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I COULD NEVER LOVE ANOTHER
耳で聴いたピープル・トゥリー
テンプテーションズをめぐる音楽の果実は、ここに一本のトゥリーを生んだ

文/轟ひろみ

BOYZ II MEN Motown: A Journey Through Hitsville USA Decca(2007)

モータウンのレーベルメイトだった時期にはさしたる絡みもなかったものの、ベース・シンガーを擁した頃はテンプスの正統後継者のようにも見えた彼ら。古巣の名曲を満遍なく歌ったこちらのカヴァー集でも、幕開けはやはり“Just My Imagination(Running Away With Me)”。オーセンティックなソウル・ハーモニーを披露する限り、帝国の影響から逃れることはできないのだ。

 

DARYL HALL & JOHN OATES Live At The Apollo RCA(1985)

〈モダン・ポップ〉を標榜してブレイクした2人だが、その前身はテンプトーンズなるヴォーカル・グループだった。このライヴ盤ではジャケにも大書しているようにデヴィッド&エディを招いて先人に恩返し。ちょうどチャーリー・プースがネタ使いした“I Can't Go For That”も披露していて、歴史の繋がりを感じたりもする。

 

ROD STEWART Vagabond Heart Warner Bros.(1991)

71年の“(I Know)I'm Losing You”から2009年の“Just My Imagination”に至るまで、そもそもモータウン曲を頻繁に歌う御大ながら、伊達な5人への憧れは格別なよう。本作所収のオマージュ曲“The Motown Song”ではその象徴としてテンプスをコーラスに招聘。プロデュースを手掛けたリチャード・ペリーはこの後テンプスとも組んでいる。

 

DIANA ROSS,THE SUPREMES,THE TEMPTATIONS Joined Together:The Complete Studio Duets Motown(2004)

プライムスの女性版=プライメッツを前身とするシュープリームスとテンプスは、モータウンの男女トップとして共作に至る前から、ポールが初期の振付けを担当するなど何かと縁が深かった。この後は女帝となっていくダイアナだが、後に“Missing You”(84年)のMVをポールに捧げてもいる。

 

BRUNO MARS Unorthodox Jukebox  Atlantic(2012)

もともとホテルや観光地などのステージで物真似シンガー的に歌っていた下積み時代のブルーノは、エルヴィスやマイケルらと並んでテンプスもレパートリーとしていた。彼が持ち前のエンタメ精神を古典から消化吸収したのは間違いないわけで、そんなテンプスが今回“When I Was Your Man”をカヴァーしているのは光栄なのかも。

 

MASTERPIECE The Girl's Alright With Me Whitfield(1980)

社会派路線を押しすぎて、甘いスロウなども歌いたいテンプスとの間に溝ができてしまったノーマン・ホイットフィールド。モータウンを離れてから送り出したのが、自身によるテンプスの『Masterpiece』から名を取った男性グループ。テンプス曲をエディ風のリードで歌わせた表題曲など、〈俺なりのテンプス〉像を表現したノスタルジックな名作だ。

 

THE ROLLING STONES It's Only Rock 'N Roll Rolling Stones(1974)

ブリティッシュ・バンドによるモータウン周辺カヴァーなどは挙げればキリがないものだが、ストーンズは“My Girl”や“Just My Imagination(Running Away With Me)”などテンプスのヒットを取り上げる機会が多かった。なかでも本作に収録された“Ain't Too Proud To Beg”は歌い口からしてほとんど素直なコピー状態なのが微笑ましい。

 

PARLIAMENT Osmium Westbound(1970)

叶わなかったことで宇宙への扉が開いたわけだが……もともとパーラメンツ結成時はテンプスのような正統派に憧れてモータウン入りをめざしていたジョージ・クリントン。テンプスのサイケ路線はアイデア盗用だとたびたび訴えてきたが、エディ・ヘイゼルもレイ・デイヴィスもそのブランドは憧れだったようで。

 

The Get Down RCA(2016)

ヒップホップ黎明期を描いてNetflixで人気を博したドラマの豪華メンツによるサントラ。そのなかでテラス・マーティン制作によってテンプスのカヴァー“Ball Of Confusion”を披露しているのが、今月号のP9にて新作を紹介しているリオン・ブリッジズだ。当時のテンプスはストリートの空気と密接な音を奏でていたのだろう。

 

MICHAEL JACKSON Dangerous Epic(1991)

最初はマイケルにとっても目標のひとつだったに相違ないテンプスだからして、その新作に“Remember The Time”のカヴァーが並んでいるのは何とも感慨深い。モータウン離脱時のテンプスがギャンブル&ハフと組むべくCBS移籍を図るも、彼らがジャクソンズを手掛けて多忙だったため移籍を諦めたという逸話もあり。

 

RICK JAMES Street Songs Motown(1981)

テンプスと同じモータウン/ゴーディから登場したファンクの無頼漢。御大のリユニオンを“Standing On The Top”(82年)で盛り上げるのに先駆け、自身のブレイク作では“Super Freak”のコーラスに彼らをフィーチャーしている。後にMCハマー“U Can't Touch This”で執拗に引用されるあのパートはテンプスの歌声なのだ。

 

THE WAY YOU DO THE THINGS YOU DO
テンプスのカヴァー/リメイク/リサイクルはこんな人たちもやってるよ!