どんな感情であっても音楽になることによって、すごく価値のあるアートになる
――では、FALSETTOSの曲作りについて聞かせてください。いつもどうやっていますか?
Miuko「セッションで作っている曲が多いですね。私はひとつのジャンルに固まったりだとか、ひとつのコンセプトにこだわるみたいなことが、たぶんあんまり好きじゃないんです。1曲のなかでも相反する要素があったりとか、アルバム全体でも曲にヴァラエティーがあったりする方が好きなんです。
どんな感情であっても――それがたとえネガティヴな感情であっても、音楽になることによって、すごく価値のあるアートになるところがいいなあって思っています。曲を作る時もそういうことを大切にしているし、アルバムに関してもそういういろいろなものがあっていいんだということを大切にしています」
――その意味では、このファースト・アルバムの9曲をどう構成しようと考えましたか?
Miuko「アルバム全体を通して聴いた時に、一見バラバラな曲の寄せ集めになりそうでありながら、ひとつの物語みたいなのがあったらいいなと思いました。具体的なことで言うと、曲の終わりと次の曲の始めをちょっと被せてみたりとか、サウンド・エフェクトを入れてみたりとか、そういうひとつの作品として聴けるようなものにしたいなあと。だから、バラバラでありつつ一体感があるみたいなことは目指しました。
あとは、ずっとバンドでやっている曲も結構多いんですけど、なんとなくFALSETTOSというバンドとしてのメッセージみたいなものが――それは言葉にはならないものなんですけど、雰囲気として出来た気がしています。それをアルバムにも表せられたらいいなあって、そういうこともちょっと考えていました」
――1曲目がリードトラックでもある“6”ですが、これは結構古い曲なんですか?
Miuko「そうですね。バンドで一番最初に作った曲です」
――それをこのタイミングでアルバムに入れたのは……?
Miuko「良い曲だから。あはは(笑)!」
――どうやって出来た曲なんですか?
Miuko「この曲、ヤナ(柳智之)※と作ったんですよ」
Ingel「そうだっけ?」
Miuko「ふーみん(Fumie)が来られなかったのかな……。代わりにヤナが(ドラムを)叩いて」
――へー! そうなんですか。
Ingel「私が覚えているのは、〈サビでベース・ラインをこうやって弾くのと、こうやって弾くの、どっちがいい?〉ってヤナに訊いたら、〈それ、片方が6拍子だよ〉って言われて、でも、私はそういう拍子とかが全然わかんないから、〈あっ、そうなんだ~〉って言って。それで、曲名が通称“6”になって、最終的にタイトルも“6”になった気がする」
――良い話ですね。先日公開された “6”のミュージック・ビデオも最高でした。みなさん、ローラースケートを履いていて(笑)。
Ingel「ローラースケートを履いたのは15年ぶりくらい……? うそうそうそ。20年ぶりくらい……(笑)? もう、おっかなくて。それが逆に、フレッシュ(笑)」
Miuko「自分たちではシャーシャーって滑っている感じだったんですけど、実際の映像を観たら完全に……テレタビーズでした」
一同「(笑)」
――アルバムをストーリー的にしたいっていう話でしたけど、“Newborn Baby”で終わることにもやはり意味があるんですか?
Miuko「Fumieの1回目の産休の時に、私がたまたま作った曲ではあるんです。バンドの活動が止まっている時に、友達と私のソロ・プロジェクトでライヴをやろうってことになって、そのために書いた曲でした。その時に一緒にやった友達が〈とにかくポップなものをやりたい〉って言っていたので、〈じゃあ、ポップなものを作るか〉って書いた、一番気軽に作った曲かもしれないです(笑)。
それをバンドでもやっているうちに、変な魂みたいなものが曲に宿ってしまって。この曲はみんなで演奏しながら歌っていて、ユッキーはトランペットを吹いていたり、とにかく演奏が身体的にキツいんですよ(笑)。もう、みんな顔真っ赤みたいな感じで」
――こんなグッド・タイムな感じの曲なのに(笑)。
Miuko「うん。でも、その一生懸命さから出る何かがあったりするんです(笑)。あとはこの曲は、生まれて来る赤ちゃんの目線から、この世界の素晴らしさみたいなこととか、生まれてくることのよろこびみたいなものを表現している歌詞なので……。
それは、FALSETTOSで私が勝手にやりたいと思っていることの結構コアにあったりするんです。まあ、後づけではありますけど、バンドのメッセージと一番合っている気がするから、アルバムの最後がいいかなあと思って」
NYのこの感じ、完全に下北沢と一緒だなあと思いました
――そういえば、FALSETTOSはNYでライヴをやったんですよね?
Miuko「一昨年(2016年9月)ですね」
――みなさんにとって、それはどういう体験でした?
Miuko「私にとっては良い意味で〈世界の敷居が下がった〉というか。あ、NYのこの感じ、完全に下北沢と一緒だなあと思いました(笑)。〈変わんないなあ〉みたいな。でも、NYの若いアーティストのめちゃくちゃギラギラした感じは、やっぱり日本人よりも凄まじいものがある気がしたので、それはすごく刺激になりました」
Yukiko「私も日本と変わらないと思いました(笑)。ハコの特性とかもあったと思うんですけど、お客さんの近さと得られる反応っていうのが、ほぼ似たような感じでした」
Ingel「東京とNYの感じが近いんだよね」
――逆に考えると、FALSETTOSがやったことがNYでも通じたから、日本と変わらなかったと感じたのかもしれませんね。さっきおっしゃっていたように、〈世界中の人に聴いてもらいたい〉という動機があったということですが、海外でライヴをしたりすると、普通は〈すごく良い経験になって高まりました!〉みたいな感じになると思うんですけど……。
Miuko「あ~、そっか! 私たちは〈普通~〉みたいな(笑)」
――だから、FALSETTOSはそういったボーダーを超えていたんじゃないかという捉え方もできるなと思いました。
Miuko「MCだけ、ちょっとテンパりましたけどね、英語でしなきゃいけなかったので。うん、そのくらいですかね。あとは、やっぱり、東京のライヴハウスに比べると結構設備が……難しい場所もあったよね」
Ingel「ここで大丈夫なのかな?っていうね。事前にアンプが無いって言われていたりとか」
Miuko「そうだね。そういう意味でのテンパりはありましたけど。外国の人の前に立つから緊張するというのは無かった気がします」
――こうやって作品がひとつのパッケージとして出来ると、世界中の人がアクセスして、聴かれる機会が増えるし、いろいろな場所に呼ばれる機会も増えそうですよね。
Miuko「うんうん。そうですよね。そうなりたいですね」
――どこか行きたいところはありますか? ここでやってみたいとか?
Miuko「(IngelとYukikoに)いっぱいあるよね?」
Ingel「外(屋外)でライヴやったことないから……」
Miuko「外でやりたいね~。ずっと夢です」
――FALSETTOSが屋外でライヴをやったことがないというのは意外ですね。そっか。やっていそうな感じがしましたが。
Miuko「それこそ、野外って、竜ちゃん※が御殿場の自宅でやっている〈フジサンロクフェス〉でしかやったことないです(笑)」
Ingel「よそ様の家のガレージでね(笑)。あれもすごくいい場所だけど」
Miuko「フェスはほんっとに出たいですね。うん。あと、海外もまた行きたい。台湾とか、アジアに行きたいですね」
――坂本龍一さんの名前を使わせてもらって、アピールしたらいいじゃないですか。
Ingel「あっはっは(笑)! 坂本さんには、私たちのライヴに来てもらいたいですね!!」
Miuko「坂本さん、どうやったら来てくれるんだろうね? 私、1回手紙を書いたんですよ、commmons宛に。〈ラジオで褒めてくださってありがとうございました。アルバムを出したいんですけど、commmonsさんダメですか?〉って」
一同「(笑)」
Miuko「(Pヴァインのスタッフに)すみません、浮気して(笑)」
――最高の話だと思います(笑)。
Miuko「最初は、Pヴァインにも無視されました(笑)。Pヴァインは憧れだったので、昔デモを送ったんですけど、全然音沙汰なかった……(笑)」
一同「(笑)」
――でも、Pヴァインは実ったんですよ、結果。
Miuko「そうですね。はい。うれしいです、本当に」
Live Information
〈FALSETTOS 1st Album Release Party!〉
2018年2月9日(金) 東京・渋谷 LUSH
出演:FALSETTOS、NINJAS、NOINONE、sing on the pole、in the sun、TROPICAL DEATH
開場/開演:18:00/18:30
前売り/当日:2,000円/2,500円(いずれもドリンク代別)
〈FALSETTOS 1st Album 『FALSETTOS』 リリースツアー〉
2018年3月8日(木) 東京・渋谷 O-nest
出演:FALSETTOS、TAWINGS
2018年3月15日(木) 名古屋・鶴舞 K.Dハポン
出演:FALSETTOS、吉田省念
2018年3月16日(金)大阪・心斎橋 CONPASS
出演:FALSETTOS、快速東京
※各公演の詳細は後日発表。