ESSENTIALS
モーリス・スターとファミリーの関連作

MAURICE STARR Flaming Starr RCA/FTG(1980)

裏方として活躍する直前にマイケル・ジョンズンの助力を得て仕上げたシンガー・デビュー作。Pファンクやスウェイ・ビートなど当時のトレンドを詰め合わせたファンク盤で、アイズリー・ブラザーズのメロウ曲やインスタント・ファンクの前年ヒットを拝借する臆面のなさは粋なシャレと受け止めたい。ソウル名曲のフレーズを織り込んでサム・クックらの物真似をする“Start All Over”などには先達への敬意も溢れる。 *林

 

NEW EDITION Candy Girl Streetwise/OCTAVE(1983)

R&B界を代表するスーパー・グループとなるボストン出身の少年たちのデビュー盤は、アーサー・ベイカー主宰のストリートワイズから登場。ジャクソン5の80年代版を意識したのは明らかで、制作を手掛けたモーリスがベイカーやジョンズンと組んで書いた楽曲はポップなエレクトロ・ビート上で戯れるようなラルフ・トレスヴァントの少年声が愛おしい。J5“ABC”の換骨奪胎とでも言うべき表題曲の大ヒットでモーリスは裏方としての地位を確立した。 *林

 

MAURICE STARR Spacey Lady RCA/FTG(1983)

プロデューサーとしてのブレイクと同時タイミングでの発表となったセカンド・アルバム。ジョンズン・クルーのエレクトロ・ファンク~ヒップホップ作法をストレートに持ち込んだ表題曲などがある一方、スロウ・バラードは一転して思いっきりスウィートになるというメリハリのついた一枚で、モーリスの才気が迸る。“Keep On Dreamin'”などにおけるポップネスにニュー・エディション別掲作とのシンクロぶりも感じる快作だ。 *林

 

THE STYLISTICS Some Things Never Change Streetwise/OCTAVE(1984)

地元フィリーの名匠たちとの邂逅を経て入社したストリートワイズ移籍第1弾。ラッセル・トンプキンスJrの甘美なファルセットが響くタイトル曲のようなバラードはトム・ベル時代のマナーを再現したものだが、モーリスの制作だけに“Don't Change”のようなエレクトロ・ビートのアップも用意され、ファンクに挑戦する姿が新鮮だ。モーリスは彼らから体得したスウィートネスをニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックの作品で応用したのだろう。 *林

 

TOM BROWNE Tommy Gun Arista(1984)

80年代半ばにはジャズ/フュージョン仕事も数多く手掛けたモーリスだが、“Funkin' For Jamaica(N.Y.)”のNo.1ヒットで知られた人気トランペット奏者ともリンク。前年の“Rockin' Radio”に続き、こちらのアルバムでは4曲のプロデュースを任されている。コン・ファンク・シャンのホーンズを従えて自身のヴォコーダー声も聴かせる“Station Break”、サイーダ・ギャレットの歌う“Secret Fantasy”などのブラコン作法がキャッチー。 *出嶌

 

CON FUNK SHUN Fever/Electric Lady Robinsongs(2014)

掲載盤は2in1だが、そのうち85年作『Electric Lady』にてモーリスは4曲をプロデュース。うち“Rock It All Night”は完全にモーリス~ジョンズン・クルー色に染まりきったエレクトロ・ファンクだが、それ以外はモーリス作のミディアム・スロウ“Pretty Lady”も含めてグループの持つ西海岸アーバンなムードでまとめ上げたナンバーとなる。そもそも換骨奪胎を得意とするモーリスだけにグループのカラーを見事に掴んでいる。 *林

 

THE STYLISTICS A Special Style Streetwise/OCTAVE(1985)

ストリートワイズ第2弾。モーリスに加えてジョンズン・クルーのゴードン・ワーシーが制作/アレンジに参加したこちらは冒頭の“Special”からアーバンなエレクトロ・ファンクを快活に歌い放つ。ほぼ交互に登場するこの路線ではカシーフの作風も意識していそうで、リードもラッセル・トンプキンスJrのファルセットだけに頼っていない。一方、“I Believe(In You)”などヴァン・マッコイ時代の大甘なバラードを再現したようなスロウも快調だ。 *林

 

JENNY BURTON Jenny Burton Atlantic/DIZZARE(1985)

フレッド・マクファーレン絡みのダンクラ“Bad Habits”でお馴染みのアルバムだが、モーリスは3曲を制作/演奏。主役のハイ・エナジー感覚を匂わせつつオーセンティックなソウルに連れ戻した“Let's Get Back To Love”とティーナ・マリー風の“Nobody Can Tell Me(He Don't Love Me)”はモーリスらしい拝借センスが光る好曲だ。ジェニーのゴスペル的背景を伝えるバラード“Once In A Life Love”も上々の出来。 *林

 

KRYSTOL Passion From A Woman Epic/FTG(1986)

ロビー・ダンジーが在籍した女性グループの3作目にはマイケル・ジョンズンが制作で参加。モーリスは不参加だが、関わった2曲はジョンズン・クルーのマナーを踏襲したアップで、特にラップ ・シンギングを中心としたヘヴィーなミッド・ファンク“Love Attack”にそのカラーは顕著だ。“He's So Jive”は同時期のジャネット・ジャクソンに通じるソリッドなファンク。ジャム&ルイスの作風も意識していたのかもしれない。 *林

 

JEAN CARNE Closer Than Close Omni/Expansion(1986)

スタイリスティックスに続くフィリー・レジェンドとの手合わせにして、モーリスには意外と珍しい女性ヴォーカル仕事。唯一プロデュースを担う書き下ろしの“Candy Love”は、曲名通りのスウィートなメロウ・チューンに。マーヴィン・ゲイ“Sexual Healing”やユージン・ワイルド“Gotta Get You Home Tonight”の影響下にある808系アーバンの佳曲だ。 *出嶌

 

ALEEM featuring LEROY BURGESS Shock! Atlantic/ワーナー(1987)

モーリスと同じくエレクトロ時代のNYで台頭したアリーム兄弟が、リロイ・バージェスとのトリオで残した2作目。モーリスは甘酸っぱいスロウ“Lonely Tears”にギター演奏のみで参加していて、珍しくスタジオ・ミュージシャン的な関わり方ながら、作風には通じる点もある。なお、この後のアリーム兄弟はNKOTB作品でモーリスに助力することに。 *出嶌

 

MODERNIQUE Modernique Sire/ワーナー(1987)

ゴードン・ワーシーがジョンズン・クルー参加前からコンビを組んでいたラリー・ウー率いるヴォーカル・ユニット唯一のアルバム。ここでもふたりは共同制作しており、ほぼすべての楽器演奏/プログラミングを任されたゴードンはハッシュ・サウンド全盛~ニュー・ジャック・スウィング前夜らしい打ち込みサウンドでメンバーの力強いヴォーカルを出迎えている。この時期ゴードンが作るファンクはモーリス以上に冴えていた。 *林

 

NEW KIDS ON THE BLOCK Greatest Hits Columbia(2004)

“Step By Step”などのポップな印象が強いグループながら、86年の初作にデルフォニックス“Didn't I(Blow Your Mind)”のカヴァーを仕込んでいた時点でモーリスのヴィジョンは明らかだろう。麗しい808マナーの“Please Don't Go Girl”、ファルセットで贈る“I'll Be Loving You(Forever)”、モロにスタイリスティックス風な“Let's Try It Again”などは本ページ的にも推薦。プリンス調のファンク“Games”も別の意味でモーリスらしい。 *出嶌

 

APOLLONIA Apollonia Warner Bros./Wounded Bird(1988)

映画「パープル・レイン」のヒロイン役で世に出たラテン美女のソロ・デビュー作。同時期のマドンナっぽい音作りのなか、マイケル・ジョンズン夫妻が得意のエレクトロ・ポップ作法で“Ay Ya Yai”をプロデュースしている。なお、本作のデラックス・エディションには、同じくマイケルが制作したシングルB面曲の“These Boots Are Made For Walking”も収録。 *出嶌

 

Seiko Seiko Columbia/ソニー(1990)

NKOTBが絶頂期を迎えたこの年、プロデュース作品量のピークを迎えていたモーリスは、松田聖子の全米デビュー作でも3曲の制作を担当。デュエット相手にNKOTBのドニー・ウォールバーグを迎えたバラード“The Right Combination”やアリーナ・ロック風の“With Your Love”など、全体的にポップに寄った華美なテイストはこの時期のモーリスっぽい。 *出嶌