INTERVIEW

映画「彼の見つめる先に」ダニエル・ヒベイロ監督インタヴュー―重要なのは人が惹かれ合うという普遍的であたりまえのこと

映画「彼の見つめる先に」ダニエル・ヒベイロ監督インタヴュー―重要なのは人が惹かれ合うという普遍的であたりまえのこと

盲目であること。ゲイであること。それより重要なのは人間が人間に惹かれるという普遍的であたりまえのこと

 サンパウロの普通高校に通う盲目の少年レオナルドと、いつも彼の側にいて手助けをしてくれる幼馴染みの少女ジョヴァンナ。ある夏の日、彼らと同じクラスにガブリエルという少年が転校してきたことから、各々のセクシュアリティへの自覚や恋愛感情が芽生え、高校生の男女ならではの切なくも清々しい人間模様が描き出されていく――「彼の見つめる先に」は、自身もゲイであるダニエル・ヒベイロ監督が、性の目覚めをテーマに3人の思春期の終わりを描いた青春映画だ。

「私自身が性の目覚めを感じ始めた16歳の頃、自分の気持ちにフィットするゲイ映画は、英国の『Beautiful Thing』(96年)だけでした。その後もゲイを題材とした映画がたくさん作られてきましたけど、ポジティヴに描かれている作品は少ない。だから16歳だった当時の私と、現代の10代の若者たちに観てもらいたいという思いで、この映画を作りました」

 主人公のレオは、幼児の頃から盲目なので、ジョヴァンナの姿すら見たことがない。このようなキャラクターに設定した理由を、ヒベイロ監督はこう語る。

「一般的に人は誰かに魅せられる場合、最初は視覚に因ることが多いでしょう。けれど、たとえ性別や外見が判断できなくても、それでも自然に誰かを好きになるというケースもあり得ると思います。僕は人が人に惹かれるという普遍的なストーリーを描きたかったので、生まれてから男性も女性も見たことがないゲイの少年を主人公にしました」

 劇中には、ブラジルのシンガー・ソングライター、マルセロ・カメーロの“Janta”が流れる。2008年当時のマルセロの恋人で、現在は妻であるマルー・マガリャンイスとのデュエット曲だ。しかし、それ以上に重要な役割を果たしている曲は、英国のベル・アンド・セバスチャンの“There's Too Much Love”。ほとんどクラシックしか聴いてこなかった中流階級の少年レオは、この曲をガブリエルに教えてもらったことをきっかけに、新しい世界への扉を開いていく。

「“There's Too Much Love”は、私自身が青春時代にベル・アンド・セバスチャンに惹かれるきっかけとなった曲なので、ぜひ使いたかった。私は10代の頃からゲイ・クラブに通っていたこともあって、デヴィッド・ボウイやザ・スミスなど主に英国のロックに影響を受けました。でも、もちろんブラジル音楽も自分にとって重要で、特にカズーザ(90年にエイズによる合併症で死去)がずっと好きでした。マルセル・カメーロも大好きな一人で、“Janta”のポジティヴな歌詞はレオとガブリエルの気持ちを代弁していると思いました。だからこそ、彼らが自転車に二人乗りして夜の街を疾走していく場面に使いました。2人が同じ方向を見つめながら前へ前と進み続けていくシーンに」

 本作は差別や偏見に繋がるテーマを扱いながらも、爽やかな風が観る者の体の中を通り抜けていくような作品だ。ベルセバやマルセロ・カメーロの音楽がそうであるように。

 

映画「彼の見つめる先に」
監督・脚本:ダニエル・ヒベイロ
出演:ジュレルメ・ロボ/ファビオ・アウディ/テス・アモリン/ルシア・ホマノ/エウシー・デ・ソウザ/スマ・エグレイ/他
配給:デジタルSKIPステーション/アーク・フィルムズ(2014年 ブラジル 96分)
◎3月10日(土)より、新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー!
www.mitsumeru-movie.com

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