タワーレコード×Sony Classical究極のSACDハイブリッド・コレクション第5弾 究極の復刻の秘密

FRITZ REINER,CHICAGO SYMPHONY ORCHESTRA ベートーヴェン:交響曲第1・5・6・7・9番、「フィデリオ」序曲、「コリオラン」序曲(2018年 DSDリマスター) Sony Classical(2018)

GEORGE SZELL,THE CLEVELAND ORCHESTRA マーラー:交響曲第4・6・10番よりアダージョ、プルガトリオ&R.シュトラウス:家庭交響曲(2018年 DSDリマスター) Sony Classical(2018)

EUGENE ORMANDY,EDWARD POWER BIGGS,THE PHILADELPHIA ORCHESTRA サン=サーンス:交響曲第3番「オルガン付」&ムソルグスキー:展覧会の絵(1962/66年 録音) (2018年 DSDリマスター) Sony Classical(2018)

 2016年6月のシリーズ開始以来、好評を博しているこのシリーズは最新の第5回で合計12タイトルとなった。アナログ録音時代の名盤を、最新技術を用いてアナログ・マスターテープから復刻するいくつかのSACD化プロジェクトのなかでも、確固たるコンセプトを基にリマスター含め現況で最高のクオリティを追求する復刻スタンスとその音質においては、最高峰に位置する注目のプロジェクトだ。基本的にオリジナルのアナログ・マスターテープは本国から門外不出であり、そのテープを使用できるのはごく限られた場合のみである。

 このシリーズの専任エンジニアであるアンドレアス・K・マイヤーは元ソニー・ミュージック・スタジオのエンジニアを長年務め、多くのレコーディングも行い、SPからグールドものも含め数多くの復刻に携わってきた。彼の復刻は、それぞれ状態が異なるマスターテープを必要であれば修復しながら、マルチチャンネル録音の場合は第一世代のマスターからミキシングを行うことから始まる。これは手間がかかる作業だが、ここまで遡ることで本来刻まれていた音を蘇らせることができるのであって、その解像度、密度感たるやLP含めこれまで市販されたどの音よりも格段に高いクオリティで聴くことができる。マスタリングでは当時のエンジニアの意向を重視しながら、これまでの経験を基に整音を行い、音に生命力が宿る。

 今回の3点のうちセルのマーラーはこれまでの復刻と同様、考え抜かれた徹底した解釈が精緻に描かれており、オーマンディは重厚なオケのまさに豪華な響きが、ライナーのベートーヴェンでは従来以上に指揮者の思惑と演奏としての両者の方向性が如実にわかるようになった。この3点は50年代から60年代にかけて、まさにこの3つのアメリカのオケが、それぞれ当時世界最高峰であったことの証拠とも言える、時を超えた姿に他ならない。