NIGHTMARES ON WAX
旅先で得た刺激を糧に着実な進化を見せたニュー・アルバムが、30年目の未来を提示する!

 2013年に前作『Feelin' Good』をリリースして以降、2015年のベスト盤『N.O.W. Is The Time』を挿み、断続的にツアーを続けていたというナイトメアズ・オン・ワックス(以下NOW)ことジョージ・エヴリン。「いろんな所を旅してきて思うのは、土地にはそれぞれ独特のエネルギーがあるってことで、本当にみんな違うんだ。そのエネルギーに身を任せてみると、インスピレーションが湧くというか、また違う自分が見えてくるというかね」と言うように、現在、居を構えるイビザと地元リーズでの作業に加え、さまざまな土地やそこで出会った人たちからのヴァイブスも吸収して完成したのが5年ぶりのオリジナル・アルバム『Shape The Future』だ。

NIGHTMARES ON WAX 『Shape The Future』 Warp/BEAT(2018)

 前作から引き続き、ジャズ畑で活躍するセバスチャン・シュトゥッドゥニツキーとウォルフガング・ハフナーの両名が中心となってバックアップしたこの新作は、相も変わらずダブやヒップホップのエキスをたっぷり含んだブレイクビーツが、ソウルフルでレイドバックした心地良いテンポで流れていく。それでいて、「気が付いたら〈オーマイゴッド、ずいぶん歌が多いな!〉って状況になったのはこれが初めてだった。よっぽど言いたいことがあったのかも(笑)」と本人がおどけるほど、ヴォーカルをフィーチャーした曲が多く、LSK参加のいかにもNOWらしいダビーな“Tomorrow”、ビートを聴いたジョーダン・ラカイが〈これ、絶対俺が曲を書く!〉と息巻いてネオ・ソウルな佇まいに仕上げた“Typical”、モーゼズのゴスペル・ライクな歌唱とストリングスが味わい深く交わる“Citizen Kane”、デトロイトの女性シンガーであるリトル・アンの名曲“Deep Shadows”のカヴァー(ここに起用されたシェイディ・ウォーカーは今後NOWのライヴにも参加する予定だとか)があったり、良質で本格的なヴォーカル・ナンバーが堂々と並ぶ。これまで自身のルーツの一部であるソウル・ミュージックをインストという形表現することが多かったNOWにとって、これらは実に新鮮なアプローチと言えるだろう。

 また「オーケストレーションにかけて彼の知識は半端じゃないからね。ジャズについてもめちゃくちゃ詳しい」と全幅の信頼を寄せているセバスチャンのストリングスも、本作を過去になくドラマティックでリッチな気分に仕上げ、メキシコでのペヨーテ・セレモニーのフィールド・レコーディングを発展させた“Back To Nature”や、ゴスペルのフィーリングを採り入れたタイトル曲でのその効果はてきめんだ。NOWらしさを形成したうえで変化にも富んだ本作は、「発見ってやつは、こっちにその用意があれば向こうからやってくるものだ」「挑戦なくして報酬なし」と旅からオープンな姿勢を得たジョージだからこそ辿り着いた作品と言えよう。〈未来は自分で作れ〉とポジティヴな意味の込められたアルバム・タイトルからもそんな彼の信条が感じ取れるはずだ。