写真提供/COTTON CLUB 撮影/米田泰久

米寿の名ドラマー、恩人ホレスの教えを鋭意活写する

 伝説的、と謳われる現役ジャズ・マンは何人もいるだろう。37年にデトロイトで生まれたドラマーのルイス・ヘイズも、そう言える人物かもしれない。キャノンボール・アダレイやオスカー・ピーターソンからジョン・コルトレーンやセシル・テイラーの初期演奏まで、彼は様々な人たちの録音に関与してきた。

 「いろんな録音に関与してきたというのは大切な事であり、光栄な事。ステージは一瞬だが、録音物は歴史に残るから。だから、頼まれれば誰とでも仕事をしてきたわけではなく、僕なりに選んできたつもりだよ」

 そうしたなか、彼のサイド・マンのキャリアの中で輝いているのが、60年周辺のホレス・シルヴァーの黄金期たるブルーノート諸作に参加していることだ。

 「(10代半ばからデトロイトでプロ活動をしていた)19歳の僕に、ホレスから誘いの電話がかかってきた。56年の8月の事で、NYに出た僕を、彼は駅に迎えにきてくれた。すごくビッグ・スマイルな人で、彼と生涯の付き合いを持てたのは僥倖と言うしかない。ホレスは常に作曲していたけど、譜面を与えられた事は一度もなく、僕に思うまま叩かせてくれた。いかに曲を解釈するか、それが彼の元で一番学んだ事だ」

 ヴィー・ジェイから60年にセルフ・タイトルの初リーダー作を出して以降、20作もの自己アルバムを様々なレーベルから出しているルイスだが、その新作はホレス・シルヴァーへのトリビュート盤だ。実は、往年のブルーノート発のアルバムにいろいろサイド・マン関与している彼をして、今作は同社から出す初リーダー・アルバムとなる。

LOUIS HAYE Serenade For Horace Blue Note Records(2017)

 「時間をかけてじっくり作ったよ。ホレスの息子から電話があって、この話が持ち上がった。また、彼の前の奥さんや息子さんからも同様の依頼があり、なにより僕自身も作りたかった。だから、大きなファミリーで作ったアルバムであるという気がするな。そして、このアルバムは(ホレス・シルヴァーが生涯関係を持った)ブルーノートから出すことが肝要だった」

 筆頭プロデューサーは、彼自身。納められた曲は皆、名作曲家としてならしたシルヴァーの曲。ルイスはそれらを自分のヴァイブラフォン付きのレギューラー・カルテットにトランペット奏者を加える形で、鋭意開き直している。また、“Song For My Father”では、グレゴリー・ポーターが歌っている。

 「ヴァイブラフォン奏者を僕のバンドに入れているのは、そのスティーヴ・ネルソンがいい奏者であるとともに、よくある編成ではやりたくないからさ。普段の自分のバンドで事にあたり、いかにも僕のホレス曲集にしたかったんだ」