前衛作曲家を語る上で外せないマウリシオ・カーゲルの珍しいピアノ曲集の新録。視覚要素が破天荒なオーケストラ曲で有名だが、彼のピアノ作品もコンセプチュアルで刺激的だ。一連の組曲として演奏しても、別の曲との合間に交互に演奏しても良いという《擬態》(本盤は両バージョン収録)、半狂乱の笑い声が響く《MM51》など、シリアスと諧謔の間を絶妙に縫う稀有なピアノ曲集。WERGOレーベルでケージ、フェルドマン作品を手がけ現音奏者として確固たる地位を確立したザビーネ・リープナー女史による演奏というだけでも惹かれるが、物珍しさを超えた魅力も兼ね揃えた楽曲達であることも見過ごせない。