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エヴリシング・イズ・レコーデッドが描く音楽地図―多岐に渡った参加ミュージシャンをプレイリストでお届け!

エヴリシング・イズ・レコーデッド『Everything Is Recorded By Richard Russell』 Pt.2

先の記事では、エヴリシング・イズ・レコーデッド(以下、EIR)の首謀者にしてXL主宰、リチャード・ラッセルのロング・インタヴューをお届けしたが、ここではEIRの新作『Everything Is Recorded By Richard Russell』から枝分かれしたピープル・トゥリーを俯瞰してみよう。参加アーティストの関連曲をプレイリストにまとめた。

インタヴューにもあるように、本作はリチャード・ラッセルがプロデュースしたイベイーの2作、『Ibeyi』(2015年)『Ash』(2017年)と密接な関係にある。オープニングに選んだ『Ash』収録曲“Vale”では、彼女たちらしいリズムとハーモニーはもちろん、穏やかでモダンなアンビエンスにも耳を傾けて見てほしい。続くEIRの“Bloodshot Red Eyes”は今回のアルバムでも白眉のナンバーで、ゴーストフェイス・キラーの息子であるインフィニットが歌を披露。そのスウィートな美声を、リチャードは〈80年代シカゴ・ハウスのヴァイブを感じさせる〉と評している。

EIRでは北米インディー・ロックの名手、元ヴァンパイア・ウィークエンドのロスタム・バトマングリとオーウェン・パレットがストリングス・アレンジを手がけている。XLとも縁のあるフランク・オーシャンの“Ivy”は、そのロスタムがプロデュースした名曲。さらに本作には、フランク・オーシャンの作品及びライヴ・バンドで演奏するベン・リードが参加している点にも注目したい。彼のソロ作『Station Masters』(2016年)は、スティーリー・ダンにも通じる洒脱なポップネスが光る逸品だ。ジ・インターネット“Girl”(2015年)とウィキ“Baby Girl”(2017年)の二曲は、星野源も2016年の年間ベストに選んでいたXLのホープ、ケイトラナダがプロデュースしている。

デーモンのソロ作『Everyday Robots』(2014年)でエンディングを飾る“Heavy Seas Of Love”は、ブライアン・イーノがコーラスで参加したゴスペル・ナンバー。イーノは遡ること2008年に、デヴィッド・バーンとの共作『Everything That Happens Will Happen Today』でもゴスペルにアプローチしていたが、このアルバムはタイトルも含めてEIRと共振しているようにも映る(ちなみにデヴィッド・バーンは、今年3月リリースの新作『American Utopia』でサンファともコラボしている)。

カニエ・ウェストの“Flashing Lights”(2007年)は、ギル・スコット・ヘロンの『I'm New Here』(2010年)でサンプリングされていたナンバー。その後、カニエの『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』(2010年)でギルの声が使われ、サンファも参加した『The Life Of Pablo』(2016年)でゴスペルに接近した経緯は、リチャード/EIRとも密接にリンクしているはず(もっと言えば、カニエとジェイZとの共演曲“The Joy”(2011年)では、同郷シカゴの先人であるカーティス・メイフィールドの“The Making Of You”(74年)が本作収録曲“Close But Not Quite”同様にサンプリングされている)。

ピーター・ガブリエルの代表作『So』(86年)に収録されたケイト・ブッシュ参加のフォーキー・ゴスペル“Don't Give Up”は、今聴くと新たな発見のありそうなナンバー。スクリッティ・ポリッティの“Oh Patti”(88年)は、かつてクインシー・ジョーンズが手掛けたマイルス・デイヴィスがグリーン・ガートサイドの才能に惚れ込んでゲスト参加した1曲。そのクインシーがスヌープ・ドッグと一緒にカヴァーした“Get The Funk Out Of My Face”(2010年)では、スヌープのバック・バンドを務めていた当時のカマシ・ワシントンがテラス・マーティンと一緒に演奏している。

ニック・ケイヴの盟友にして、ダーティー・スリーの一員であるウォーレン・エリスは、EISがアルバムに先駆けて昨年リリースしたEP『Close But Not Quite」(日本盤にボーナス・トラックとして収録)に参加。彼はアヴァランチーズ(UK&ヨーロッパではXLが流通)の最新作『Wildflower』(2016年)に収録されたこの曲でヴァイオリンを弾いている。

そして、〈ヒップホップ通過後のソウル・オマージュ〉が背景にあるEIRにエイミー・ワインハウスやアデルを手掛けたマーク・ロンソンが参加しているのは必然とも言えるだろう(この辺りについては、マークが語った「ローリング・ストーン」のインタヴューも必読)。かつてマーク・ロンソンが手掛けたリリー・アレンが、ここにきてギグスやバーナ・ボーイなどUKシーン最前線のラッパーとタッグを組んでいるのも興味深い動きだ。