INTERVIEW

ヤン・リシエツキ インタヴュー―新作は特有のグルーヴ感がみなぎるリシエツキのショパン

©Holger Hage

特有のグルーヴ感がみなぎるリシエツキのショパン

 1995年ポーランド人の両親のもとカナダに生まれたヤン・リシエツキは、15歳のときにドイツ・グラモフォンと専属契約を結び、以来ソロ作品とピアノ協奏曲の両面で定期的に録音を行っている。

 「ぼくは有名な作品ばかりではなく、あまり演奏される機会に恵まれない作品に焦点を当てることに意義を感じています。新譜のショパンのアルバムでも、《ロンド・クラコヴィアク ヘ長調》を収録していますが、これもほとんど演奏されません。でも、ショパンを知るにはこうした曲も大切なのです。クラコヴィアクはポーランド南部の山岳地帯に伝わる2拍子の舞曲で、ショパンはそれを作品に取り入れています」

 リシエツキは10代前半からポーランドに招かれ、ショパンにまつわる音楽祭や行事で演奏を続けている。

 「いまはショパン協会に保存されている原典や資料を閲覧し、版の研究や奏法の確認なども行っています。2017年12月に日本公演で演奏したノクターンもじっくり対峙した作品。このプログラムではラヴェルの《夜のガスパール》、ラフマニノフの《幻想的小品集》を組み入れましたが、この選曲で18年も世界を回ります」

 リシエツキは著名な指揮者と数多く共演し、彼らから多くの助言を受け、それを糧としている。

 「アントニオ・パッパーノとはシューマンのピアノ協奏曲の録音で共演しましたが、ひとことふたことすばらしいアイデアを与えてくれました。ヤニック・ネゼ=セガンも目からウロコのようなことをいってくれ、驚きと感動を得ました。ヤクブ・フルシャも非常に知識が豊かで奥深い人間性の持ち主。学ぶところは大きいです。パッパーノもネゼ=セガンもオペラの指揮が多く、作品全体を掌握しながら歌手ひとりひとりの音楽に的確な指示を与えるわけですから、ぼくたちソリストに対するフォローも情熱的でこまやかですね」

 今後も演奏会と録音計画がびっしり。ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番、メンデルスゾーンのピアノ協奏曲が視野に入っている。

 「ぼくは幼いころからピアノひと筋の人生を送ってきました。ふつうの子どものように外で遊びまわることはありませんでしたが、ピアノが大好きですから悔いはありません。今後、自分の人生がどのように発展していくのか、とても興味がある。先日トルルス・モルクと共演し、ショパンのチェロ・ソナタを演奏したのですが、こんなすばらしい作品を演奏できるなんてと、音楽家になった喜びをかみしめました」

 リシエツキはショパン論にも一家言をもち、「マズルカはグルーヴ感が大切」と個性的な発言をする。まさに、彼のショパンは特有のグルーヴ感がみなぎっている。

関連アーティスト
pagetop