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自分にはないメロディーを歌う、その違和感が良い

――“ヴィレッジ・ファーマシー”は、Homecomingsにとって自身の音源としては初となる日本語詞の楽曲ですが、どういうふうに出来ていったんですか?

畳野「これは作曲が私で作詞が福富くんというホムカミとしては新しいスタイルで作った曲」

――Homecomingsが楽曲提供したNegiccoの“ともだちがいない!”(2017年)もそうでしたよね。

畳野「あの曲がなんとなく上手くいったので、その感じで平賀さち枝とホームカミングスでも作ろうと、まず私が曲を作ったんです。私のなかにリズムのイメージがなんとなくあって、そのうえでいちばんこだわった部分は、同じメロディーがずっと続く曲にしようということ。言葉は変わるけどメロディーはずっと一緒みたいな、そういう楽曲を作ってみたかった。そこで出来たものを一回福富くんに聴かせて、彼からは〈最後にグッと上がる大サビがあったほうがいいかもしれないね〉という意見を受けて、またそれを付け足してみて」

――パワフルなドラムにはスタジアム感もあるし、Homecomingsのなかでも屈指のアンセミックなギター・ロックになりましたね。ひたすらループするAメロに、淡々と日本語を乗せていくようで、徐々に熱を帯びていく昂揚感が素晴らしいなと。

福富「曲が同じメロディーの繰り返しやったから、じゃあ歌詞ではむしろ同じ単語を1つも繰り返さないようにしようと考えていました。そのうえで、最後のサビで一つ句点を打てるようなものを書けたらいいなと」

――福富さんとしては、日本語で歌詞を書くうえで苦労した面もあったんじゃないですか?

福富「Negiccoの“ともだちがいない!”を作ったときはめちゃくちゃ考えたんですけど、“ヴィレッジ・ファーマシー”は“ともだちがいない!”でポンと壁を越えられた直後に作ったので、そのままビヨーンと行けた感じもあって。書く方法みたいなものはとりあえずわかったし、英語で作っていた世界観を日本語に落とす方法は見つけられた」

――同じメロディーがずっと循環していく構造の曲をやりたくなったのには、何か外的な要因があったんですか?

畳野「私は、昔からそうなんですけど、はっきりとしたイメージがないまま作り出すタイプなんです。だから、今回も参考音源みたいなのは、まったくなくて。〈“カントリーロード”と両 A 面で入れるとしたら、どういう曲がいいかな?〉というのは考えつつ、“カントリーロード”が結構元気な曲なので、もうちょっと陰がある、かつホムカミらしいものを作ろうと。 2コードでシンプルだけど良い……みたいな曲が私たちの得意なところだとは、うっすら勘付いていて、それをふまえた日本語の楽曲をずっと作りたいなと思っていたんですよ」

――平賀さんが“ヴィレッジ・ファーマシー”を聴いたときの感想は?

平賀「第一印象ですごく爽やかで涼しげな曲だなと思いました。メロディーは変わらず覚えやすくて歌いやすいし、歌詞も口に出して歌いたくなる風通しの良さがある。自分で作詞作曲をしていると人の曲を歌うのに抵抗を感じるときもあるんですけど、ホムカミの曲は私にとってもすごく入り込みやすいし歌いやすいんですよ」

――この曲は、ヴォーカルの分担も“白い光の朝に”や“カントリーロード”とは違っていますね。平賀さんのソロ・ヴォーカルは、最後の最後でしか出てこない。

畳野「いつも〈一番はさっちゃん、二番は私〉というようにわかりやすく分けるんですけど、今回メロディーはずっと一緒だし、いつもと違う感じにしたいなというのも最初からありました。そこでいろいろと試した結果、いまのがいちばんハマったというか。すごく贅沢な平賀さち枝の使い方なんですけど(笑)、最後にさっちゃんが歌って、そこがすごくいいというものにしたかった」

――大サビで畳野さんと平賀さんの声が一瞬重なる箇所もすごく素敵です。平賀さんが“カントリーロード”を指して言っていたように、この曲も平賀さんが最後に歌うことで、〈より遠くに届く曲〉になっていると感じました。

畳野「さっちゃんのメロディーを私が歌うことが当たり前だったんですけど、今回は私がいつも英語で作っているメロディーに日本語をのせて、それをさっちゃんが歌うという初の試みで、すごくおもしろかった。さっちゃんの曲にはない感じのメロディーを、さっちゃんが歌うことによって出てくる、そのちょっとした違和感みたいなものが、逆にすごく良かったり」

――そして、それぞれ単独の名義で平賀さんの“夏風邪”とHomecomingsによるペイヴメントのカヴァー“スピット・オン・ア・ストレンジャー”も収録されています。

畳野「この2曲も実はカントリーロードと一緒に録ってたんです。コラボを5曲とか入れるとなるとすごく大変というか(笑)。お互いの曲が一曲ずつ入っていてもいいねってことで、ちょうど私たちはリリースも控えていたので、じゃあいちばん好きなバンドであるペイヴメントのカヴァーにしようと。それに加えて、さっちゃんの弾き語りを入れたら、作品として良いバランスだなとは想像できたので」

――平賀さんが“夏風邪”を選んだ理由は?

平賀「レコーディング当日まで何を録るかを決めてなかったので、この曲はその場で急いで作ったんです。ホムカミががんばってレコーディングをしている間に、私もがんばって曲を作っていて(笑)」

畳野「そうとは思えないくらいのいい曲なんですよね。“夏風邪”を録ったときは、他のメンバーがいなくて、私1人でさっちゃんが弾き語りしているのを見ていたんですけど、最初の1テイクからもうめちゃくちゃ最高だったんですよ。〈あ、これはいい曲だ〉って泣きそうになりながら聴いていた」

 

本当に尊いもの

――話を伺って、今回のEPが想像以上に長い期間を経て完成した作品だったことに驚きました。みなさんが、あらためて一つの作品として完成したものを聴いてみての感想は?

畳野「私たちの故郷で撮影したジャケットとアー写を含め、はっきりと目に見えるものとして出来上がった段階で、しっかりとしたコンセプトのある、すごくいい1枚になったなって思いました。さっきも伝えてくれたけど、ノスタルジックというか、そういう作品に自然となってたんだなというのを発見できた。それまでは、時間を置いたということも関係していると思うんですけど、これがどんな作品になっているのか、ホントにわかんなかったんですよ」

福富「だから、狙ったわけでなく、曲も歌詞もすべてが繋がっている作品になったんですよね」

平賀「こんなに長い間、こういうコラボレーションが続くのって、あんまりないと思うんです。やっぱりミュージシャン同士だとぶつかり合うことも多いだろうし、一回で懲りるケースが普通だと思うんですけど、なんか私とホムカミは距離感とかもすごく不思議だし、喧嘩とかも一切ないんですよ(笑)」

畳野「まったくない」

平賀「レコーディングでぶつかったり、揉めたりすることもないし、奪い合いとかもない。だから、このユニットはすごく貴重なものという気持ちです」

畳野「私もそう思う。なんかもう……奇跡(笑)。私は、トヤマタクロウくんが録ってくれた今回のアーティスト写真をすごく気に入っているんですけど、これは石川県の手取フィッシュランドという私と福富くんの地元にある遊園地で撮影したんです。その日は天気も神懸かっていて、石川って70%ぐらい曇りだし、しかもこの前日には大雪が降っていたんですけど、その日の朝になるとむちゃくちゃ晴れていて、〈これはもう、いい写真撮れるよ〉と思った。

みんなで遊園地に行って、一日中ただただ歩いて、自然な流れで録れたし、その日はすごく楽しかったんですよね。それが写真を見てもわかるし、表情がほんと最高で、〈みんな、こういう顔をするようになったんだなー、ちょっと大人っぽくなったな〉とか、他人じゃなくて自分たちのことだけどなんか泣けてくるというか、〈めっちゃいい顔してるなあ〉と思いながら見られるんです」

平賀「……(ハンカチで目元を押さえる)」

畳野「わ! さっちゃんが泣いちゃった」

平賀「いや、なんかもう嬉しくて。そうだなあと思って、本当に尊いものなんです」

畳野「そう、尊い。前に録っていた曲が、いまこうやってちゃんと形になり、すごく大切な意味を持っているというのが感慨深い。うん……本当に奇跡が合わさった作品なんだなと思います」

 


Live Information

〈平賀さち枝とホームカミングス『カントリーロード/ヴィレッジ・ファーマシー』リリース記念ミニライヴ&サイン会〉
2018年2月12日(月・祝)タワーレコード新宿店7Fイヴェントスペース
出演:平賀さち枝、畳野彩加(Homecomings)
開演 18:00
入場無料

2018年3月11日(日)タワーレコード京都店
出演:平賀さち枝、畳野彩加(Homecomings)
開演 15:30
入場無料

〈SECOND ROYAL RECORDS 16th ANNIVERSARY PARTY! at 磔磔〉
2018年3月23日(金)京都・磔磔
出演:平賀さち枝とホームカミングス/LEARNERS/カジヒデキ
開場/開演 18:00/18:30
前売り3,700円(ドリンク代別)
※ぴあ(Pコード:106-895)、ローソンチケット(Lコード:55328)
問い合わせ:GREENS 06-6882-1224
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