよね? しかも常にかっこいいっていうのは、バンドとして理想の形だと思う。なので、僕らが今後リリースするどのアルバムも、それまでとはまったく違うものにしたいな。そういうことが自然にできるバンドになれたら最高だよね」

2016年のパフォーマンス映像

 

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