2016年10月の来日公演で演奏され絶賛された曲目の同年8月のスタジオ録音。2009年、2011年録音の無伴奏と共通して感じられるのは、〈緊張〉と〈弛緩〉の絶妙なバランス。全編通して決して一本調子になる事が無く変幻自在で、曲を完全に自分の物にしている余裕を感じさせる。自らを全面に出さず、ファウストの変化にしっかり寄り添うベザイデンホウトの伴奏も特筆に値する。過去の多くの名盤のエッセンスが凝縮されたような、まさに21世紀の新定番。それだけに、協奏曲(BWV 1041、1042)の録音も切に願う(ヘンスラーに2台のヴァイオリンのための協奏曲 BWV 1043は録音済)。