INTERVIEW

ニガミ17才 『ニガミ17才b』 地下の変態、地上へ降り立つ

 

ダンス・チェーンがあらわれた!

――『b』を作ろうって話には、いつなったんですか?

あくび「『a』のレコーディングの最終日にもう次のアルバムの話はしてたと思います。でも岩さんのエンジンはかかってなかったですけど」

岩下「『a』で全部出しきったわけではないけど、嘘つきのときと違うのは、ニガミは作品が完成したときに満足感がある。だって家に帰って自分の音源を聴きますもん。当時は自分が『a』にまだ飽きてなかったから、エンジンがかかってなかったのかな」

――『b』を作るモードにちゃんとなったのはいつぐらいですか?

あくび「まず最初に“ただし、BGM”ができたので、すでにあった“ラブレター”“町の変態”と合わせて3曲録ることになったんです。でも“ただし、BGM”で思いのほか手こずって、その1曲しか録れなくて。それでとりあえずPVを作って、そのPVの公開をアルバム・リリースのニュースに合わせようということになったんです。当初の予定よりかは遅れたんですが、〈b〉という字が〈6〉に見えないこともないので、じゃあ6月6日にリリースしよう、と決まって」

岩下「だから“ただし、BGM”ができた2月ごろが、『b』のプロジェクトの始まりですね」

――“ただし、BGM”の時点で、サウンドのモードが『a』から変わりましたよね。

あくび「ロックの要素がちょっと減ったかな? 岩さんが聴く曲にブームがあって、その時はオシャレで踊れる感じの曲ばっかり聴いていて。それが反映されて、岩さん流のダンス・ミュージックになったんだと思う。スタジオでよく〈踊れる曲がいい〉って指示を出してたし。だから“ただし、BGM”は、岩さんなりのダンス・チェーン」

岩下「〈ダンス・チェーン〉(笑)。なんなんそのドラクエの敵におりそうなやつ」

――〈おどるくさり〉みたいな(笑)

あくび「(笑)。だから〈あー、ニガミってこうなったんだ〉って思う人もいると思うんですけど、ニガミじゃなくて岩さんのブームでこうなったんです(笑)。いずれまたロック寄りに戻る時期も来るだろうし」

岩下「家でスペシャ(スペースシャワーTV)をずっと見てるんです。だから、スペシャが次のニガミのモードを決めていくってことですね」

――(笑)。でも先日拝見したライヴでも、リハが終わって変な曲が流れてたら、岩さんがPAさんに〈もっとノレる曲をかけてください!〉って言ってて。〈あの岩さんがノるとか言ってる!〉って思って(笑)。

あくび「今まではノラせないことに命を賭けてそうだったのに(笑)」

岩下「でもね、お客さんのことをすごい考えるようになったんです。例えば映画とか舞台を観に行って、おもんなかったら嫌やし。音楽なら、〈ノレる〉ってことは〈よかった〉ってことでしょ?」

あくび「〈楽しい〉ってことですね」

岩下「〈ノレる〉という共通言語があるだけでもいいなと思って。まずはお客さんに楽しんでもらわないと」

――今までは〈わからん奴はわからんでいい〉みたいなところもありましたよね。

あくび「たしかに(笑)」

岩下「音楽ってまた違った難しさがあるでしょ。サッカーだったら〈あそこに決めれば得点!〉っていうひとつの目的があって。でも音楽って良くも悪くもゴールがいっぱいあるんですよね、いろんな場所に。〈え、この審判のポケットに決めても得点なん?〉みたいな。だから、ゴールのひとつとして〈ノレる=楽しい〉っていう明確なものがあると、僕としては少しだけやりやすい」

――そうやって、お客さんにちゃんとゴールを提示してるのも変わったところじゃないですか?

あくび「前はお客さんに託してましたもんね。〈わからん奴はわからん〉だったし、ライヴの途中で帰ったりするし」

岩さん「(笑)」

――なんか照れ臭そう(笑)。

 

アングラから地上へ

――サウンドや提示するスタイルが変わる一方で、嘘つきの頃から変わっていないと思ったのは、〈歌詞を聴かせたい〉とずっと言っているところで。曲作りにしても、以前は歌詞や世界観をメンバーに伝えて、そこから曲を練っていくって言ってましたよね。今はどうですか?

岩下「曲によっては今もそうですね。でも、最初からあくびと僕だけ同じ画を共有でき過ぎて盛り上がっちゃうことがある。そうするとスタジオに独特の変な空気が流れるときが毎回訪れる」

あくび「絶対あるね、あの空気(笑)」

岩下「もちろん二人(タツルと小銭)とも、音楽的にはほぼ共有できてるんです。でも、主人公の年齢であったり、曲全体が醸してる色味みたいな話になると、ここ(岩下とあくび)のシンクロ率が高すぎて、何に関してもほぼ同じことを言えて、船酔いみたいになっちゃうときがある」

――だからこそ、あくびさんにはバンドに加入してほしかったわけですよね。

岩下「そうですそうです。例えば映画の話をしても、同じところを見てることが多くて」

あくび「岩さんの感性って、すごい昔の言葉で言うと〈アングラ〉って言うんですかね。〈地下〉な感じがあって。でも岩さんから〈売れたいのよ〉とか〈もっと一般の人にも届けたい〉とか言われたときに、同じ感覚を持ってるけど、私は〈地下と地上と繋げる役割になりたい〉って思ったんですよね。だから岩さんが作詞作業をしているときに、言ってるワードが〈これじゃみんなに伝わらないよ!〉っていうのがけっこうあって、岩さんは〈こんなわかりやすい歌詞ないやろ〉とか言うんですけど、もっとわかりやすくしつつ、でも岩さんのセンスも消さないように悩みながら伝えてます。

今回だったら“ただし、BGM”で〈ばばあ〉とか言ってるじゃないですか。〈その歌詞は紅白歌合戦じゃ歌えないよ〉とか言ったり。岩さんのセンスで言う〈ばばあ〉は、一般的に言う悪口みたいな〈ばばあ〉と違うのは私にはわかるし、岩さんを知ってる人にもわかると思うけど、一般の人にはわからないじゃないですか。そういうギリギリのラインを、赤ペン先生じゃないけど添削しながら、よく話し合ってます」

岩下「……カウンセラーです(笑)」

――二人はお互い、足りないものを補い合ってる関係みたいですよね。岩さんは自分が地下にいる自覚はあるんですか?

岩下「地下なところで評価されたっていう認識はあります。でも、自分の感性がすごく地下だってことはわかってなかったかも」

――で、地上に行きたい? 売れたい?

岩下「売れたいっていうか、1枚でも多くの人に届けたいっていう、バンドをやってる人ならみんなが思うアレです」

――アレ(笑)。あくびさんがいるから、ソレもだいぶ実現されてるんじゃないですか?

岩下「カンダタですよ、僕は」

あくび「かんだた?? 何それ?」

――「蜘蛛の糸」の。

岩下「あなたは蜘蛛の糸なんですよ」

あくび「???」

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