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ビートがないから歌のソウルが際立つみたいなサウンドがある気もしてて(入江)

――ところで、もかさんの歌詞のテーマは恋愛が多いのですが、それはなぜでしょう?

さとう「別に、すんごい恋愛をしているっていうわけじゃないんです。大学生の頃からずっと付き合っている人がいるんですけど、その人と出会う前の私はあんまり感情がなかったというか(笑)、空想のなかで生きていた感じでした。その人と出会ってから心が動いた――その感動がたぶん、歌詞に出ているのかなって思います」

――そのパートナーの方と出会う前の、空想に生きていた頃の感じも歌詞に表れていると思います。“Lukewarm”はまさにそういう曲で、空想と現実の恋愛とのせめぎ合いを感じます。

さとう「いまもたぶん、空想癖はあるんですけど、でも、ちょっと人間じみてきたっていうのがあって。それが“Lukewarm”の歌詞ですね。なんか、ほんとに、どんどん人間になってきたという実感があります(笑)」

――LUVRAWこと鶴岡龍さんの客演はどういったきっかけがあったんですか?

入江「もともと、LUVRAWさんがもかさんのことをすごく推していらっしゃったんです」

さとう「 “Wonderful voyage”をサンクラに載せて、けっこう経ってからLUVRAWさんが〈泣いた〉とTwitterで紹介してくれて」

入江「なんか刺さったみたいなんです。もかさんも僕もLUVRAWさんとは面識がなかったんですが、ここまで言ってくれているんだったらアルバムに参加してくれるんじゃないかと。それに、客演するのが僕だけだとちょっと偏りがありますし、あとは恋愛の歌が多いので、男性のゲストがいいかなって思ったんです。で、声をかけたら快くOKしてくれたんです。LUVRAWさんは普段、ビートがあるトラックでトーク・ボックスを演奏されることが多いと思うんですけど」

――そうですね。

入江「生意気ですが、今回はそうじゃない曲でやってみてほしかったったんです。もかさんも〈ゲストと録音をする〉というやったことのないことを『Lukewarm』ではやってほしかった。初めてのことをやる人同士だとおもしろいことができると思っているので、そういう意図もありました」

――LUVRAWさんの客演について、もかさんはどうですか?

さとう「うれしいです。最初は“殺人鬼”をLUVRAWさんと歌ってみたいって思ったんですけど、だんだん“最低な日曜日”のほうがLUVRAWさんと2人で歌うには合う予感がしてきちゃって、急遽そっちを一緒にやって頂きました。“最低な日曜日”には最初はドラムを入れたいと思っていたんですけど、陽さんが〈こういう感じにしよう〉って言ってくれて、やってみたらむっちゃ良くって。共作の醍醐味を感じました」

入江「いきなりフランク・オーシャンの話になるんですけど、『Blonde』以降、ビートがないから歌のソウルが際立つみたいなサウンドがある気もしてて。ちょっとだけそういうことも思って、あんまりドラムが鳴ってないほうがいいと思ったんですよね。でも、ドラムがないと作り手としては不安になるんです。〈これで本当に聴けるのかな? ノれるのかな?〉って。だから、リード曲はビートを格好良く作れる人に頼んだんです。でも、アルバム全体ではビートが全然ないっていう。歌がスッと入ってくるというか、邪魔しないというか、そういうふうにしたかったんです。『Lukewarm』はもかさんの歌の強度にすごく依存しているアルバムだと思います」

――それで作品が成立しているのは、もかさんの歌の力がそれだけあるってことですよね。山田光さんが編曲と演奏で参加されている“殺人鬼”についてお伺いしたいのですが、この曲はどういう経緯でこういうぐしゃっとしたアレンジになったんですか?

入江「これは、実際にもかさんの隣に住んでいるちょっとおかしい人についての曲なんです(笑)。“Lukewarm”はビートががつっと入っていますけど、他の曲を作っていくうちに、ビートがなさすぎるな、もう1曲ぐらいビートがあったほうがいいんじゃないかって思ったんです。そしたら“殺人鬼”がパンク調だったので、ちょうどよくて。『Blonde』でも後半の曲でいきなりラウドなビートが出てくるじゃないですか? アルバムの流れのなかでそういう曲があってもいいんじゃないかと。それで、山田くんに頼みました。もうちょっとかわいいアレンジにしてほしかったんですけど、サックスを吹いたりとか、どんどん彼が殺人鬼のようになっていって(笑)。じゃあ、勝手にやってくださいと(笑)」

さとう「あはは(笑)」

――最後にお聞きしたいのですが、もかさんは今後の活動の展望はありますか?

さとうThe Time Travellersっていう岡山のバンドと一緒にライヴをやりはじめたんです。息の合うメンバーが見つかって、バンド編成でやりたい曲をたくさん作っているので、それをバンドで録れたらなって。あとは、陽さんみたいに映画の音楽をやってみたいという気持ちがあります。映像で何かが起こっているなかで流れている曲がいちばんドラマティックだなって。憧れがありますね」

――なるほど。今回は入江さんのプロデュースでしたが、次回作はセルフ・プロデュースにするとか、そういう考えはありますか?

さとう「まだちょっとよくわからないことが多いので、陽さんに手伝ってもらえたらうれしいんですけど(笑)」

入江「今回の制作を機に、もかさんがDTMをはじめたんですよ」

さとう「一応、学校でも習ってはいたんですけど、よくわかんなくて(笑)。iPhoneで録ったほうがむっちゃ良く録れるので、ずっと避けてたんですけど、ついにやる時が来てしまって……」

入江「でも、〈コーラスを送ります〉ってもかさんから送られてきたファイルを開くと、無音だったりとか(笑)。あと、ミスった時の〈んああっ!〉っていう声が入ってたり(笑)」

さとう「何十回もやり直してたら、叫んじゃいました(笑)」

Live Information
〈SMELLS presents night after night vol.24
さとうもか『Lukewarm』Release Party〉

6月23日(土・さとうもか誕生日) 東京・下北沢 THREE
開場/開演:18:00/18:30
出演:さとうもか(バンド・セット/ソロ・セット)
共演:入江陽、鶴岡龍(LUVRAW)、かねこきわの、ラッキーオールドサン(バンド・セット)、阿佐ヶ谷ロマンティクス、内村イタル
オープニング・アクト:植田章敬
前売り/当日:2,500円/3,000円(ドリンク代別)
前売り予約メール・アドレス:ticket3@toos.co.jp
※〈件名:「6月23日さとうもかチケット予約希望」〉〈本文:「名前/必要枚数/連絡先」〉を明記していただき、メールをお送り下さい。手続きが済み次第、順次予約完了のメールを返信致します。携帯電話より送信される場合はドメイン指定を解除して下さい。返信メールが送付できない場合がございます

〈さとうもかライヴ情報〉
5月19日(土) 広島・袋町〈ザ・トランクマーケット2018
5月20日(日) 岡山・奉還町4丁目 ラウンジ・カド 〈Spring In My Heart
5月25日(金) 兵庫・神戸 VARIT. 〈新たな出会い vol.3
5月26日(土) 岡山・井原町 〈hoshioto'18
6月16日(土) 和歌山 梵恩舎〈さとうもか live in 高野山
6月23日(土・さとうもか誕生日) 東京・下北沢 THREE 〈SMELLS presents night after night vol.24 さとうもか『Lukewarm』Release Party〉
7月14日(土) 北海道・札幌 musica hall cafe
7月22日(日) 東京・吉祥寺 曼荼羅