5周年イヤーを迎えた彼女に、もっと好きがはじける!

 運命的な出会い(“天使のテレパシー”)、ふたり初めての旅行(“わたしを旅行につれてって”)、カレから言い出されたサヨナラ(“知らない誰かに抱かれてもいい”)――昨年リリースした3枚のシングルを通して、恋の始まりから終わりまでのストーリーを演じてきたゆっふぃーこと寺嶋由芙。〈古き良き時代からやって来たまじめなアイドル〉をキャッチフレーズとしてきた彼女が、いにしえのアイドルさながらの戦法で自身の新たな魅力を引き出してきたその〈3部作〉は、その次に控える作品への期待を十分に高めてくれるものでした。そして……。

寺嶋由芙 きみが散る インペリアル(2018)

 およそ1年半ぶりとなるニュー・アルバム『きみが散る』に収められた新曲群は、「歌詞もいままでにないタイプで、その斬新さと曲調の斬新さで新しいゆっふぃーを見てもらえる曲」――小説家・最果タヒが書き下ろした詞をもとに、一般から曲を募ったタイトル・ナンバーをはじめ、大人びた印象の……いや、そもそもゆっふぃーはデビューしたときから成人だったので、二十代半ば女子の等身大に限りなく近い印象の楽曲が並んでいるところが注目のポイント。

 「これまでは〈アイドル・寺嶋由芙〉の気持ちやストーリーを盛り込んで曲を作っていただくことが多くて、前作『わたしになる』のタイトル曲も、〈いろいろあるけどがんばります!〉みたいな、ゆっふぃーの気持ちを歌ってると見せかけて恋の歌にしてたり。で、今回いただいた新曲は、そこも踏まえつつ、もっと広い人に共感してもらえる曲ということで、恋愛ソングもかなり増えましたしね。それは私がソロ・アイドルということもあるし、年齢的なものもあると思うし。そういう意味では、アゲアゲな感じではないかも知れないけど、より刺さる曲をもらえたかなって思います」。

 等身大の恋愛ソングを歌うことで、ゆっふぃーというより寺嶋由芙という女性の〈個〉の部分がクローズアップされた印象も自然と浮かび上がってくる。

 「だといいなって思います。同世代の女子にも届くといいなっていうのもありますし、〈アイドル感〉が少ないって言ったら語弊があるんですけど、新曲はアイドルらしさをけっこう無視して作っていただいてる感じもすごくします。コールを打ちにくい曲も多いので、ヲタクのみんながどう思うか謎なんですけど、そこは〈新しい!〉と思っていただけるとうれしいですね。自分にとってのアイドルの理想っていうのは変わらずあるんですけど、それを頑なに固持するだけではなく、ソロになって5年目でもあるので、ここは〈一枚脱皮しました〉ぐらいでいきたいなと」。

 今回、新しいゆっふぃー作りに参画した作家陣には、過去の諸作でお馴染みのいしわたり淳治、ヤマモトショウ、宮野弦士、rionosらのほか、お年頃的にまさに等身大ソング(だけど、ゆっふぃーには絶対ありえない!)と言える“結婚願望がとまらない”では鈴木慶一が曲を、ミッド80s感たっぷりの“たぶん…”では歌謡曲への造詣が深いことでも知られるクリス松村が詞を託している。

 「いままでにない曲をいつも求めているんですけど、具体的にどういうのが良いのかって私からは出てこなかったような曲を今回はたくさん作っていただきました。クリスさんには歌謡曲に詳しいからこそ書ける歌詞をお願いして、でも、これが初作詞なんだそうです。歌唱指導までしていただいて、例えば……〈甘い蜜あふれてこぼれてしまうわ〉とか〈脱ぎたいの…私〉っていうセリフとか、いやらしくなくセクシーにって。清純そうなふりして清純じゃない曲を歌うのが古き良きアイドルの魅力だからっていうことで……難しかったですけど、がんばりました!」。

 今回のアルバムは、アイドル・寺嶋由芙のデフォルトを築き上げた前作『わたしになる』と、このあとの寺嶋由芙の橋渡し的ポジションだとも語るゆっふぃー。10月にはソロ・デビュー5周年を迎えることもあり、次も何やらおもしろそうなことが待ってそうな……アルバムを聴いていると、それぐらい〈うれしい予感〉しかありません!