アイリッシュ・トラッド界の新世代! 新しい潮流〈ケルトグラス〉の第一線

 今年10月、ピーター・バラカン監修の音楽フェス〈LIVE MAGIC!〉二日目トリを含む日本ツアーを行い、各会場を熱狂の渦に包み込んだウィ・バンジョー・スリー。目下の最新作である3作目『String Theory』は、レーベルを通さないセルフ・リリースにも関わらず、米ビルボード・チャートのワールド部門で一位に。昨年にはホワイトハウスに招かれてオバマ前大統領の前で演奏するなど、名実ともにアイリッシュ・トラッドの新時代を牽引するグループだ。

 「バンジョー音楽の可能性をモダンに探求するのが、そもそもバンドを始めた起源。アイルランド音楽に加えて、ブルーグラスの奏法も取り入れた、バンジョーをベースにしたグループを結成したいと思った」

 バンドの中心人物、エンダ・ヒカヒルがそう言うように、彼らの音楽性の中心にあるのは様々な奏法で鳴らされる、バンジョーの豊かな響きである。

 「バンジョーは17世紀にアメリカで生まれた。アフリカから連れて来られた奴隷たちが、本当に辛い生活を音楽と共に生き抜いてきたという歴史がある。アイルランド音楽にも同じような側面がある。アイルランドも800年に渡ってほかの国に植民地化されてきた歴史があり、その中で音楽やダンスが大事な役割を担ってきた。また、今ブルーグラス等で一般的に使われる五弦バンジョーの5つ目の弦を付け加えたのは、実はアイルランド人なんだよ」

 ブルーグラスをはじめとする米南部のルーツ音楽を象徴するバンジョーという楽器の発展は、実はアメリカに入植したアイルランド人の歴史とも深く結びついていた。アイルランドとアメリカの伝統を結びつけるウィ・バンジョー・スリーは、その歴史を現代へと受け継ぎ更新している。彼らが先鞭をつけたケルトとアメリカのモダンな邂逅は、新しい潮流“ケルトグラス”と呼ばれ、若い世代にも注目されつつあるという。

 「例えば、エド・シーランのアルバム『÷』に収録された“ゴールウェイ・ガール”のゴールウェイとは、僕らの出身地の地名。そこで、彼はビオーガというアイルランドのバンドと一緒に曲を作ってる。そういう例もあって、多くのミュージシャンやバンドにとって、アイルランド音楽が今またクールになっている」

 彼らが未来に見据えるのは、ケルトグラスのさらなる発展と進歩。次に予定しているアルバムについて、エンダはこんな風に話してくれた。

 「次はオリジナル曲が多くなると思う。ケルトグラスのクリエイターとして認識されるようになって、その役割を全うするためには新しいものを生み出していかなくては。それが自分達の使命なんだ」