INTERVIEW

Saucy Dog『サラダデイズ』 注目度上昇中のライヴ・バンドが語る、日々の赤裸々な想いを綴った新作

Saucy Dog『サラダデイズ』 注目度上昇中のライヴ・バンドが語る、日々の赤裸々な想いを綴った新作

ひたむきな気持ちを胸に、試行錯誤を繰り返しながら見い出した新しい日々。気鋭の注目バンドが届けた待望の新作は、ライヴの勢いに包んで大切な想いを伝える渾身の快作だ!

前作を超えなければ

 THE ORAL CIGARETTESやフレデリック、パノラマパナマタウンら新進気鋭のバンドを輩出してきたオーディション/育成プロジェクト〈MASH A&R〉の2016年度グランプリを獲得し、代表曲“いつか”のMVが再生数300万回を突破した期待のスリーピース・バンド──Saucy Dogのセカンド・ミニ・アルバム『サラダデイズ』がリリースされた。前作『カントリーロード』のリリースからちょうど1年が経ち、その間には数々のフェスやライヴに出演してきた彼ら。今年は〈スペースシャワー列伝ツアー〉にも抜擢されるなど、快進撃が続いている。

Saucy Dog サラダデイズ MASH A&R(2018)

 「フェスって、ライヴハウスよりも反応が正直ですよね。みんな目当てのバンドが他にあって、そのついでに僕らを観てくれることがいまは多いわけじゃないですか。そこで手応えを感じると嬉しいです。ある意味では怖いですけど、腕試しにもなるというか」(秋澤和貴、ベース)。

 「ライヴで“いつか”をやると、〈来た!〉っていう反応が返ってくるようになったのは嬉しいですね。そこから私たちの曲を好きになってくれる人が、ちょっとずつ増えてきているんだなっていう実感があります」(せとゆいか、ドラムス)。

 今作は、そんな彼らの勢いがそのまま詰め込まれた快作だ。どこまでも澄み渡る青空を想起させる、石原慎也(ヴォーカル/ギター)のピュアでイノセントなヴォーカルを最大限に活かしたアレンジ/サウンド・プロダクションは前作の延長線上にあるもので、ライヴの勢いをそのまま封じ込めたようなフレッシュかつダイナミックなアンサンブルも頼もしい。一方、歌詞はというと、ラヴソング中心だった前作に比べ、表現の幅がグッと広がった。例えばリード曲“真昼の月”では母親への愛を歌い、“メトロノウム”や“バンドワゴンに乗って”などでは、将来への漠然とした不安、音楽への道を選んだ決意などが、赤裸々に綴られているのだ。

 「いままでの僕らが作ってこなかったような楽曲を、もっと増やしたいというのがまずあって。しかも、前作を超えるものにしなければというプレッシャーも感じていましたね。“いつか”が評判イイのは嬉しいしありがたいことなのですが、それを超えるバラードがなかなか書けなくて悩みました。結局、レコーディングの途中で“コンタクトケース”という名曲が生まれたのはラッキーでしたね」(石原)。

 メロディーも、そうした歌詞の変化に合わせて新たなチャレンジに向かっている。50sっぽい曲調がユニークな“曇りのち”は、まずベースとドラムスだけで構成を練り上げ、その上にギターとメロディーが乗るという変則的な曲作りによって生まれたもの。序盤からコーラスワークが印象的な“メトロノウム”も、これまでのSaucy Dogにはなかったスタイルだ。

 「いまは、この“メトロノウム”のコーラスをライヴで再現できるよう、がんばって練習しているところです。和貴にとっては初のハーモニーですからね。楽器がひとつ増えたようでいまから楽しみです」(石原)。

 「私は今回、この曲が一番のお気に入りです。ここまで明確に、私たち自身のことを歌った歌詞って実は珍しいんですよ。3人でハモるコーラスもやっていて楽しいし、早くライヴで披露したい」(せと)。

 

自分たちらしくあること

 そんななかで異色なのが“世界の果て”という楽曲だ。世界中で起きている戦争や紛争、貧困問題をテーマにした歌詞。実はこれ、現在の編成になる前のSaucy Dogで一度レコーディングを行い、シングルのB面に収められていた楽曲。バンド加入前からこの曲が大好きだったという秋澤やせとのかねてからのリクエストによって、今回、編曲して再レコーディングすることになったのだ。

 「あらゆる戦争がなくなり、〈世界平和〉が訪れることを僕は本気で夢見ているんです。高校卒業のときに専門学校の説明会があって、そこで先生に〈僕は音楽で世界を救いたい〉って言ったんですね。そうしたら〈真面目に答えてください〉みたいに言われてしまって。そのことがものすごく悔しかったんですよね。〈戦争がなくなるなんて考えが甘い〉ってみんな言うけど、〈そんな言葉は信じなくていいよ〉って、この曲を通して言いたかったんです」(石原)。

 ここまでピュアでひたむきな考えは、いまのご時世では珍しいかもしれない。しかも〈音楽で、世界を救えると思う?〉と尋ねてみたところ、さらに真摯な答えが返ってきた。

 「救えると思っています。いままで誰も成し遂げたことがないし、すごく難しいことはわかっているけど、そこにはこれからも挑戦していきたいですね。僕の歌詞って、不特定多数に向けたものではなくて、伝えたい相手がちゃんといるんですよ。元カノだったり、母親だったり、友人だったり。“世界の果て”は、僕のことを笑った先生に向けて書きました。伝えたい人がいるということが、曲を書くうえでのモチヴェーションなのかも知れないですね」(石原)。

 伝えるべき相手が明確にいるからこそ、石原の歌詞は説得力を持つのだろう。

 さて、先述の通りSaucy Dogはメンバー全員〈ライヴ・バンド〉という意識が強い。彼らにとってライヴの魅力、醍醐味とは何だろうか。

 「お客さんと同じ空気のなかにいられること。フロアとステージの境界線を取っ払ってひとつになれるみたいな。喩えていうなら、心臓の右心房と左心房(笑)?」(石原)。

 「その日のお客さんの雰囲気に合わせ、臨機応変にライヴのモードを切り替えられる演奏力をアピールしたいです。あとSaucy Dogの良さって、爽やかそうに見えて実は泥臭いというか(笑)。自分で言うのもなんだけど、人間味溢れるキャラにあると思うんですよね」(秋澤)。

 「〈良いライヴってなんだろう〉〈お客さんを喜ばせる方法ってなんだろう〉って、ずっと模索しながら、試行錯誤を繰り返しながらここまで来ました。最近になって思うのは、〈自分たちらしくあること〉が何よりも重要なんじゃないか?って。とにかく自分たちが楽しいライヴをして、その雰囲気がお客さんに伝わってくれたらなって。きっとそこに相乗効果が生まれると思うから」(せと)。

 ライヴでの手応えを噛み締めながら、次に進むべき道を見い出していくSaucy Dog。歌いたいことも増え、音楽性もグッと幅の広がった彼らの今後が楽しみだ。

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