INTERVIEW

明かりを消して、自分自身と向き合う―ジュリアン・ベイカーが語った故郷での生活と不眠症、タトゥーの由来

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いまのエモは原点回帰して再びDIYやパンクに立ち返っている

――友人のフィービーの作品にはライアン・アダムスやコナー・オバーストのようなアーティストが参加していますけど、今後はあなたも自分のアルバムにゲストを招いてみたりしたいと思いますか?

「今作でもソロリティ・ノイズ(Sorority Noise)のメンバー(キャメロン・ブーシェ)がウッドウィンドやサックスで参加してくれているし、ヴァイオリンのカミーユ(・フォークナー/来日公演にも帯同)もストリングスを手がけているから、厳密には私ひとりで作り上げたアルバムではないのよね。ただ、今後はソングライティングの初期段階からコラボしていけたら楽しいだろうなとは思うわ」

――あなた自身は、トゥーシェ・アモーレやフライトゥンド・ラビットなどの曲(“How It Gets In”)で、フィーチャリングとして関わることが多いですよね。

「あの曲気に入ってくれた? トゥーシェ・アモーレは私にとって10代の時から大好きなバンドのひとつだったし、フライトゥンド・ラビットとの仕事もすごく有意義だった。だから、そういうコラボレーションもたくさんやってみたい」

――そういえば、以前ジョウブレイカーの“Accident Prone”をカヴァーしていましたけど、彼らの再結成ライヴは観ることができましたか?

「(親指を立てながら)イエス。あのフェスティヴァル……えーっと、そう、〈Riot Fest〉! めちゃくちゃクレイジーだった。ただ、よりによってパラモアとタイムテーブルが被っていたもんだから、ジョウブレイカーのステージが始まる20分前に1.5キロの距離を猛ダッシュしたの。それで到着したとたんに“Jet Black”のイントロが聴こえてきて、私ってツイてるなあと思った(笑)。信じられないくらい最高のショーだったわ。彼らの再結成が一夜限りのものじゃなくて、またツアーに出てるっていうこともファンとしては嬉しいわね」

※エモ、パンク、ハードコアの大御所が多数出演するシカゴの音楽フェスティバル。デンヴァーやトロントでも開催。

――あなたの交友関係やルーツを紐解いていくと、やはりハードコアやエモに辿り着く気がします。特にエモは映画「EMO the Musical」(2016年)でも描かれていますけど、何かと冷遇されがちなジャンルだと思うのですが、あなたにとってエモってどんな音楽ですか?

「エモの歴史って結構長くて、もともとはパンクやハードコアの文脈、それこそDIYカルチャーから出てきたものだったのよね。昔のエモと現在のエモはちょっと意味合いが違うと思っていて、私が90年代や2000年代前半に聴いていたエモは個人的体験に紐づくエモーション(感情)や、自分のフィーリング(気持ち)をそのまま歌っていた。以前とある女性評論家の記事を読んだんだけど、〈それって結局は白人男性のシーンじゃない?〉という指摘があって。昔のエモっていえば、〈白人の男5人によるバンドが『失恋した』とか、『悲しい』とか、メソメソした気持ちを歌にしている〉というようなことが書いてあったのね。

でも、いまのエモって原点回帰というか、再びDIYとかパンクの部分に立ち返っているような気がしてる。ちょっとお薦めのバンドをメモするから待ってて(黒いリュックからモレスキンのノートを取り出し、バンド名を書き出す)! 私がここに挙げた3組は、女性がフロントを務めていたり、構成するメンバーが白人だけではなかったり、すごく多彩で面白いバンドだと思うわ。歌詞の内容も、より政治的で踏み込んだものが多い。いわゆるエモ的なサウンドに、パンク本来のアティチュードが組み合わさったものが、いまのエモなんじゃないかな。当然、私個人は昔のエモにも想い入れがあるんだけどね」

①Macseal

 

②Vagabon

 

③Diet Cig

 

歌詞からイメージした絵をタトゥーにする

――これは僕の個人的な興味ですが、あなたの腕に彫られたタトゥーは何のモチーフですか? どんな意味が込められているのでしょうか?

「見てみる? って、これじゃ見えないわね(いきなりセーターを脱ぐ)」

――あ、なんかすいません……(笑)。左腕の動物って狼ですか?

「これは2匹のキツネよ! よく見るとお互いが相手の尻尾に喰らいついてて。エヴリタイム・アイ・ダイってバンドは知ってる? これは彼らの歌詞からインスパイアされているの。で、こっち(右腕)の鳥はモッキンバード(マネシツグミ)。私のホームタウンでもあるテネシー州・メンフィスでお馴染みの鳥だから。

で、こっちのはミーウィズアウトユー(MewithoutYou)の歌詞から。以前は歌詞をそのまま文字にして彫ってもらっていたんだけど、このままじゃ全身文字だらけになっちゃうから、最近は歌詞からイメージした絵にすることが多いかな(笑)」

――手首に彫られているのは文字ですね。

「これはスペイン語で、〈神は存在する(Dios Existir)〉という意味。(ガブリエル・)ガルシア=マルケスの小説『百年の孤独』がモチーフになっているのよ。伝染性の不眠症のせいで町中の人々が記憶喪失になっていくんだけど、その対策として〈これさえあれば大丈夫〉と思える大事な言葉を看板に残しておくっていうお話で……。タトゥーなら毎朝必ず自分の目に入るじゃない?」

――さっきの不眠症のお話とも繋がってきますね。最後にぜひお訊きしたかったんですが、なぜあなたはダンキンドーナツをあんなに愛しているんですか(笑)。

「アハハハハ! 私がダンキンドーナツを好きな理由は、第一にコーヒーが大好きだからなの。で、彼らはスターバックスよりも先にアーモンドミルクをはじめていたから、ヴィーガンで貧乏学生だった私が勉強するには最高の居場所だったのよ。だって、スタバの半額でコーヒーが買えちゃうんだから(笑)」

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