原田夏樹、覚醒!? ソウルフル&清廉なポップ盤

 evening cinemaが新作において大きく音の舵を切った。これまでは80年代のシティーなAORを精緻に再構築していたが、原田夏樹のソロ・プロジェクトとして送り出す初のフル・アルバム『CONFESSION』では、共同プロデューサーにD.A.N.などを手掛ける葛西敏彦を招聘。ストリングスやホーンを動員したゴージャスなサウンドで、色彩豊かなポップスを提示している。

evening cinema CONFESSION LUCK(2018)

 グルーヴィーなファンク・ポップ“告白”、アーバンな自曲のリメイク“jetcoaster ~baby, I'm yours~”、ドラマティックに疾走する“ラストイニング”、ブラスが効いたメロウ・ソウル“忘れる前に”……などなど、岡村靖幸と『LIFE』期の小沢健二をミックスしたかのようにとことんソウルフル、かつ清廉な楽曲が並んでいる。多彩で自在なアンサンブルを手にしたことで、もとより秀でた原田のソングライティングがより冴えまくっている印象で、時に歌謡曲的な湿り気も纏ったキャッチーなメロディーがズラリ。とりわけ、ラストに配されたシンセ・ブギー“わがまま”はさまざまな層のリスナーに訴求する名曲だろう。スガシカオや星野源がふっと現れるオマージュの忍ばせ具合も楽しいし、日本のポップスのアーカイヴスを解析&コラージュして新たな楽曲を生み出さんとする、90年代の渋谷系を継承するようなスタンスを明確に示してもいる。evening cinemaが次の地平に立ったことを高らかに告げる快作だ。