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ポップス・ロック&オーケストラによる音楽の祭典〈billboard classics festival 2018 in YOKOHAMA〉をレポート

ポップス・ロック&オーケストラによる音楽の祭典〈billboard classics festival 2018 in YOKOHAMA〉をレポート

billboard classics festival 2018 in YOKOHAMA

 79年のヒット曲“ポーラー・スター”の旋律を編み込んだ序曲(オケのみ)を聴いたていたら、同じ名称を冠して仙台~成田間で運行されている高速バスのことを想い出した。billboard classicsのパンフレットを繰るとチラシ束の最前列にいつも、白地に青い活字だけの〈義援金のお願い〉が挟まれている。上段に大きな文字で〈東日本大震災/熊本地震〉と、下段に〈皆様のご協力/よろしくお願いいたします〉とのみ記されている。素朴にそう呼びかけて、舞台上の出演者たちがMCで敢えて触れることもない。が、その静かな願いこそが来場者各自の胸中に何かを響かせ、前述のような連想を呼び覚ますのかもしれない。ましてや今回のfestival 2018 in YOKOHAMA(パシフィコ横浜:国立大ホール)は3月10日の開催、明日は震災から丸7年を数えるという前夜の音楽祭だったのだから尚更に…。

 序曲の余韻に包まれて登場した八神純子は、西本智実が操るフルオケ競演版の先陣役に怯む様子も微塵もなく、幕開けの“みずいろの雨”“明日の風”の2曲で一気に聴衆を魅了する。雨/風の歌に続き、持ち時間最後の曲“Mr.ブルー~私の地球~”の詞で〈故郷(ふるさと)を聞かれたら/まよわず地球と答えるの〉と彼女が歌った時点(僅か3曲!)で早くも、この催しの方向性と意義は羅針盤のように示唆された。

 その気圧を引き取って、小野リサがギターを持たずに披露した1曲目が“Canta, Canta Mais”。もっともっと歌って悲しみを忘れようと綴るモラリスの歌詞に、ジョビンが曲を乗せた名曲だ。そして2曲目が“いのちの歌”だったので正直、かなり驚いた。そう、覆面のMiyabi(=竹内まりや)が作詞し、NHK連続テレビ小説内でダブル主演の茉奈佳奈が歌っていたあの話題曲だ。近年の小野が全曲日本語のカヴァー集を連作していたとは寡聞にして知らなかった。新譜では裕次郎の“恋の町札幌”にも挑んでいるが、リサ版“いのちの歌”には心底驚かされ、感動し、今回の参加に際して選曲/カヴァーした意味を染み入るように読み取った。

 華麗なアレンジと各楽器の見事な粒立ちの間を縫い、一語一語が曇りなく響き渡る圧巻の歌唱力で前半を締めたのが小柳ゆき。6月には待望のフルオケ公演を控える彼女だが、その期待値を大いに高める熱唱ぶりだった。そして20分間の休憩を挟み、後半の口火は村治佳織の弦奏で切られた。唯一歌詞のない演奏者である彼女が選んだのは、タンザニアの夕景を描いた自作曲とギター版“戦場のメリークリスマス”というサプライズ。続く尾崎裕哉が父・豊の持ち歌を聴かせれば、NOKKOはREBECCA作品をフルオケ版で――公演3日後のブログで世界の西本智実が「各自の世界観が全面に感じるコンサートでした!」と綴った如く、各持ち時間こそ短いながらも濃密で贅沢な一夜だった。

 歳月が歌の意味するものを変えてしまう不思議さというものがある。――最後の曲“夜明けのブレス”を歌う前に藤井フミヤがそんな話をした。この夜、管弦楽を纏って新たに放たれた歌々のどれもが、そんな意味の変遷を醸し出していた。まるで今宵、こうして集う約束が交わされた上で離れ離れでいたような、そんな作品群が揃い踏みした音楽祭だった。寄りそい、囁き、滲むように染み入りながら、自らの年輪も刻んできた歌うたいと奏者がそこにいた。

 


billboard classics festival 2018 in YOKOHAMA
○3月10日(土)パシフィコ横浜 国立大ホール 開演17:00(終演)
藤井フミヤ/八神純子/小野リサ/NOKKO/小柳ゆき/尾崎裕哉/村治佳織
指揮:西本智実 管弦楽:東京フィル・ビルボードクラシックスオーケストラ

billboard classics festival 2018 in YOKOHAMA
○3月10日(土)パシフィコ横浜 国立大ホール 開演17:00(終演)
藤井フミヤ/八神純子/小野リサ/NOKKO/小柳ゆき/尾崎裕哉/村治佳織
指揮:西本智実 管弦楽:東京フィル・ビルボードクラシックスオーケストラ

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