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独創的な世界観でマイペースに支持を広げる5lack

 5lackの登場がある種のシーンの景色を一気に塗り変えたのは間違いないし、彼のスタイルやアティテュードの影響を後進の中に見ることができるような機会もますます増えてきている。当初S.L.A.C.K.と表記していた彼は、2009年に最初のアルバム『My Space』をDOGEARから発表。同年のうちには実兄PUNPEE、GAPPERと組んだPSGでの『David』をリリース、さらにソロ次作『WHALABOUT』も世に出していて、つまり登場時から彼の気ままな多作ぶりは顕著だったわけだ。

 自主レーベルの高田音楽制作事務所を立ち上げて転換点の傑作『我時想う愛』を出した2011年には、ISSUGI、BudaMunkとのSick Teamも始動する。GAPPERと組んだ『我破』(2012年)からは5lackを名乗り、気ままに活動の領域を広げながら、ルーズな歌心も備えた天才肌のラップさながらに独創的な動きを展開。『5 sence』(2013年)、『夢から覚め。』(2015年)といった純然たるソロ・アルバムもコンスタントに届ける一方、Aaron ChoulaiやKOJOE、KOHHと組んでシングルを連続でドロップするなど、リリース形態もいよいよ自由になっている。その合間に登場したのがOlive Oilとの『5O』であった。そんな人気者だけに外部での制作/客演依頼はヒップホップ以外のフィールドからも多いようで、SILENT POETSの“東京”に起用されたほか、近年のコラボレーターにはIlion、LIBRO、DJ KRUSH、KOJOE、JJJ、NENE、iriら世代も幅広いのが興味深い。なお、昨年はPUNPEEのアルバムでPSGが久々に揃ったのもトピックだった。 *轟ひろみ

5lack feat. KOJOEの2016年のシングル“Feelin29”

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