みずからの音楽性を〈POP SCREAMO CORE〉と銘打つラウド・シーンの注目株、初フル・アルバムで踏み出した〈素晴らしき新世界〉への一歩

 「僕は、ロックって大衆音楽だと思ってるんです。決して敷居の高いものではないし、気取ったものでもないと思っていて。そこに魅力を感じているから、みんながわかるものをちゃんと作りたいっていうのはあるんですよね」(池田直樹)。

 みずからの音楽性を〈POP SCREAMO CORE〉と銘打ち、ラウド・シーンを席巻しているANGRY FROG REBIRTH(以下、AFR)。満を持して放つ初のフル・アルバム『BRAVE NEW WORLD』で、その名の通り、彼らは自分たちの思い描く〈素晴らしき新世界〉へと、その足を一歩踏み出した。

ANGRY FROG REBIRTH 『BRAVE NEW WORLD』 Live Power Creative(2014)

 焦燥感全開で激走するサウンドの上を池田の甘いハイトーンとUの強烈なスクリームが行き交うAFRの真骨頂“SUNDAY SILENCE”を筆頭に、全11曲を収録。ダーティーなスカ・ナンバー“ペケポン”や、西海岸系ポップ・パンクな“SUMMER DAY”など問答無用にフロアをアゲる曲はもちろん、池田いわく「サム41の“In Too Deep”みたいなユルいバラード・ロックをイメージした」という“DEVIL'S WAY”や、「ザ・フォーク・クルセダーズみたいに、オートチューンを使わずに回転数を変えた声を裏に流した」というスロウ・バラード“夜歌”など、実にヴァラエティーに富んだものになっている。すべての詞/曲を手掛ける池田の音楽的な嗜好の幅広さが炸裂しているが、それらは現在の楽曲制作の主流であるPCを使ったスタイルではなく、スタジオで顔を突き合わせて詰めていくというアナログ方式から生まれている。

 「前にやっていたバンドはパソコンでデータのやり取りをしていたけど、それだと熱というか、リアルタイム感がないというか。アナログだからこそ出る初期衝動ってあると思うし、やっていて興奮しますよね」(roku)。

 「“ペケポン”は、僕が弾いたリフがキッカケになって生まれていったところもあって。曲的にもかなり好みです」(Maru)。

 「“夜歌”はすごい曲が出来たと思いました。バラードで声をこういう感じにしちゃうのはすごくおもしろいなと思って。まあ、僕は歌ってないんですけど(笑)」(U)。

2014年のシングル“EMILY”

 また、本作より日本語詞が急増。それは、「洋楽嗜好でサウンドが第一優先」だった池田が、とある少年と出会ったことが契機になったと話す。

 「福岡でライヴをしたときに、中学生の男の子から本気の進路相談を受けたんですよ。そのときは普通に答えていたんですけど、でも、自分のバンドが好きでライヴに来てくれる子が迷っているときに、CDを聴いて解決できない自分たちの音楽なんて意味がないなって、正直思ったんです。例えば、僕がMr.ChildrenとかBUMP OF CHICKENを聴くときって、歌詞がいいなって思いながら聴いているんですよ。でも、そこがAFRには反映できていないんじゃないかって。それに僕自身、僕たちみたいにインディーズで、アンダーグラウンドでやっている太い音を出すバンドは、日本語詞よりも英詞みたいな固定概念に捕われているんじゃないかって、一時期すごく悩んだことがあって。でもやっぱり、僕は挑戦をしていきたいんですよ。どんどん挑戦していって、日本語で曲を聴かせることができるようになれば、(同じシーンにいる)周りの人間を納得させられるし、単純に自分のなかで何かが変わるんじゃないかなと思ったんです。それで、アルバムの前半を〈サウンド重視の曲〉、後半を〈日本語でダイレクトに伝える曲〉にしたんですよ。2つの武器をAFRは持つべきだと思ったから」(池田)。

 いまよりも多くのリスナー層を射程圏に捉えつつ、そこにしっかりと受け入れられる作品となった『BRAVE NEW WORLD』。しかし、これはあくまでもほんの序章。まだ見ぬ彼らの新世界に期待が高まる。