COLUMN

新日本フィルの生オケ・シネマVol.3は「黄金狂時代」! 大スクリーンに展開されるチャップリンのユーモアと社会批評

The Gold Rush © Roy Export S.A.S

大スクリーンに展開されるチャップリンのユーモアと社会批評

 すみだトリフォニーホールで開催される〈新日本フィルの生オケ・シネマ〉の第3弾は、「モダン・タイムス」「街の灯」に続きチャップリンの傑作「黄金狂時代」(5月26日、2回上演)である。この〈生オケ・シネマ〉の魅力と言えば、なんと言ってもデジタル修復された高画質のフィルムを大スクリーンで堪能できること。そしてそこにフル・オーケストラによる生の演奏が加わることで、これまでにない映像体験ができるということだろう。

 チャップリンの「黄金狂時代」は1925年製作のアメリカ映画だ。ゴールドラッシュに沸くアラスカを舞台に、飢えと寒さと孤独の中で黄金探しを続ける人々を描いた作品で、もちろん監督・脚本・主演はチャップリンである。「チャップリンの何たるかを知るにはこの名作を見ないでは語れまい」と書いた故・淀川長治をはじめ、世界的な映画監督の多くがその生涯のベスト10の中に「黄金狂時代」を入れている。例えば、アキ・カウリスマキ、サミュエル・フラー、ルイス・ブニュエル、ビリー・ワイルダー、テオ・アンゲロプロス、マノエル・デ・オリヴェイラなどなど。また〈黒澤明監督が選んだ映画100本〉(文春新書)では、チャップリン作品としてはこの「黄金狂時代」だけが選ばれている。

 この「黄金狂時代」の最も有名なシーンとしては、あまりの空腹に堪え兼ねたチャップリンが、自分の靴を煮て食べるシーンがある。底の部分はまるでステーキのように、靴ひもはまるでスパゲティのように、そして金属の釘はまるで鳥の骨をしゃぶるように食べるというあの名シーンであり、チャップリンを語る上で、常に引用される映像でもある。それがデジタル修復された大スクリーンに展開された時、どんな新しい笑いを生むのか、興味深い。

 音楽は、チャップリン自身が後年に作曲し、映画に付けたものを使用しているが、それをスコアからチェックし、現代でも演奏できるように仕上げたのが、指揮も担当するティモシー・ブロック(1963~)である。言ってみれば、チャップリン音楽のスペシャリストであるブロックの手腕によって、映像と音楽は高度なシンクロを達成している。そこもこの〈生オケ・シネマ〉の魅力である。実際に前回の「街の灯」でも、その手腕を活かした素晴らしい演奏を聴く事ができた。

 大スクリーンと生のオーケストラ・サウンド、そしてチャップリンの演技は極上のハーモニーを奏でる。また時代を鋭く捉えたチャップリンの監督としての見識もそこに再発見することができる。ぜひこの機会を逃さずに、チャップリン芸術に酔ってほしい。

 


LIVE INFORMATION

新日本フィルの生オケ・シネマ Vol.3 「黄金狂時代」
チャップリン「黄金狂時代」

○5/26(土)会場:すみだトリフォニーホール
昼公演13:00開演(12:15開場)
夜公演17:00開演(16:15開場)
出演:ティモシー・ブロック(指揮)
新日本フィルハーモニー交響楽団
オープニングチャップリンパフォーマンス:山本光洋
www.triphony.com/