INTERVIEW

【特集:DOG YEAR OF RAP】上京して自身の音楽性を探求してきたRude-αが、待望の新作『20』に込めた心情を語る

【特集:DOG YEAR OF RAP】上京して自身の音楽性を探求してきたRude-αが、待望の新作『20』に込めた心情を語る

栄光に向かって走る20歳の心情

 さまざまな分野で新世代の台頭が目覚ましいなか、沖縄からまた一人の新星が登場した。20歳のラッパー、Rude-α。コザ(沖縄市)の街に生まれ育った彼の周りには、早くから音楽があったという。ラップを始めるそもそものきっかけは16歳の頃、公園でダンスをしていた彼に、見ず知らずの地元のラッパーがたまたま声をかけてきたことだそう。

 「KDTってラッパーの人が近づいてきて、何だろうと思ったらフリースタイル仕掛けられたんです。全然ラップやったことなかったし返し方もわからなかったんですけど、とりあえずやり返したら、その人に〈お前、明日からラッパーな〉って言われて。『8マイル』とか映画の世界でラップは知ってましたけど、そこまでラップ聴いてたりとかしてなかったんですよ、それまでは」。

 

楽しくやろう

 以来、「いい意味でガキのまま、ピュアにやれてるのかなあって思います」とみずから語る活動を経て彼は一昨年、沖縄から東京へと活動の拠点を移すことに。

 「もともと〈ラップでメシを食う〉とかまったく考えてなくて、ただ楽しいからって理由で音楽やってたと思うし、大学には行ってましたけど何をやっていいかわからなくてふらふらしてたと思うんです、とっても。それで環境を変えて東京で音楽がんばってみようと思ったのが上京のきっかけです」。

Rude-α 20 TEEDA(2018)

 彼がこのほどリリースするEP『20』は、気持ち新たに音楽に向かうことのできるそうした環境のもと、制作された一枚だ。世間的にはフリースタイルのイメージが強いものの、「他のジャンルの人たちには負けたくないなっていうのがあるんですけど、同じラッパーにはそこまでライヴァル意識みたいなのはない」とも話す彼。チャンス・ザ・ラッパーやブルーノ・マーズ、アンダーソン・パークらと並び、1975やUA、BEGINらをフェイヴァリットに挙げる彼だけに、東京での人脈の広がりを多彩な音楽性で形にした今回のEPもまた、ある意味では自然なものなのかもしれない。「気分的にはホントに楽しくやろうっていうのが大きいです」と彼は話す。

 「シカゴ・フットワークみたいな曲だったり、音数の少ないトラックの上でラップっていうより語るみたいな曲もやりたいって話もしましたし、プロデューサーさんとアコギ一本で〈このフレーズで行きましょう〉とか、〈いまのテンション感いいじゃん〉とかやりとりをしながら曲作りを進めていきました。“Summer Melody”ではベックみたいなテイストの曲を作ってみたいって話をして。ライヴはバンドでやってるので、バンド・テイストの曲で〈こんな曲も持ってるぜっていうのを匂わしときたいですね〉って話をして作りましたね」。

 その一方で本作を「自分の心情の変化を詰め込んだ作品」とも語る所以はリリックにあり。その話は続く。

 「ふだんから見たものだったり感じたことを曲にしてるんですけど、上京してから感じたもの、例えば〈昔を振り返ってる自分〉とか〈上京してきてからの景色に戸惑ってる自分〉だったり、〈やってやるぞ、都会に花咲かすぞ〉みたいな気持ちだったりとか、ホント誰でも思ってるような心に抱えてるちょっとした弱さだったりとかを映せたEPになってるんじゃないかなと思います」。

 

優しい存在でありたい

 初めてクラブに足を踏み入れた時を思い返して歌う“Mirror Ball”や、疾走感のあるビートを駆け抜けるリリックの背景に彼が居を構える下北沢の風景も映り込む“この夜を超えて”などを経た“Happiness”は、身近な存在の死も引き寄せたペンがとりわけ彼の心をより深く掘り下げた曲に。もの哀しくも響くピアノやドラム・ループをバックに、エモーショナルな語りが届く。この曲はNHK近くの地下駐車場で声を録ったとか。

 「プロデューサーさんに〈これちょっと変わった感じで録れたらおもしろいね〉って言われて、〈昔iPhoneのボイスメモでよく録ってましたよ〉って言ったら、〈OK。じゃあそれやってみよう〉ってことになって。内容的には悲しみの中の喜び、喜びの後の悲しみ。ずっと一緒にいたいけど、人はいつか死んでしまうじゃないですか。いろんな人たちと笑って過ごしてる時間も、例えば死ぬ時に覚えてるのかなあと思ったりしてしまうし、いままで出会った人間で、これから先もう2度と会わない人もいるかもしれない。ホントにみんなどっかで笑ってくれてたらいいなあとか、いろんな思いが詰まってますね」。

 〈これから僕の目だけにしか映らない/目的地を探す旅に出るんだ〉――そう歌われる“Train”の歌詞の最後のライン〈Train Train 未来は僕の手の中〉は、言うまでもなく彼が敬愛するTHE BLUE HEARTSへのオマージュも含むものだ。そして、彼らに対してRude-αが抱く思いは、いちラッパーとして彼がめざすものでもある。

 「THE BLUE HEARTSがいいなと思うとこって、くどい言い方とかをせず、まっすぐな感じで、自分が子どもの頃に描いてたヒーロー像に当てはまってるんですよ。『少年ジャンプ』のマンガの主人公とかって、みんな強いけど優しくてまっすぐじゃないですか。フリースタイル・バトルが流行ってたりするのもあるけど、やっぱりラップって世間のイメージ的に暗い方向だし、怖い文化みたいな印象もある。自分も昔、母親に〈ラップ始めたから〉って言ったらけっこうそういうこと言われたんで。でも俺は教会、みんなの救いみたいな優しいところにいたいんです。このEPでもホントにストレートにモノを言おうとしてるので、通して聴いた時に恥ずかしいとかクサいとか思ってしまう人もいると思うんですけど、人の本質的な部分はそういうものだと思うし、こういうスタイルで走っていくよって感じです」。

 「自分が育った街にも、ここまでできるんだぜって見せたい」とも話してくれた彼の夢は、地元のヒーローとして、末は日本武道館のステージに立つこと。今回の『20』で、その歩みが本格的に始まる。

 「僕が小学生ぐらいの時はORANGE RANGEが地元のヒーローだったんですけど、自分がこうして音楽をやってることによって、子どもたちが声をかけてきてくれたりとかするんです。そういう子どもたちが大きくなった時にそのヒーローが自分だったらいいなと思ってるし、誰かが何かを始めるきっかけになれたらいいなと思います」。

 

Rude-αが自主企画ライヴ・イヴェント〈TEEDA〉に招いたアーティストの作品を一部紹介。

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