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さまざまな方向に広がっている最近のソナー・コレクティヴ

 97年に設立されたソナー・コレクティヴは、もともとその名称の通りジャザノヴァのメンバーたちが運営する細かなレーベル(ノー・ゼッション、ダイアローグ、ベスト・セヴン他)の集合体だった。当時はメンバーたちもそれぞれ別ユニットを兼任するなどジャザノヴァ自体がコレクティヴ的に機能していたこともあり、そのように多くのDJや演奏家たちの交流から生まれる渦がベルリンのクロスオーヴァー・シーンを盛り上げてきたのだ。ジャザノヴァがアルバム『In Between』を出したあたりからはサブ・レーベルが整理されてソナー・コレクティヴ自体が多彩な色を持つことになり、ジャズやR&B、エレクトロ、ダブ、ネオ・フォークなど各々の個性を備えた新進アクトが数多く送り出されていく。

 2010年代に入るとディクソンの主宰するインナーヴィジョンズが独立し、最近はアナログと配信が主流となっているが、オーセンティックな度合いをやや強めつつもレーベルのマイペースな動きそのものは変わらず。古株のミカトーンやコミックス、ソウル・バンドのレディオ・シチズン、ジャジーなネオ・ソウル系新人のリズ・アク、チルウェイヴ系のグロウ・イン・ザ・ダーク、『The Pool』にも起用されている実力派シンガーのピート・ジョセフなど、これからも引き続き興味深い顔ぶれを届けてくれるだろう。 *轟ひろみ

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