膨大なビートをマイペースに創造するOlive Oil

 今回のインタヴューに残念ながら不在だったOlive Oilは、奄美諸島は徳之島出身のビートメイカーだ。画家でVJのPopy Oil(Oliveの実弟でもある)と共に2000年代初頭からOILWORKSをスタートして以来、長きに渡ってDJ/トラックメイカーとして活動し、鬼才もしくは奇才としての賞賛をほしいままにしてきた。出てきた当初こそいわゆる〈ジャジー・ヒップホップ〉ブームの流れで見られた時期もあったものだが、ボタニカ・デル・ヒバロやアレパにも通じるアンダーグラウンドな音世界はその範疇を易々と跨ぐものであり、2008年のセカンド・アルバム『Spring Break』以降はそれすら超えて膨大な作品を世に出しはじめ、現在の自由なペースを獲得するに至った。

 ここで掲載できる作品は近年のリリースの一部だが、そのなかではKOJOEと組んだ『BLACKNOTE』(2014年)と『HH』(2015年)や、Miles Wordとの『WORD OF WORDS』(2016年)、RITTOとの『アブサン 2014-2017』(2017年)、さらには全曲を手掛けたCHICO CARLITOの『Septile1:南方作戦』など、ラッパーとのタッグ作が数多いのは特徴的で、『5O2』と聴き比べるのもおもしろいはずだ。単曲ではYUKSTA-ILLや泉まくら、NERO IMAIらにビートを提供。本文で5lackが語っているように「多ジャンル的」なビートはどこを切っても新鮮な閃きに満ちている。 *出嶌孝次

CHICO CARLITOの『Septile1:南方作戦』収録曲“月桃の花が枯れる頃”

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