INTERVIEW

ゴーゴー・ペンギン インタヴュー 何処にもいない、何処にも所属していない独自のサウンドを構築するディアスポラなピアノ・トリオ

Photo by Tsuneo Koga

何処にもいない、何処にも所属していない独自のサウンドを構築するディアスポラなピアノ・トリオ

 ブルーノートから2作目となる新作『ア・ハムドラム・スター』をリリースして、ゴーゴー・ペンギンが来日公演をおこなった。イギリス、マンチェスターから登場した、ドラムのロブ・ターナー、ピアノのクリス・アイリングワース、ベースのニック・ブラッカのトリオは、アコースティック楽器だけで、まるでコンピュータで作られたエレクトロニック・ミュージックのようなタイミングで演奏する。録音よりもライヴでその真価を発揮する彼らのステージには注目が集まり、今回多くの観客を集めた。何より印象的だったのは、その演奏の精度が更に上がっていたことだ。単に正確なタイミングを刻むだけではなく、演奏の間や拍子のちょっとしたズレ、あるいは全体を覆うアンビエンスも巧みにコントロールしていたからだ。スピード感のあるシャープな演奏が彼らの持ち味でもあったが、心なしテンポも遅くなっているように感じられた。

 「確かに、昔の《Kamaloka》(アルバム『v2.0』収録曲)とかいま聴くと早いよね。ドラムンベース的なものは減っているかもしれない。テンポが遅くなったというよりも、テンポのどこの拍子に強調を置くかによって、受ける感じが違ってきているからじゃないかな。《Last Words》(アルバム『Fanfares』収録曲)という昔の曲もすごく早く聞こえるけど、実は拍子だけ取るとものすごくスローなんだ」(ブラッカ)

 ライヴの数をこなし、コンビネーションと演奏技術により磨きがかかったことも大きいのだろう。彼らはオーソドックスなピアノ・トリオの装いで、まるでロック・バンド並のハードなツアーをこなしている。

 「前作(『マン・メイド・オブジェクト』)のリリース後は、年間で200日はツアーで回っていたよ。このあともヨーロッパ、イスタンブール、そしてアメリカに行くんだ」(ターナー)

 「特に2016年にゴッドフリー・レジオ監督『コヤニスカッティ』のライヴ・サウンドトラックを各地でやったことは大変だったね。世界中を飛び回っているから、最近はマンチェスターで何が起きているかも分からないんだ。とはいえ、僕らはもともと何処にもいない、所属していない感じだったんだよ。そして、エレクトリック・バンドでもないし、ジャズ・バンドでもない。だからこそ、上手くいっているのかもしれない」(アイリングワース)

 彼らにジャズのアイデンティティを問うと、広く音楽を捉えているという答えが返ってくる。ジャンルを横断するオープンでクリエイティヴなシーンが地元マンチェスターにはあり、その風土から影響されて登場したのは確かなのだが、いまのゴーゴー・ペンギンの音楽が立脚しているのは、マンチェスターやUKジャズという括りでもなく、かと言ってブルーノートやニューヨークのジャズでもない、ディアスポラな表現というのが正しいのかもしれない。

 「ニューヨークに初めて行って演奏して感じたのは、ジャズ・シーンにはいろいろな人がいて、いろいろな考えで、いろいろなことをやっているんだなということ。僕らは小さな、暗くていつも雨が降っている街から出てきて、ただ音楽が好きってだけで続けてきた。もちろん、ニューヨークのシーンや人々をリスペクトしているけどね」(ブラッカ)

GOGO PENGUIN A Humdrum Star Blue Note/ユニバーサル(2018)

 『ア・ハムドラム・スター』には、カリブの賛美歌を聴いているときに生まれたビートというこれまでになかったビート・パターンもあれば、初期のブライアン・イーノのようなアンビエントも聞こえてくる。ゴーゴー・ペンギンがピアノ・トリオというスタイルのままにどんどん新たな要素を咀嚼してアウトプットしていっていることも、来日公演の人気に見るように幅広いリスナー層へも波及を始めていることも、とても興味深い。単に音楽性だけではなくて、立ち位置やスタンスという面でもだ。まだまだリリースのツアーは続いているが、その合間に、ブルーノートによるトニー・ウィリアムスのトリビュート企画への録音をおこなったそうだ。

 


ゴーゴー・ペンギン(GOGO PENGUIN)
イギリスのマンチェスターで結成されたピアノ・トリオ。2015年春にBlue Noteと契約。イギリス国内だけでなくヨーロッパ各地でのツアーも軒並みソールド・アウトするなど、今最も勢いのある新世代ピアノ・トリオ。

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