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たとえ売れなくても、自分でいいと思うものを作り続けたほうがいい

――メイさんはNaoさんの新作『Kvarda』を聴かれて、いかがでした?

メイ「超格好良かったです。イントロがあって全体として起承転結があるっていう、作品の構成が『Passengers』と似ていて、そこも嬉しかったですね。流れでバーッと聴いていっても引き込まれるし、ひとつひとつ丁寧に聴いていってもいい。あとアートワークもかっこいいし、非の打ち所のないアルバムだと思いました」

Nao「わあ、ありがとうございます」

Nao Kawamura Kvarda NAKED VOICE(2018)

メイ「予想外のところに予想外の音が入ってたりして、音作りもすごくおもしろいし、すべてがNaoちゃんという存在をちゃんと通ってきた音という感じがしましたね」

Nao「今回はユーモアも入れたつもりなんですよ。曲でも歌詞でも遊びたいと思っていたんです。だから、曲作りの段階から楽しかったですね」

――前作の『RESCUE』はNaoさんのすごく衝動的な面が出てましたけど、今回はどこかに一歩引いた視線があって、それによってNaoさんのいろんな面が出てる感じがしました。

Nao「ああ、まさにそうですね。今作には自分自身を客観視した視点がある。『Cue』が〈静〉、『RESCUE』が〈動〉だとしたら、『Kvarda』は〈悟り〉っていう感じかな(笑)。今回は制作に入る前の1か月間、人にまったく会わないで自分ととことん向き合う期間を設けたんですが、その時の感覚をアルバムに反映したかったんですね。もちろん『Cue』や『RESCUE』の要素も地続きなので入ってると思うんですけど、今回はもうちょっと自分のなかの核心があると思う。プラスチックの容器の中に木が生えてるイメージというか……。例えば、シンセみたいにナチュラルじゃない音に囲まれてるけど、その中にははっきりとした芯があるという。そのイメージを深夜にスケッチして、制作前に澤近に伝えました」

Nao Kawamuraの2017年のEP『Cue』収録曲“食べかけの朝”
 

――おもしろいですね。

メイ「うん、おもしろい。すごく自分を外側から見れてるよね。びっくりした」

Nao「そういう作業をしないとやっていけないんだよね、私は(笑)。自分を信じようと思ってもなかなかできなくて、どこかにもうひとり〈大丈夫だよ〉っていう自分を作らないといけない。私のなかにはそういう自分が3人ぐらいいるんだと思う」

メイ「わかるー。生み出す作業って孤独な戦いだもんね。でもNaoちゃんがすごいのは、その3人すら客観視する視線があるじゃない?」

――神の視点というか(笑)。

Nao「(笑)。まあ、誰かが言ってくれた言葉がその視点になってくれることもありますからね。だから、人との出会いはすごく大切にしてます」

メイ「私はもっと衝動的な人間なので、そこまで自分を客観視できていないと思う。思ったことを言っちゃうし、やりたいことをやっちゃうし、そうしようと心がけているところもあって。それで後から反省して学ぶこともありますが、なるべく衝動に突き動かされる感じで自由に行動したいと思うんです。誰かに恐れ入ったり、人の目を気にしたりしてる暇はないというか……。私の場合、客観的な視点はメンバーとか友人が与えてくれるんですよ。厳しい時もあるけど、的確な意見をくれる」

――Naoさんはいつ頃からそうした自分を客観視する視線を持つように心がけてきたんですか?

Nao「大学時代に自主でアルバムを一枚作った頃から多少意識するようになったのかな? 当時は今と全然違うサウンドで、ティン・パン・アレーや荒井由実みたいな音楽をやろうとしてたんです。でも、自分の全部を出し切れない感じがして。だからいま、客観視することで自分のなかの扉を開けようとしているんだと思う」

メイ「ティン・パン・アレー、私も大好き」

Nao「ホント? でも確かに、『Passengers』もちょっとそういうムードがしたな」

メイ「大学生の時、そのあたりの音楽を擦り切れるまで聴いてたの。シュガーベイブも大好きなんだけど、あのアルバム(75年作『SONGS』)って当時はあまり売れなかったんだよね? 今聴いてもめちゃくちゃ格好良いのに、当時その良さが理解されなかったのはもったいない気がして。日本って過去のものは良しとされるんだけど、同時代の新しいものはリアルタイムで評価されにくい傾向がある気がしていて」

Nao「そうなんだよね。今回のアルバムも完成した時、私のなかではすごく充実感があったんだけど、〈もしかしたら売れないかもな〉とも思って。でも、たとえ売れなくても、自分でいいと思うものを作り続けたほうがいいんじゃない?って」

メイ「ホントそう。自分の気持ちには忠実にやっていったほうがいいと思う。でも、新しく出てきたものや、同時代のものに対してどこか遠巻きに見る日本人の視点って独特というか、不思議だなと思っていて。

以前ZA FEEDOでシンガポールにライヴをしに行ったとき、私たちのことを初めて観るお客さんばかりだったのに、すごく熱烈に反応してくれたんです。去年ヨーロッパでソロ・ライヴをやったときも、たまたま通りすがった街の人や音楽家とかいろんな人が声をかけてくれたし、〈あれはどうなってるの?〉〈何語で歌ってるの?〉〈CDはないの?〉とか質問の嵐で(笑)。音楽の内容も見てくれてるし、〈何かやってる!〉〈なんだろう!〉と、とりあえず興味を持って見てくれるのが嬉しかったです」

ZA FEEDOがシンガポールのイヴェント〈GETAI SOUL2016〉に出演した際の映像
 

――日本ではそういう反応が少ない?

メイ「ライヴの後そういうふうに話しかけられることは少ないですからね。機材のことや曲作りに関して訊かれることもあまりないです。訊いてほしい(笑)!」

Nao「確かに私たちはCDという商品を作ってそれを売っているわけだけど、アイドル的にではなくまず人間的な成長をみんなが応援する、メッセージに共感する、そういう部分が根本にあってほしいと思うんですね。日本でもメイさんが今言っていたシンガポールやヨーロッパのような反応がもっと増えたらいいと思う」

メイ「今はネットでいろんなことを知れるけど、そこに頼りすぎちゃってる部分もあるよね。〈本当のことへの不安定さ〉というか。この間データ・サイエンティストっていう職業の人と話したんですけど、こういう仕事の人たちってデータのことばかり考えているのかと思ったら、その人は〈人類が幸せになるためにデータを使って仕事をしているんだ〉と言っていて。生身の人間がいちばん大事で、人の感情や思考をいちばんに考えて仕事をしていると言っていて、とても感動したんです。

私たちもそこを大事にして、自分の表現として発信していくことが大切なんだと思うし、そうやってひとりひとりが自分に忠実でいることができれば、この世の中で何が大切で、何が本当なのか見極められるし、自分も、周りも、良い時間が過ごせると思うんです。人間が幸せになれれば動物も幸せになるし、太古から人間に寄り添ってきた音楽にはそれを手助けするすごい力があると、私は信じています」

Nao「わかるな……そういう気持ちは大切だと思う。音楽は世界平和。繋がっているもんね」

メイ「そうそう、平和な形でね」

 


Live Information
〈2nd バドアス EP “Passengers” release FUJIYAMA TOUR!〉

5月25日(金)東京・下北沢BASEMENT BAR
ZA FEEDO Presents「CAMP FIRE vol.2」
共演:ルイス・コール(ノウアー)
DJ : 高橋アフィ(TAMTAM)
オープ二ング・アクト:木
チケット:2,800円/3,300円
お問合せ:下北沢BASEMENT BAR 03-5481-6366 
※ご予約はこちらから

5月31日(木)名古屋TOKUZO
共演:中村佳穂Band、RADIACTIVE
オープ二ング・アクト:AWA
開場/開演:18:00/19:00
チケット:2,800円/3,300円
お問合せ:052-733-3709(名古屋TOKUZO)
※ご予約はこちらから

6月1日(金)京都NANO
共演:中村佳穂Band
DJ:EIJI(Dachambo)
opening “in my own way” for you:Moccobond
開場/開演:18:00/18:30
チケット:2,800円/3,300円
お問合せ:075-254-1930(京都 NANO)
※ご予約はこちらから

6月2日(土)大阪・堺ROUTE26
共演:mahol-hul、araGrace’s OneHotNight、tatalaYAVZ、parallelogram
開場/開演:16:00/17:00
チケット:前売り2,500円/3,000円
お問合せ:072-222-3130(大阪ROUTE26)
※ご予約はこちらから

★ツアー・ファイナルの詳細は後日発表!