INTERVIEW

ナイトメアズ・オン・ワックスは常にフレッシュ! TAMTAM高橋アフィが分析する、現行R&Bに接近した新作の〈今〉感

チャンス・ザ・ラッパーにも近い、倍速で縦ノリもできるリズム

――現代的なソウル感という意味では、3曲目の“Shape The Future”もまさにそんなノリの曲ですよね。

「この曲、結構好きです」

――そんな気がしてました(笑)。

「重心の低いベースとパーカッションの柔らかい響きで揺れを作っていて、ファット・フレディーズ・ドロップなどを思い出しますよね。あと、この曲はユルい4つ打ちですけど、レアグルーヴ~バレアリック的なニュアンスもあるんじゃないかと思います。リチャード・スペイヴンやモーゼズ・ボイドみたいなイギリスのジャズ系の人たちと曲調が通じているところもあると思う」

――ジャズのニュアンスという意味では、“On It Maestro”もナイトメアズ・オン・ワックス流の現代ジャズという感じがしますね。

「これも現行ジャズに近い感覚がありますね。その上でハイハットの代わりにシェイカーを使ってビートを柔らかく聴かせたり、さすがに上手いなと思いました。ミニマルな楽曲構成はダンス・ミュージック的な快楽性も感じるし、おもしろい作りですよね。大きな展開がなくて、このまま1時間続いてもいいし、いつフェイドアウトしてもいい。そういうDJ的な時間感覚がこの曲にはあるような気がします」

――モーゼズをゲスト・ヴォーカリストとして迎えた“Citizen Kane”はいかがですか?

「これはまさにリード曲っていう感じ。あらゆる面でものすごくよく出来てると思います。コーラスの鳴らし方も凄いし、低音も複雑に作られている。ビートの作りも遅いテンポに細かい32分(音符)がいっぱい入っていて、ダブステップ以後の雰囲気というか、チャンス・ザ・ラッパー等が使用しているノリというか。BPMは70~80ぐらいなんだけど、倍のテンポで縦乗りもできるノリ。トラップ以降のビートですよね。すごくモダンな作りだと思いました」

――このモーゼズはかつてゼロ7でも歌っていたシンガーみたいですね。

「モーゼズはソロでもいくつか出してるんですけど、そっちはハウスからダウンビート系まで盛りだくさんで格好良かったです。この曲はゴスペルっぽいコーラスが重要だと思いますね。ゴスペルといっても多幸感のあるコーラスじゃなくて、ちょっとイビツな感じ。チャンス・ザ・ラッパーもこういうゴスペルっぽいコーラスをうまく使いますけど、その雰囲気があると思います。それこそジェイムス・ブレイク的というか」

――ゲスト・ヴォーカリスト参加曲としては最後になるのが、サディ・ウォーカーを迎えた“Deep Shadows”。

「このサディ・ウォーカーっていう人、調べても誰だかぜんぜんわからなかったんですが、すごくいいですよね。NOWが初の大仕事だとしたら、すごいフックアップ力だと思います。声が不機嫌そうで、いかにもイギリスのソウル・ソンガーというか。トラックも隙間が多くて、現行R&Bにいちばん近いんじゃないかな」

――この曲のあとに収録された“Gotta Smile”でまたガラッと曲調が変わりますね。2016年に出たEP『Ground Floor』の延長上にある、NOW流のハウス・トラック。僕はこういう曲が中心のアルバムになるんじゃないかと思ってたんですよ。

「この曲もまたすごく気合が入ってますよね。4つ打ちなんですけど、打楽器の細かいパターンが入っていて、生演奏の匂いもする。ボノボやフローティング・ポインツにも近いニュアンスを感じました。それこそイビザっぽい曲調ですよね。……そう考えると、ものすごく曲調が幅広いアルバムですよね。1曲目はあそこから始まってるわけで(笑)」

 

躊躇せず、今聴いていちばん格好良いものをやっている

――ヴォーカリストをフィーチャーした現行ソウル~R&B寄りの楽曲がある一方で、“Gotta Smile”の後には長尺のチルアウト的な楽曲“The Othership”があったり、前半にはレゲエ/ダブの“Tomorrow”があったり。ただ、どの曲にもNOWの世界観をアップデートした感覚があって、不思議と統一感が取れている。新しい要素を採り入れ、つねに進化していくというNOWのスタンスは、現在のTAMTAMとも共通するものがあるんじゃないかと思うんですが。

「個人的には、そうやってアップデートしていったほうがいいと思っていて。あと、単純にリスナーとしても新譜が好きということもあります。もちろん長く聴いてもらいたいですけど、〈今〉ならではの感覚があったほうがおもしろいんじゃないかと思っています。今聴いていちばん格好良いもの。それをTAMTAMではやりたいと思ってますね」

――同時代性ということですよね。たとえば、〈あっ、これいいな〉という新譜があった場合、その作品のニュアンスを取り入れることに躊躇をすることはないんですか? 〈これはTAMTAMっぽくないな〉ということで止めてしまったり。

「だんだん躊躇しないようになってきましたね。昔は自分がドラムを演奏することを前提にしていたのでTAMTAMとしてはできないこともあったけど、今は打ち込みのほうが格好良ければ打ち込みで作っちゃいますし」

――その意味では、昨年6月に出たTAMTAMの最新作『EASYTRAVELERS mixtape』と今回のNOWのアルバムは地続きになってると思うんですよ。〈今こういうのがおもしろいよね〉というものをとりあえずやっちゃう。

「そうかもしれませんね。NOWも今回のアルバムがいちばん振り幅が大きいと思いますし、いろんな表現をやることに対する恐れがほとんどないんだろうなという感じがしました」

TAMTAMの2016年作『EASYTRAVELERS mixtape』収録曲“夏のしらべ ”
 

――TAMTAMも次のアルバムを作りはじめているそうですね。最後に、どんな作品になりそうかを教えてください。

「そうですね。まだ構想段階なんですけど、次はラグジュアリーなアルバムにしたいと思ってます。今のライヴでは、スケジュールが合うときはトロンボーンの他に、コーラスを2人入れてるんですけど、コーラスが入ると管楽器の華やかな感じとも違うゴージャス感が出てくるんですよ。次のアルバムはそんなライヴの延長上の内容になるんじゃないかと。ただ、曲を集めた段階では〈ローファイなアルバムにしよう〉という話もあったし……まだどうなるかわからないですね(笑)」

 


TAMTAM Live Schedule
2018年2月23日(金)埼玉・熊谷モルタルレコード ※mini setでの出演
2018年3月3日(土)東京・渋谷WWW
2018年3月10日(土)東京・神楽坂 神楽音
★詳細はこちら

タグ
関連アーティスト