INTERVIEW

cali≠gari『3』『4』驚きのアイデアに満ちたセルフ・カヴァー集の第2弾

cali≠gari『3』『4』驚きのアイデアに満ちたセルフ・カヴァー集の第2弾

ちょっと休憩に入った3人からの置き土産。ふたつのテーマを掲げ、容赦ないインパクトで迫る久方ぶりのセルフ・カヴァー集は、彼ららしい予想外のアイデアに満ちている!

 昨年5月にメジャー・デビュー15周年記念として発表した最新アルバム『13』から約1年。cali≠gariがセルフ・カヴァー集『3』『4』を完成させた。2013年にリリースされた『1』『2』以来、実に4年9か月ぶりの続編である。桜井青(ギター)の歌唱によるオリジナルを石井秀仁のヴォーカル曲としてリアレンジした『3』と、『13』にも参加していた林正樹、石井の別プロジェクト=GOATBEDのサポートを務める吉田明広というジャズ畑の鍵盤奏者に編曲を委ねた『4』。驚きのアイデアに満ちた2作品について、メンバー3人に話を訊いた。

cali≠gari 3(良心盤) 密室ノイローゼ(2018)

cali≠gari 4(良心盤) 密室ノイローゼ(2018)

 

――『1』と『2』以来のセルフ・カヴァー集ですが……あれ、もう4年9か月前なんですよね。

桜井「早い」

――なぜ今、続きを出そうと?

桜井「『13』のツアーまでがアニヴァーサリー・シーズンの上半期だったから、下半期も何かやらなきゃねって話をしてて。去年の12月ぐらいにアルバムをもう1枚出せたらっていう案もあったけど、そんなの無理じゃないですか(苦笑)」

――これまでのリリース・ペースを考えると、無謀ですね。

桜井「でも、結局『3』と『4』を足したら10曲ぐらいじゃないですか。大概ですよね(笑)。オリジナル作ではないとはいえ、結構切羽詰まった進行でしたよ、やっぱり」

――まず、もともとは青さんがヴォーカルを取っていた原曲を石井さんが歌い直した『3』のリアレンジは、5曲中4曲を青さんが担当されたということですが。

桜井「最初の“破れた電報”は、『13』ツアーのときに青森でやってみたんですよ。どんなもんかな?と思って、試しに。なんか、曲が青森っぽいじゃないですか(笑)」

――どういうことですか(笑)。

桜井「青森っていったらやっぱり寺山修司だし、そういう雰囲気の曲といったらこれかなと思って。青森はめったに行かないから、そういうところに来てくれるお客さんにちょっとレアなものを聴かせたいっていうのもあってやってみたら、まあ、グジャグジャになりましたね(笑)。ただ、そのとき思い描いてたイメージは明確に残ってたから、それをちゃんとレコーディングしたって感じですね」

――よりダウンテンポでサイケ感が増してる感じがしました。

桜井「きっと、もともとそういうふうにしたかったんじゃないんですか? あの頃は一人で作ってて、だからこその宅録感が逆に鬼気迫ってて良かったんですけど(笑)」

――原曲の音数はめちゃめちゃ少ないですしね。

桜井「ちょっと異常ですよね。夜聴いてると怖い(笑)。あのときの変な効果音、ビョイーンっていうのも、どうやって出したんだっけ?と思って。今、作ろうと思っても、どうやっていいのかわかんない。ちょうどあの頃、初めてご家庭用というか一般の人用の、プロ・トゥールスのデジWO1っていうのが出て、それを導入したんですよ。たぶん、それで初めて作った曲があれで」

――そういうパーソナルな質感の楽曲を、石井さんは今回改めて歌ってみていかがですか? もう別物という意識なんでしょうか。

石井「そういうつもりもないんですけど、ただ、自分が歌うとなったら歌唱法みたいなのも元のようには歌えないっていうのがあるから、普通に歌ってみたら、ああいうふうになりましたってことですね。特別何かを意識したりはしてないです」

桜井「自分が想像していたのとは違う歌い方なんですけれど、まあでも、全然いいですよね」

――ロウ・ヴォイスの部分は、楽曲の持つ闇がまた強調されてるように思いました。そんなダークなオープニングから、次は賑々しい“新宿ヱレキテル”ですが、こちらは近年のライヴでお馴染みのヴァージョンでしょうか。

桜井「まあ、あれがベースですよね。ただ、前のホーン・セクションは僕が作ってたんですけど、今回は秦野(猛行)さんにスコアを書いてもらって。〈青ちゃん、あのホーンはできないよ、あんな運指はないよ〉って言われちゃった(笑)」

村井研次郎(ベース)「今回、ホーンは初めて生になったんですよ。すごいメンバーですよ。トランペットはTHE THRILLの多田暁さん。トロンボーンは米米CLUBとかやってる河合わかばさん。あと、サックスはいつものyukarieさんで」

――豪華じゃないですか。

村井「ね? びっくりしちゃった」

――今回のヴァージョンの華やかさは、生ホーンというのも大きいかもしれないですね。そして次は“コバルト”。改めて原曲を聴き直したんですけど、めっちゃカッコいいですよね。レア・グルーヴとして発掘された音源です、と言われたら信じてしまいそう。

桜井「ああ、当時は〈キューティー・ポップ〉ってありましたよね。山本リンダとかの幻の名盤が次々再発されて、やたらそれを聴いてた時期があって、ウチでもそういう曲が欲しいなって。〈ウワーオ!〉とかそれで入ってるんですよ」

――そんな曲を今回は石井さんがアレンジされていて。

桜井「これは自分でやったらもったいないなと思って。じゃあもう、石井さんに好き勝手にやってもらおうって思ったら、ホントにバラバラになりましたよね(笑)。僕は“淫美まるでカオスな”(4つ打ちのアッパーなダンス・チューン)とかの感じを思い出しました」

――『3』のなかでも印象がガラッと変わった曲ですよね。

石井「まあ、ガラッと変えたほうが楽ですね。だから、トラック自体は何も考えずに勝手に作って、そこに歌を乗っけたっていう。コード進行が変わってるからメロも変わっちゃってるんだけど、他の曲は青さんで、俺がこの曲だけアレンジするんだったら、なるべく違うものにしないと俺がやる意味がないですからね」

――上がってきたものを聴かれていかがでした?

村井「もう別物ですよね。ライヴのときにいいんじゃないですか? いろいろ振ったり、飛んだりできると思いますよ」

――で、ガラッと変わったものはもう1曲、“君と僕”もあります。

村井「これは参考音源をもらったとき、アレンジがかっこよくて感動したんですよ」

桜井「僕のソロのヴァージョンを渡したんですよね」

石井「もともとは違うアレンジの音源がきたんだけど、俺は嫌で、ソロのやつのほうがかっこいいからそっちに変えてくれって言ったの」

桜井「“君と僕”って何パターンもあるじゃないですか。オリジナルのケルトっぽいのがあって、『8』を買ったときのダウンロード特典の、パンクっぽいのがあって、で、もう1曲、僕が3年ぐらい前にソロで出した“君と僕”があるんですよ」

石井「あれでしょ? マンガとセットの……」

桜井「そうそうそう。この世に500枚ぐらいしかない」

村井「コミケで売ってたやつだ」

桜井「で、そのソロの“君と僕”がいちばん今回のイメージに近いんじゃないかなってことで、二人に音源を渡して」

石井「青さんのソロのやつはシンセ・ポップみたいな感じだったよね」

桜井「サカナクションみたいでしたよね(笑)」

石井「うん、そう遠くない」

――で、そちらの音源をお二人に土台としてお渡しして、弾いていただいた、歌っていただいたって感じなんですかね。

桜井「そうですね。それをさらにバンド・アレンジにしたって感じですね」

――そして次は“空も笑ってる”。これは少しシンセが加わって。

桜井「シンセは秦野さんですね」

――疾走感のあるビート・ロックというもともとの方向性は踏襲されています。

桜井「僕がやたらeastern youthに傾倒してた頃に作っちゃったから、最初のやつは怒鳴ってたんですよ」

――そうですね。結構ダミ声といいますか、音を意識的に汚してるのかなって。

桜井「意識的にっていうか、真似っこしてみただけですよ。声がね、ホニャニャニャ〜みたいな感じだったから。赤ん坊のほうがもっと歪んだ声が出せるよって感じでした(笑)」

そこが今回は石井さんのヴォーカルになって、サウンドも全体的に洗練された印象でした。

桜井「ギターは基本、何も変えてないんですけどね。あと、あの頃は石井さんもギター弾いてたから、“空も笑ってる”にも僕の知らないギターがいっぱい入ってて。ああうん、なるほどって感じでしたね」

――今回のギターは青さんだけで。

「そうですね。ただ、ヴォーカリゼーションがすごいですよね。どこまで声出んの?っていうぐらい声出てませんか? これ」

――そこは普通に歌った感じですか?

石井「いや、普通じゃないですよ。ライヴとかじゃ歌えないです。今回は部分的に録ってるから歌えたけど、全部は無理ですね。コーラスのダビングみたいなところは、自分が歌えないようなキーでも強引に歌ったりするんですよ。歌ってくれる人がいっぱいいれば、頼めばいいですけどね、cali≠gariは自分でやらなきゃいけないから(笑)」

――そこはご自身でがんばると(笑)。そして、ラストの“腐った魚”もオリジナルの延長線上にあるような仕上がりですね。

桜井「普通にそのへんに落ちてるようなアコースティックな曲ですよ(笑)」

――より穏やかな印象になってるかなって。

桜井「そうですよね。これはもう気分なんですよ。中西(祐二。cali≠gariのサポート・ドラマー)に、〈カホン持ってきて、適当にやってみて〉って。それでベースを全部録ったあと、秦野さんにシンセを入れてもらったかな。最初は秦野さんにアレンジを全部任せようかと思ったんですけど、改めてアレンジするほどの曲でもないよねって感じになっちゃって(笑)。すでに完成されちゃってますから。こういう曲って、誰がアレンジしてもそれなりに良い曲になりますよね(笑)。作った時期はとにかく古いんですけど。高校のときに作った曲ですから」

――ずいぶん最初期の曲なんですね。

桜井「そうですね。指弾きもそんなにはできなかったから、コード・ストロークとかで作ってたはずですけど、歌詞はもっと早くて、高校出てすぐぐらいに作ってるはずですよ。cali≠gariって始める前に、実はもう曲をいっぱい作ってたので、バンドを立ち上げたときにはすでに10曲ぐらいあったんですよ」

――その時点であったとなると、生まれてからもう30年近く経つということですか……。

桜井「うん、18歳か19歳の頃だから、89年か90年生まれの曲ですね。もう覚えてない、さすがに(笑)。家探しすればデモテープ出てくるかもしれないけど」

 

GR'18