Photo by Makoto Ebi

〈ミスター335〉のギター人生の素敵を顕わす、独ビッグ・バンドとの共演作を発表!

 フュージョン登場以降のギタリストを代表する名手であるラリー・カールトンの新作は、2016年6月に収録されたドイツのSWR(南西ドイツ放送)ビッグ・バンドとの共演作である。御大とジャズのビッグ・バンドはあまり結びつかないものと言えるが。

 「学生時代も、あまりやっていない。でも、ジョー・パスとジェラルド・ウィルソン・オーケストラによる『Moment Of Truth』(パシフィック・ジャズ、62年)が大好きで、それと同じようなことをできるかと思ってワクワクした。少し、ヒーローに近づけるかなあと思ったんだ」

 共演の話は、秋吉敏子やイヴァン・リンスなどいろんな人をフィーチャーしたアルバムを作っているSWR側から持ちかけられた。そこでアレンジをしているのは、スウェーデン人リード奏者のマグナス・リングレン。彼は昨年のマット・ビアンコの好ジャズ志向盤『Gravity』にも関与していた人物だ。

 「先方から3人のアレンジャー候補を出されたんだけど、マグナスが一番僕の好みにあっていた。デモにおける音の選び方が僕の趣味だったんだけど、彼は実際いい仕事をしてくれたよね」

LARRY CARLTON 『Lights On』 335(2017)

LARRY CARLTON 『Lights On』 335(2018)

 選ばれた曲は、まさに〈オール・アバウト・LC〉といった感じ。十八番曲“Room 335”をはじめとする自作、彼の名声に貢献したスティーリー・ダンのナンバーも2曲、ジョン・コルトレーンが演奏した曲でカールトンが一番好きであるという“Too Young To Go Steady”(コルトレーンの62年人気盤『Ballad』に収録)、マイルス・デイヴィスの“Milestone”(実は、先に触れた『Moment Of Truth』でも演奏されている)など、これはよくできた選曲だと頷いてしまう。それらは、「SWRのプロデューサーとやり取りをして決めていった」そうだ。

 壮大にしてきらびやかなサウンドに乗り、彼は十全に指を踊らせる。大きな“器”を得たからこそ溢れ出る多彩な技の数々、ここでカールトンは本当に様々な演奏を披露している。

 「自分でも楽しんで、いろんな事ができたと思う。実際、多様さというのは僕の美点。様々な音楽に対応できるから、これまで僕はたくさんのチャンスを得たのだと思うな」

 SWRの本拠地であるシュトゥットガルトにおけるかようなスタジオ・ライヴ盤は、自己レーベルである335からCDとDVDでリリースとなる。

 「335からは厳選し、出したいと思うものしか出さない。すべては、僕次第。今、僕は自由を持ち、プレッシャーがなくて、本当に心地よい状況にあるよね」