INTERVIEW

吉野直子『ハープ・リサイタル3』 耳になじみ深い旋律も、ハープで演奏すると別のよさが発見できる

©Akira Muto

耳になじみ深い旋律も、ハープで演奏すると別のよさが発見できる

 日本を代表するハーピストのひとり、吉野直子は、これまで数々の録音を行ってきたが、2015年には自主レーベルのグラツィオーソ(grazioso)を創設し、5年計画の録音プロジェクトを開始した。今回の第3弾『ハープ・リサイタル3』は、シューマン、シューベルト、モーツァルト、メンデルスゾーン、ブラームス、J.S.バッハの作品で構成されている。

吉野直子 ハープ・リサイタル3~バッハ・モーツァルト・シューベルト・ブラームス 他 grazioso(2018)

 「ハープのオリジナル作品が少ないドイツ、オーストリアの偉大な作曲家たちの作品を選びました。ピアノ作品が多く、耳になじみ深い旋律を、ハープで演奏するとまた別のよさが発見できるのではないかと思い、ハープの響きに合う選曲をしています」

 CDの終幕を飾るのは、バッハの《無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ》第2番の最後に置かれた《シャコンヌ》。吉野直子が長年愛奏している作品だ。 「この作品を初めて演奏したのは、もう20年近く前ですが、当時はまだその深さを理解せず勢いで弾いていた気がします。それが徐々に自分のなかで熟成し、いまはハープならではの響きと特質が生かせるよう音楽的な意味合いを掘り下げて演奏するようにしています。バッハの作品は永遠で、いまベストを尽くしたと思っても次に演奏すると、また異なった弾き方を発見する。今回は《シャコンヌ》を残したいと思ってプログラムを構成しました」

 ブラームスの《間奏曲》《ラプソディ》、モーツァルトの《ピアノ・ソナタ》も長年弾き続けている。

 「ブラームスはハープのオリジナルにはない魅力があり、大好きな曲です。モーツァルトはコンチェルトがありますのでずっと愛奏していますが、モーツァルトは私の心にとても近い作曲家だと感じています」

 このアルバムでは、これまで聴き慣れた旋律がまったく異なった空気をまとって現れる。ハープの響きがピアノやヴァイオリンの曲想の色合いを変化させ、響きを変容させ、みずみずしい音世界を繰り広げる。吉野直子はデビュー当時から「ハープは多種多様な音色をもつ楽器だということを知ってほしい。ハープの可能性を追求したい」と熱く語ってきた。その基本姿勢はいまだ変わらず、さらに前進し続けている。

「レパートリーややりたいことをむやみに広げるのではなく、ひとつのことにじっくり取り組み、奥深さを探求したい。本当に演奏したいことに集中して……」

 最近は、国際コンクールの審査員や海外の室内オーケストラとの共演、さらにアジアでのコンサートにも力を注いでいる。オーソドックスなハープの奏法、本来のハープのよさをひたすら極め、聴き手に届ける彼女。その思いが込められたアルバムの誕生である。

 


LIVE INFORMATION

いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭 2018
会場:石川県立音楽堂コンサートホール(金沢)
○5月3日(木・祝) 12:40開演
[演奏曲目] モーツァルト:フルートとハープのための協奏曲
[共演者] 高木綾子(フルート)、広上淳一(指揮)、紀尾井ホール室内管弦楽団
○5月4日(金・祝) 11:30開演
[演奏曲目] モーツァルト:ピアノ協奏曲 第12番(ハープ版)より他
[共演者] いしかわミュージック・アカデミー弦楽四重奏団
www.naokoyoshino.com

関連アーティスト