INTERVIEW

ニガミ17才 『ニガミ17才b』 地下の変態、地上へ降り立つ

 

ばばあのエロス

――“ただし、BGM”って、すごく乱暴に言ってしまえば〈僕〉が〈踊るばばあ〉を見ているだけの歌詞なんですが、曲のノリやすさも相まって強烈な世界観が出てるじゃないですか。〈踊るばばあの曲でさらに踊らされてる俺ら〉みたいな。〈ばばあ〉って何なんですか、〈ばばあ〉って(笑)

岩下「本当に、〈ばばあ〉は〈ばばあ〉なんですよ(笑)」

――何の会なんですか、これは。岩さんが実際に体験したことですか?

岩下「いや、ないですね。映画とかでそういうシーンあるじゃないですか。主人公の〈僕〉は親戚の集まりに参加する中学生なんですよね。酒も飲めんし、ガヤガヤしてるし、ワケわからんけど、ばばあが光って見えて、それが宇宙とシンクロしていく」

あくび「かなり初期の段階で岩さんが〈これお葬式なんよ〉って言ってたのがけっこう衝撃的で。そこから今のかたちになるまでにイメージは変わっていったと思うんですけど。誰かが亡くなって、その火葬中に上の座敷の部屋で親戚が集まって、献杯して、寿司でもつまみながら久々にする会話が盛り上がっていって。そのうち踊ったりする親戚も出てくるわけです。そこで主人公の〈僕〉はお酒も飲めないし、オレンジジュースでも飲みながら、ばばあたちが踊る新春舞踊を見ていて。最初は〈どうでもよかさ、そんなもん〉とか思ってるんですけど、熱燗が届いて部屋にその湯気が立ち込めていくと……」

岩下「なんだかエロい感じになっていく(笑)。そんなこと言ってた気がするね」

――ばばあなのに、謎のなまめかしい雰囲気はありますよね(笑)

岩下「ばばあでもまだ色気が残ってるんですね。最初はもっと絡みがあったり、〈太もも〉とか出てきたりしてもっと直接的なエロスがあったりしたのを、〈絡ませんほうが絶対かっこいいわ〉と思って、ばばあを見てるだけにしたんだよね」

――なんでだろう、死とエロスって隣り合わせだからかな。直接的なものを排除しても、なお匂ってくるものがありますよね(笑)。

岩下「それはうれしいですね(笑)」

あくび「だから〈寿司凝視〉とか、その設定は多少は残ってるよね」

――だからか!

岩下「もっと伝わるようにがんばります(笑)。地上とつながるように」

 

ちぇっ しゃー ばさっ ごそごそ かたかた ごくっ ぱきぽきぱき きゅー

――ニガミ17才になってからは歌詞や世界観が先ではない曲もあるんですね。

あくび「楽曲が先にできるパターンも増えましたね。嘘つきは歌詞から作ってたみたいですけど」

岩下「でも作ってる段階で〈こういう歌詞にしよう〉とか、そういうイメージはあるよ。ただ歌詞をつけるまでそれをみんなに言わなくした」

――個人的には“化けるレコード”が一番好きなんですけど、これは、あくびさんが飼っていたインコの〈ばけるくん〉とは関係あるんですか?

あくび「ばけるが病気でそう長くは生きられないってなったときに、岩さんが〈ばけるが生きてるうちにこの曲を仕上げるわ〉って言ってた曲が、今の“ただし、BGM”なんですよ。で、今年の1月にばけるが亡くなり、そのときは曲名を“ただし、BGM”にするか“化けるレコード”にするか迷っていて。結局その曲のタイトルは“ただし、BGM”になったんですけど、“化けるレコード”というタイトルも気に入っていて」

岩下「あくびが我が子のように可愛がってたばけるが病気になって、あくびが変になってたんです。だから、ばけるを思い出すような詞の内容とかではなくて、単純に曲名に〈ばける〉っていう名前が入っていて、聴くたびに思い出す人が思い出せればいいかなと思って付けただけで、別に〈あくびちゃんのばけるのために〉とかってことではないんです」

――なるほど。この曲の世界観は、作曲に苦悩する岩さん自身を表現しているとか

岩下「そうですね。“かわきもの”に近くて、あれも作曲の苦悩みたいなものをテーマにしてるんですけど」

――今までは自分自身をテーマにすることなんてなかったと思うんですけど、それは何か理由があるんですか?

岩下〈この言葉も入れたい〉〈こんな感情になるよね〉っていう感じで、当初描いてた主人公が自分にどんどん重なっていったんですかね。だからその主人公は僕とは違う人間です」

――歌詞で〈ちぇっ しゃー ばさっ ごそごそ かたかた ごくっ ぱきぽきぱき きゅー〉ってさまざまな擬音が登場して、そこが本当に最高なんですが、その後それらを〈やかましい〉と一掃するのは“ファンタ”(嘘つきバービーの楽曲)と一緒ですよね。

あくび「この擬音たちは作曲してるときに岩さんが起こす生活音のすべてで、舌打ちしておしっこして骨鳴らしてパソコンをカタカタして画面じーっと見て、みたいな(笑)。それらがやかましいんでしょうね」

岩下「たしかにこの〈やかましい〉は“ファンタ”とフレーズもやり口も一緒ですよね」

――セルフ・サンプリングしたわけではないんですか?

岩下「全然違います。なんかあるんでしょうね、僕のレパートリーの中に(笑)」

――嘘つきバービーつながりで言うと、本作には“ねこ子”もセルフ・カヴァーされて収録されています。

岩下「Tik Tokとかいうアプリで、“ねこ子”の曲に合わせて自撮り動画を載せるのが流行ってるらしくて、いま“ねこ子”が女子高生の玩具みたいになってるらしくて」

――HIKAKINさんが動画を上げてバズってたやつですよね。

岩下「そう、あれの広告がいたるところで流れて、すごくウザいらしくて。そのせいで、〈この曲作ったやつムカつく〉みたいなコメントがつけられたり、この曲が嫌われてるらしいんですよ。だから、〈それそういう曲ちゃうから!〉って思ってニガミでやることにしたんです。かっこいい曲だっていうのをちゃんとわかってもらおうと」

 

そして『ニガミ17才c』へ?

――さっきもダンス・ミュージックの話が出ましたけど、サウンド面では“化けるレコード”のドラムは打ち込みだし、『やさしい怪人』から再録された2曲(“ラブレター”“町の変態”)も当時は土臭いバンドの音だったのが、今作ではすごくスタイリッシュになって、全体的に洗練された印象を受けました。

岩下「でも、あの2曲はどっちのバージョンもいいよね。それぞれ良さがあって」

あくび「そうそう。あとは、例えば“もつれ”はゾンビの歌なので、リズムはゾンビ感が出るように叩くとかしてますね」

岩下「ドラムの音は全曲でちょこちょこ変えてますね」

――ベースのタツルさんはダブルストップ(重音奏法)とか和音をけっこう使っていて。ああいうベースを弾く人もあまり見ませんけど。

岩下「僕がまったくウワモノを弾かないからかもしれないですね。コードも弾きたがらないし。だんだんスタジオにギターも持ってこなくなって(笑)。それで和音を弾かざるを得ない感じになってるのかもしれないです」

――世界観だけでなくサウンド面でも今後はどう進化していくのか、すごく気になっています。まあそれはスペシャでかかる音楽次第なのかもしれないですけど(笑)。じゃあ最後の質問。今回の『ニガミ17才b』のレコーディング最終日に、次回作の『c』の話は出たんですか?

岩下「えーーーーーーー……(笑)」

あくび「いい質問で終わりますね(笑)。えーーと……」

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