デヴィッド・ボウイ

マンソンがボウイのファンだった為、ボウイは彼に間接的に影響を与えたとされている。ボウイのアルバムで最も有名な『Ziggy Stardust』(72年)はロバート・A・ハインラインのSF小説「異星の客」(61年)に着想を得ているといわれている。この本では、火星から来た男、ヴァレンタイン・マイケル・スミスが地球に連れてこられると、人々が宗教、性、死や富などの制度について再評価せざるを得ないような影響を周囲に与える。スミスは新たな宗教の教祖となり、その信徒は〈ホモ・スペリオール〉と称されるが、彼は最後、反対派の群衆によって殺されるというのが筋書きだ。

ボウイの『Ziggy』には、マンソンに影響を与えたと見られるこのヴァレンタイン・マイケル・スミスと共通点があるのだ。「異星の客」には共同体としての生活や、フリー・ラヴについても触れられている箇所もある。

また、マンソンは何人かの子供を残しているが、彼のカルトの最初のメンバー、メアリー・ブルンナーとの子供はヴァレンタイン・マイケル・マンソンと名付けられた。この子供は、乳幼児の時にキャンプファイアーの脇に裸で放置されていたところを見つかり、ブルンナーから離され、彼女の両親がマイケルと改名して育てた。同じくマンソンの息子、チャールズ・マンソン・ジュニアは自殺。事件後、12人ほどの女性がチャールズ・マンソンの子供を産んだと主張しているが、DNAテストなどで関連性が分かったものはいない。

デヴィッド・ボウイの72年作『The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars』収録曲“Ziggy Stardust”

 

ニール・ヤング

74年に『On the Beach』というアルバムを発表。このアルバムは暗い雰囲気の、ミニマルなもので、曲の中では名声や批評家、政治、化石燃料業界やヒッピーに対する失望を歌っている。マンソン・ファミリーに直接言及している曲もある。“Revolution Blues”の歌詞の中にある〈一万台の砂上バギー〉はマンソンが主張した砂漠での人種間戦争計画のことだ。実際、ニール・ヤングはロサンジェルスでマンソンや彼の信者達に出会っていて、音楽エグゼクティヴのモー・オースティンにマンソンに会うべきだと進言している。ヤングはマンソンをおもしろい作曲家と捉え、特に即興で曲が次々出てくる所を評価していたようだが、同時に〈彼は少し制御が利かない〉とも言っていた。

ニール・ヤングの74年作『On the Beach』“Revolution Blues”

 

ジミー・ペイジ

チャールズ・マンソンとの関わりは、ケネス・アンガーの映画「ルシファー・ライジング」(72年)を通した間接的なものだ。アンガーはこの映画にボビー・ボーソレイユ(後にマンソンのカルトに参加し、殺人で起訴される)という若いミュージシャンをルシファー役で抜擢。後にアンガーとボーソレイユの関係は悪化、喧嘩別れとなる。アンガーはボーソレイユが機材を盗み、映画を乗っ取ろうとしたと主張。映画は暗礁に乗り上げ、アンガーは主役とサウンドトラックを求めて、ミック・ジャガーなどさまざまな人に声をかける。72年、アンガーはジミー・ペイジとオカルトのオークションで出会い、ペイジにサウンドトラックを作ってくれるよう依頼。しかし、アンガーとペイジもうまくいかず、ペイジがこの映画のために作った曲も2012年まで正式に公表されることがなかった。アンガーは後にボーソレイユと刑務所で面会し、ボーソレイユが作ったサウンドトラックが81年以降一部に限定配付されている。

ペイジは他にもマンソン信者のリネット”スクイーキー”フロムにもストーキングされた。フロムはテート・ラビアンカ殺人事件には関わっていないものの、75年にジェラルド・フォード大統領の暗殺計画を立て、彼に向かって銃の引き金を引いている(この時、銃がつまるトラブルで発砲に至らなかった)。また、彼女は刑務所内を本拠地とする白人至上主義者の団体、アーリアン・ブラザーフッドのメンバーと親しく、彼女がブラザーフッドと同居したカリフォルニア州ストックトンの家の地下にはその家の所有者が埋められていたという。マンソンの裁判時、裁判にかけられていたカルトのメンバー達と同じくスクイーキーはカミソリで額にXを描き、連帯を表した。スクイーキーがペイジのストーキングをした際の「悪いエネルギーについて忠告したい」との要求に、レッド・ツェッペリンのレーベル副社長は「紙に書いてくれたら本人に渡す」と言い、ペイジはこの紙をすぐに焼き捨てたらしい。スクイーキー・フロムは2009年に仮出所になり、現在はニューヨーク州北部に住んでいると考えられている。

ジミー・ペイジの2012年作『Lucifer Rising (And Other Sound Tracks)』収録曲“Lucifer Rising – Main Track”

ボビー・ボーソレイユ&ザ・フリーダム・オーケストラの80年作『Lucifer Rising』