クロノス・クァルテットが最新作に選んだのはローリー・アンダーソン。前衛パフォーマンスとアンビエント的なサウンドで全世界で支持されてきた彼女の待望の最新作は2012年に起こった災害〈ハリケーン・サンディ〉。30トラックに渡ってローリーの言葉とエレクトロニクス、クロノスの弦楽が痛ましい情景を生々しく綴る。言語と音楽の関係は非常に実験的であるが、完成した音楽は描写的であり抒情的でもある。〈消失の描写〉が美しくも心を打つのは、ローリーの発する言葉もあるが現代音楽の名手として名高いクロノスのストリングスがこの上ないキャンバスを担っているから、なのかもしれない。