『THE ASHTRAY』の中で煙る、リスナーとしてのメンバーの感性

 周りの喧噪から切り離したバンドの内なるクリエイティヴィティーを掘り下げたSuchmosの新作『THE ASHTRAY』。6人のメンバーが自由に出し合ったアイデアを活かしつつ、まとめ上げる過程で、そのアレンジはサイケデリックな目くるめく展開を見せるようになっている。

 「聴きやすさとオルタナティヴな感覚の共存という意味で最近おもしろかったのは、ジョナサン・ウィルソンの『Rare Birds』ですね。ピンク・フロイドを思わせるプログレッシヴな、サイケデリックな要素もあるし、サザン・ロック、フォーク的な要素もあって、『THE ASHTRAY』の制作期間にそういう音楽から受けるようになった影響は、今後の作品でより色濃くなるんじゃないかな」(YONCE)。

 「自分は、60年代の素の音楽、生々しいサウンドにヤラれていて。先のホール・ツアーの場内音楽にも選んだレッド・ツェッペリンのファースト・アルバム、それからLAでライヴを観たんですけど、60年代のサウンドを見直した超サイケなロック・バンドのアースレスをよく聴いてますね。2組ともそうですけど、その土台となっているブルースはサウンド・アプローチ以上にそれを奏でる人の人間力が問われる音楽であって、その人間力の違いが音楽の違いになっているので、そこを楽しみながら聴いていますね」(OK)。

 サイケデリックなアレンジに象徴されるSuchmosの自由な発想は、ロックに止まらず、ジャズやファンクなど、多彩な音楽を貫いて広がる。

 「俺はサンダーキャットの『Drunk』をよく聴いていたんですけど、彼は自分以上の存在になろうとしていないし、このアルバムは彼が自分であることを謳歌した作品だと思うんですよ。彼のようにジャズに根差した音楽であっても自由にやりたい放題やったサウンドはサイケデリックであるとも言えるし、その素直な鳴りから音楽と向き合う姿勢を教えてもらいましたね」(HSU)。

 「僕はその『Drunk』をOGロンC&ザ・チョップスターズがチョップド&スクリュードの手法でリミックスした『Drank』を挙げるかな。アイデアが詰め込まれたオリジナルをリミックスで超越するのは難しいと思うんですけど、彼らはより音楽的な手法で見事に超えていると思いますね」(TAIHEI、キーボード)。

 昨日の音楽を超越し、明日の音楽を鳴らすべく、メンバーが一丸となってポテンシャルを高めるSuchmos。その先進的な姿勢は、今後の作品も左右することになりそうだ。 *小野田雄

文中に登場する作品。