INTERVIEW

河村尚子『ショパン:24の前奏曲&幻想ポロネーズ』 〈どうしても録音として残しておきたい〉決意と熱が結集したアルバム

Photo: Marco Borggreve

〈どうしても録音として残しておきたい〉という決意と熱が結集した充実のアルバム

 ピアニストの河村尚子が久しぶりの録音に取り組んだ。ショパンの畢生の傑作《24の前奏曲》、そして《幻想ポロネーズ》などの晩年に近い作品群が選ばれた。

河村尚子 ショパン:24の前奏曲&幻想ポロネーズ RCA Red Seal/ソニー(2018)

 「ショパンはもともと、私にとって大事な作曲家で、近しい存在であったのですが、水戸芸術館で4年間にわたり〈ショパン・プロジェクト〉を行って、じっくり再びショパンに向き合っていたというのが、今回、録音に至った理由です。それと同時に、いま自分が弾きたいものを録音しておきたい、という切実な気持ちがあったことも大きな理由ですね。いま何が起きても不思議ではない時代に入ったという感覚が強くあり、ともかく、いま出来ることはしておこうという気持ちが強くありました」

 と河村は語る。録音用の楽器にはベーゼンドルファー・インペリアルを選んだ。ショパンの作品でベーゼンドルファーが選ばれるのは珍しい。

 「録音の時に調律をお願いしている調律師さんがいくつかの楽器を紹介してくれて、その中から今回のベーゼンドルファー・インペリアルを選びました。特に気に入ったのは、低音部の伸びですね。その粘るような感覚が今回の録音にも活きていると思います」

 確かに、きらびやかなショパンというよりも、もっと内面に訴えかけて来る演奏だが、それはショパンの録音で使用されることが珍しいベーゼンドルファーを使ったという効果もあると思う。特に《24の前奏曲》では濃密な世界が広がっている。

 「作品の番号順にではなく1曲ごとバラバラに録音して、順番通りにつなげたので、より、ひとつひとつの作品が濃密なイメージになったのかもしれません」

 そして、今年からはベートーヴェンのプロジェクトに挑戦する。

 「2年間で4回のツィクルスです。最近、ようやくベートーヴェンが自分の近くにやって来てくれた感じがしていますが、それにはホルヌングなどとベートーヴェンの室内楽をたくさん演奏した経験があったから。ベートーヴェンは簡単には微笑んでくれません」

 全32曲のベートーヴェンのソナタの中から14曲を自ら選んで、それを4回のコンサートで披露する(東京・紀尾井ホールなど)。

 「第1回目は《悲愴》と《月光》を含んだプログラムで、いわゆる名曲プログラムなのですが、その中にもベートーヴェンの様々な感覚、彼の人間性など、自分が発見したベートーヴェン像を、その中にこめて演奏してみたいと思います」

 期待のプロジェクトがまた始まる。

 


LIVE INFORMATION

河村尚子 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ・プロジェクト Vol.1(全4回)
○6月1日(金) 19:00開演
会場:紀尾井ホール
<オール・ベートーヴェン・プログラム>
ピアノ・ソナタ 第4番 変ホ長調 Op.7/ピアノ・ソナタ 第8番 ハ短調 Op.13 「悲愴」/ピアノ・ソナタ 第7番 二長調 Op.10-3/ピアノ・ソナタ 第14番嬰ハ短調 Op.27-2 「月光」
ほか、大阪、神奈川、山形、兵庫公演を予定
www.japanarts.co.jp/concert/concert_detail.php?id=646

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