ベイビーフェイスとのデュエット・アルバム『Love, Marriage & Divorce』(2014年)での復活劇とグラミー賞受賞、そしてバードマンとの婚約。破産申告や難病の発症など、不運続きだったトニ・ブラクストンの人生もここにきてようやく好転してきた印象だが、そんななか『Pulse』(2010年)以来となるソロ新作が到着。これが全8曲トータルで30分強というコンパクトな作りながら実に濃密な内容になっている。ベイビーフェイス&ダリル・シモンズ作の“FOH”などスロウ中心の構成のなか、白眉となるのは先行公開された90sマナーなスムース・ミディアム“Long As I Live”(2005年作『Libra』で2曲に携わったアントニオ・ディクソンのプロデュース)。同タイプのものではリアーナ“Love On The Brain”で名を上げたフレッド・ボール制作のミッドテンポ“Sorry”も貫禄たっぷりで、この路線でぜひともアルバム一枚お願いしたいところ。トリッキー・スチュワートが手掛けたトロピカル・ハウス“Missin'”も悪くない。