混沌としたエネルギー

――『Velvet Velvet』以降、2人を中心にして、アルバムごとにいろんなミュージシャンをゲストに招く〈スティーリー・ダン方式〉が現在まで続きます。そんななか、最新作『Suburban Baroque』(2017年)は、いまやどんな編成でも、どんなタイプの曲でもカーネーションらしさを出すことができることを証明したような作品でした。

「そうですね。制約があるなかで、どうやって自分たちが納得いくものを生み出せるのか。それをこれほど短期間で探し出せたのは嬉しかったし勉強になりました。『Suburban Baroque』はできればアルバムを通して聴いてもらって、その物語性を味わってほしいですね」

――『Suburban Baroque』からは、大田さんのヴォーカル曲“Little Jetty”が選ばれていますが、2人になったことで大田さんの存在はますます大きくなりましたね。

「大田君はとてもフレキシブルだし、大衆的な感覚を持っているんですよ。そして、とても広い心で僕を放し飼いにしてくれる(笑)。2人で同じように煮詰まってたら大きなモノは作れませんからね。2人だけど僕らのなかで可能性はたくさんあって、ひとつの答えでは満足できないんです」

――2人になったのに、可能性は広がっていくというのがすごいですね。今回のベストに収録された新曲2曲のうち、“Future Song”は、矢部、棚谷、鳥羽といった旧メンバーとのレコーディングです。久しぶりに一緒にやってみていかがでした?

「〈僕らはいま、どんなふうに音を出すんだろう?〉っていうことに興味があったんです。矢部君は現場で曲の骨格やテンポを変えてくれたし、棚谷君は後でシンセでいろんな音を加えてくれた。やっぱり、みんなイマジネーション豊かだなって思いましたね」

――一方“サンセット・モンスターズ”は、松江潤、佐藤優介、岡本啓佑(黒猫チェルシー)など、最近一緒にやることが多い若手たちとのレコーディングです。

「こういう曲は若い人とやってみたいと思ったんです。例えばドラムはムチウチになるくらい首振って叩くような人と(笑)。それで〈いまのカーネーションってモンスターみたいだよね〉っていうのを表したかった。今度の野音のテーマ曲みたいなところもありますね」

――どんなジャンルの音楽でも食べる雑食性のモンスター。しかも、相当タフで簡単には死なない。カーネーションの波乱に満ちた35年の道のりは、まさに“サンセット・モンスターズ”の歌詞にある〈地図のない獣道〉ですね。

「ああ、それ意識してなかったけど出ちゃってますね、自分たちのことが(笑)。ほんと、いろいろ大変だったけど、僕たちには投げ出さないしぶとさがあるんです。良いところで投げ出しちゃったほうが楽になれるんだけど、目に見えない何かに導かれているとしか思えない。もう、この流れは止められないんですよね」

――音楽も歴史も混沌としていて、その混沌としたエネルギーがカーネーションの原動力なのかもしれないですね。

「かもしれない。だとしたら、このベストはバンドのエッセンスを伝えるには、最高のアルバムだと思います」

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