INTERVIEW

スワヴェク・ヤスクウケ インタヴュー―小さな音で伝える、語りかけるように表現する

photo Ryo Mitamura ©THE PIANO ERA 取材協力:ポーランド広報文化センター

小さな音で伝える、語りかけるように表現する

 昨年11月、〈ザ・ピアノエラ2017〉で、スワヴェク・ヤスクウケは自ら望んでアップライト・ピアノを演奏した。2016年に録音された『夢の中で』でも、彼はアップライト・ピアノを演奏している。しかも通常の440Hzでなく、432Hzにチューニングした上で、アナログ録音によって。スワヴェクは、ピアノから独自の音を引き出すことに意識的なピアニストと言えるだろう。

 「グランド・ピアノとアップライト・ピアノは、もちろん演奏方法も異なれば、作曲にも大きな影響を及ぼします。私の場合、実家にアップライト・ピアノがあったので、自分にとって慣れ親しんできた楽器です。アップライト・ピアノはハンマーフェルトが弦を叩くので、ただでさえソフトで温もりのある音がします。けれど、私はより人間味が感じられ、心に響くようなサウンドを生み出したかった。だから432Hzにチューニングした上でアナログ録音しました」

 5年前に娘が誕生したことをはじめ、私生活の環境が変化し、その影響もあって、アップライト・ピアノで作曲することが増え、作風が聴き手の心に寄り添うようなものへと変わってきたと語る。そもそも『夢の中へ』を制作するきっかけは、愛娘から「よく眠れるような曲を作って」と頼まれたからだという。

 「ただ単に子供を寝かしつけるための曲を作ることは簡単ですが、もっとも苦心したのは、覚えやすくて誰にでも演奏できるような曲、それでいて安っぽくない曲を作ることでした。フランスの絵本から聞こえてくるような“軽み”のある音楽、とでも言えばいいでしょうか。もうひとつ意識したのは、子供が自然に夢の中に入っていけるような、穏やかな音の連なりを何回も繰り返すこと。そしたら後から驚いたのですが、自分としては、ことさら意識的にメロディを作った覚えはなかったのに心に響くメロディができていました」

 ヤスクウケの演奏は、静寂の真珠を連ねたネックレスのようだ。あるいは静寂のしずくのようなときもあり、とりわけピアニッシモの美しさには息を呑む。

 「そう言っていただけるのは、たいへん光栄です。私の愛娘は5歳ですが、彼女を大きい声で叱りつけることは簡単です。でも私と妻は、もし娘を叱らなければならないときは、彼女が理解できる簡単な言葉で、しかも小さな声で語りかけることを心がけています。音楽も同じようなもので、最近の私は、できるだけ無駄な音を省くことによって、空間を生み出し、しかも小さな音で演奏することを意識して作曲をしています。小さな音で演奏する方が、集中して聴いてもらえるからですし、シンプルな曲の中にも豊かなものを込めることができると信じているからです」

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