完璧主義者アンデルシェフスキが、弾き振りで世に送り出す磨き抜かれたモーツァルト

 こだわりのプログラムを組むことで知られるピョートル・アンデルシェフスキが、ヨーロッパ室内管弦楽団を弾き振りして録音を行った。曲はモーツァルトのピアノ協奏曲第25番、第27番である。

PIOTR ANDERSZEWSKI モーツァルト:ピアノ協奏曲 第25番、第27番 ワーナークラシックス(2018)

 「オーケストラを指揮しながらビアノを弾くと、自分の思っていることが100%に近い形で実現できるから、弾き振りは最適だと思う。でも、実際は何度も繰り返してテイクを録ることは不可能で、限られた条件のなかで納得いく演奏に仕上げなければならない。私は完璧主義者なのでもっと何度も繰り返して録りたいと思うけど、妥協や自分の気持ちを抑制することも必要になる。これが一番難しいところだね」

 アンデルシェフスキは、自分の演奏に納得がいかないと極度のフラストレーションがたまるタイプだという。それは常に完璧を求めるからである。

 「モーツァルトのピアノ協奏曲はとても美しく純粋で、偉大な作品。彼は究極の作曲家だと思う。私は4、5歳のころからモーツァルトに魅了され、いまもその気持ちは変わっていない。だからこそ、いい演奏を生み出したいと思うし、完璧なる美を求めている」

 アンデルシェフスキのモーツァルトはまさに磨きに磨かれた音楽で、成熟度が高く、洞察力に富み、説得力がある。それは幼いころから抱き続けたモーツァルトへの深い愛情の念が凝縮しているからに違いない。

 「私は子どものころから練習嫌いで、師事した先生には『あなた、もうピアノをやめたら』と何度もいわれた。先生からは、才能があるのにそれを無駄にしているとどなられ、私の準備不足を嘆かれた。でも、音楽は好きだったから、ここまで続けてきたわけで、あるときから一生懸命練習するようになった。いまは、完璧に準備できないと、ステージにはかけられない」

 彼は近年、J.S.バッハの作品を集中して演奏している。バッハもまた、子どものころから敬愛する作曲家だ。

 「子どものころパルティータ第1番のある個所がどうしても理解できず、どんなに練習してもわからない。もう放り出したい気分になったけど、あるときふと冒頭の部分がうまく弾けたら、スーッとパズルを解くように全部を理解することができた。いまは《平均律クラヴィーア曲集》を練習しているけど、またまた壁にぶつかっちゃってね、さあ、どうしようか(笑)」

 コンチェルトに関しては、今後はベートーヴェンの第4番と、昔弾いていたバルトークの第1番と再び向き合う。ソロはリーズ国際ピアノ・コンクール時から弾き続けているベートーヴェンの《ディアベッリ変奏曲》を各地で演奏。今秋9月には、読響とモーツァルトで共演する予定。完成度を極めた演奏に酔えそうだ。

 


LIVE INFORMATION

読響名曲シリーズ
○9/21(金)19:00開演 会場:サントリーホール 大ホール
シルヴァン・カンブルラン(指揮)/ピョートル・アンデルシェフスキ(p) /読響みなとみらいホリデー名曲シリーズ

○9/23(日・祝)14:00開演 会場:横浜みなとみらいホール 大ホール
シルヴァン・カンブルラン(指揮)/ピョートル・アンデルシェフスキ(p)
演奏曲目:モーツァルト/ピアノ協奏曲第24番
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