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グラスゴーから世界へ飛び出したベルセバの音楽遍歴

 初期ベルセバの音楽性には、フェルトなどいわゆるネオアコの影響に加え、ニック・ドレイク的なフォーク、さらにゾンビーズやレフト・バンクのようなソフト・ロックが混在していた。それらを丁寧に織り込んだスタイルは、96年の初作『Tigermilk』と同年発表の2作目『If You're Feeling Sinister』で確立されたと言っていい。また、アートワークや歌詞も手伝って、グループの文学的なイメージも徐々に浸透。98年の3作目『The Boy With The Arab Strap』では玄人筋からの高評価のみならず、商業的な成功を手にしている。その勢いに乗って彼らはリリースを重ね、世界各地の大型フェスでも常連となるが、思春期的な脆さが魅力の繊細なベルセバ・ワールドを大舞台で維持していくことに限界もあったようだ。

 そんな最中、バンドはラフ・トレードに移籍して6作目『Dear Catastrophe Waitress』(2003年)を発表。トレヴァー・ホーンの助けを借りながらサウンド・カラーを塗り替え、ラジオ・フレンドリーな明るいポップソングと共に次のステージへ歩を進める。そして7作目『The Life Purist』(2006年)と8作目『Belle And Sebastian Write About Love』(2010年)でLA録音を敢行。70sサイケやファンク要素を忍ばせたリラクシンな演奏と楽観的な言葉の数々が、古参のファンを驚かせた。大胆な変化は9作目『Girls In Peacetime Want To Dance』にも引き継がれ、ベンH・アレンの手引きのもとインディー・ダンスへと接近。アップリフティングな“The Party Line”などライヴの目玉となるような楽曲も生まれ、デビュー時に比べると〈ずいぶん遠くまで来たな~〉という印象すら受けたものだが、ベルセバの歴史をグラデーションで見せてくれる今回の『How To Solve Our Human Problems』に触れれば、彼らの変わらない魅力も再発見できるだろう。 *吾郎メモ

ベル・アンド・セバスチャンの作品を紹介。