《Old Portrait》2016 アクリルグワッシュ、キャンバス
前澤友作氏蔵 Courtesy of Taka Ishii Gallery
Photo by Kenji Takahashi

二人の頭文字をとって、TTTG。

 2000年に初のドローイング集『ランジェリー・レスリング』が出版された頃には、作風と名前はなんとなく一致していたのですが、この五木田智央って人は、これでもう完全に世界的ブレイクするアーティストなんだな、と勝手に思ってました。

 人生十人十色。まあ、長く生きてると皆、各々色々ある訳ですが、暫くまだ彼と僕は、縁が全然ありませんでした。

 時は流れて2014年。春先のNYで、タウン誌か何かのアート評で、TOMOO GOKITAの新作を発見。

 「えっ、この人、今こんなスキルになってたの?!」

 しかも、80年代にはバスキアも所属したメアリーブーン・ギャラリーで個展を行なったとのこと!

 残念ながら展示は既に終わったばかりのようだったので、ギャラリーに電話をして、行ったらまだ観れるものはあるかを聞くと、なんとソールドアウトで観せれるものはナイ!と。この一連の流れで僕は相当に雷に打たれた訳であります。

 帰国して、「ハタチ」という対談集の為に、誰と対談したいかという話になり、迷わず五木田君を指名しました。で、彼のアトリエこと調布市の「道場」へ出向いたのですが、玄関へ現れるなり、「どーもどーも、まずは呑みませんか?」と。中へ入るとまず目に飛び込んで来たのが、テーブルの上に鎮座まします茄子の煮浸し、鰊の煮付け、お漬物なんかに、サッポロラガーの赤星が何本が。この時点で僕はホっとしました。「あ、自分の勘はなんか間違ってなかったな、」と。「共通の友人はだいぶ居るようですけど、僕の音楽は聞いたことあったりします?」とまあ言葉を選んだりしていると、五木田君が一枚のレコードを手に取って来て、「これが最初のテイさんレコです」と。素人多重録音時代の僕の曲が2つ収録されてる『DEMO TAPE−1』が。「しかも、ジャケットまでやってて、畜生、グラフィックもやる人なんだなーと思ってました」とかなんとか、恐縮です。

 五木田君の5歳上の兄貴が僕と同じ年で、兄貴の影響でYMOに衝撃を受けてから音楽に興味を持ったらしく、(つまり同じ時代に同じものに)その後の音楽遍歴の話とか、お互いバンドもやってたとか、同じ頃に胃潰瘍になってたんだな、なんて話を沢山して。

 この後に「THE GREAT CIRCUS」DIC 川村記念美術館(千葉)や「Bésame Mucho」オーナー・フレイザー(ロサンゼルス)などの大きな個展が控えているのを教えてもらって、よし出来る限り地球のどこまでも君を追っかけるぞーと予告ホームランしてその場は別れてビジネスホテルで眠り、後日実行したのである。「Damege Control」ビル・ブレイディー・ギャラリー(マイアミ)には行けなかったんですが、今のところ、LA、NY2回、香港と、有言実行してますよ、大人でしょ。ライブで展覧会を観に行くこと。新しい遊びです。

 近年は、数枚のソロやMETAFIVEのジャケなんかを描き下ろしてもらったりもしつつも、基本は色んな土地で一緒に呑んでるだけなんですけども、五木田君はビールとプロレスと音楽が本当に大好きですね。僕がプロレス殆ど分からないので、下らない話か音楽の話が多いかな。酒の席で話題に出た音楽のCDRやカセット、ダブったレコードを、僕はコラージュネタからスピンオフしたエロ本やプロレス本なんかを添えて後日送ったりしてます。

 五木田君は絵が描けるから絵をチャチャッと音楽に添えてくれて、なんか僕のが得してる気がしますけど、物々交換。

 あ、最新アルバムの『EMO』では、TGという曲でトランペットを名演してもらったし、五木田君自身の素晴らしき宅録デモテープを12曲厳選したものをCDRに焼いて頂いたので、砂原良徳君にMAしてもらって戻したりと、割と音楽制作寄りの活動も案外してましたね。二人の頭文字をとって、TTTG。でも主な活動が“物々交換”というのが新しくて心地良い気がしてます。特に大きな野望も目標も全く無いのですが、僕としてはレコードと一緒に送ったエロ本の切り抜きネタが、また新作のモチーフになって大きなキャンバスで目の前に現れたら最高、アシスタント冥利です。そうか、このデュオでは、僕はアシスタント兼任でもあるのか!新しいな。。

 という訳で話はだいぶスピンオフしましたが、去年から聞いてて楽しみにしていたPEEKABOOです。

 アルバムで言ったら五木田智央ベスト・アルバムにニュー・アルバムを合わせた2~4枚組み級のボリュームなのでしょうか、楽しみで仕方ありません。東京なんで、勿論何度か行きますよ。行きましょうよ。

 


TOWA TEI / テイ・トウワ

1990年にDeee-Liteのメンバーとして、全米デビュー。その後活動の拠点を日本に置き、1994年に1stソロ・アルバム「Future Listening!」をリリース。DJと並行して制作も精力的に続ける。2017年にはNHKドキュメンタリー番組「草間彌生 わが永遠の魂」の音楽を担当し、9枚目のソロ・オリジナルアルバム「EMO」をリリース。7月に新作リリース予定。

 


Photo by Yoshimitsu Umekawa

TOMOO GOKITA / 五木田智央

1969年東京生まれ。イラストレーションから出発し、60~70年代のアメリカのサブカルチャーやアンダーグラウンドに影響を受け、当時の雑誌や写真にインスピレーションを得た作品を発表。キャンバスにアクリルグワッシュで描くモノクロームの人物画を中心に制作。ニューヨーク、ロサンゼルス、ベルリンなどでも作品を発表し、高い評価を受けている。

 


EXHIBITION INFORMATION
五木田智央 PEEKABOO(Tomoo Gokita: PEEKABOO)
2018年4月14日(土)~6月24日(日)東京・初台 東京オペラシティ アートギャラリー(3Fギャラリー1、2)
開館時間:11:00-19:00(金・土は11:00~20:00/いずれも最終入場は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(ただし4月30日は開館)
入場料:一般 1,200円(1,000円)、大学・高校生 800円(600円)、中学生以下無料