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幅広いリスナーに向けて

――はい、その新曲2つが今回の両A面シングルですね。まず“Life is beautiful”は大らかなスケール感のある曲ですが、ステージで拝見したらお墓に埋葬するみたいな振付けがあったりして、どういうストーリーがあるんでしょう?

アイナ「あれはMVの構成表をいただいた時に、凄い刺さるものがあって。二人でひとつのものをずっと共有してきたのに〈死だけは共有できない〉っていう物語なんですけど、私はそれを個人的に受け止められなくて。で、MVではその物語を表現するとして、振付けでは〈死も共有したい〉っていう願望を込めました。リンリンとアユニがおじいちゃんおばあちゃんの役をしてるんですけど、アユニが天国に行って、一度はけるんですよ。それで、みんなが献花をするとアユニが天国からリンリンを迎えに来て、二人でお花畑に向かうっていうか、また違う死を二人で共有する……っていうイメージで付けました」

――深いですね。MVの内容が先にあってから振りを作ることってあるんですか?

アイナ「初めてですかね。うん、MVを観てくれた人にはライヴでも共通点を感じてもらいながら、でも、〈ライヴだと何か感覚が違うな?〉って思ってほしくて、リンクさせてみました」

チッチ「最初にデモをいただいた時はただストレートなラヴソングだと思ったんですよ。で、歌ってからMVを撮って、〈そういう見方もあったんだ〉って気付いたというか。それで〈人生は美しい〉って何だろう?って最近よく考えてたんですけど、MVのラストカットでおじいさんが共有したものの中に独りでポツンといるのを観て、こういう感情を歌で表現できたらBiSHって凄い強くなるなって思ったんですよ。いままで明るい曲とか強い曲とか、元気な曲をやってきて、“Life is beautiful”はラヴ・バラードなんで、そこでどれだけ新しい自分たちを観せられるかっていうのは凄い新境地なので、私たちにとっては挑戦の一曲。難しい曲なんですけど、これからBiSHにとっては大事な曲になっていくし、大人の人にも共感してもらえると思うので、幅広い人に聴いてもらいたいですね」

――歌詞も普遍的なテーマですよね。作詞は恋愛好男という方ですが……。

モモコ「いろんな名前をお持ちの、あの方ですね(笑)」

アイナ「恋愛好男ってヤバくないですか? めっちゃおもろい(笑)」

――これは照れ隠しですよね。テンポ的には“JAM”に近かったりしますけど、Aメロがラップ風だったり、またいままでにない仕上がりになっています。

モモコ「ラップもそうですし、サビの高音が凄いキレイで、そこも意外とBiSHになかった歌い方じゃないかな。あと、シングル曲でAメロが私から始まって、次ハシヤスメが歌うみたいな感じの歌割になってるのも凄い新鮮だなと思いました」

――6人個々の聴かせどころが均等に出てる感じは、もう一曲の“HIDE the BLUE”もそうですね。そちらは綺麗なストリングスとピアノが軽快なアップになってます。

アユニ「“HIDE the BLUE”は青春を表してて、アニメのタイアップ曲なんですけど、高校生の恋愛物語っていう作品のストーリーにもリンクしてて、人それぞれにある青春の共通点みたいなのが描かれてると思います」

アツコ「うん、凄い青春だし、爽やかだなって思って。で、PVとか振付けに青春要素? 例えば最後の部分で、みんなで集団下校してるみたいな部分があったり」

チッチ「集団下校……仲良い子たちが一緒に帰るみたいな」

アツコ「みたいな感じだったりとか、そういう完全にストレートな青春ソングの中に、サビの一番良いところで変顔がボンッて出たりとかすると〈ああ、何かBiSHっぽいな〉って思ったりしますね。で、これは通勤、通学、朝の時間帯に聴けば〈一日がんばろう〉って思える曲だと、私のデータで出てます」

モモコ「ハシヤスメ・データ」

アツコ「ハシヤスメ・データです」

モモコ「違う層の人たちも取り込めるような曲だと思っていて、アニメのタイアップでもあるし、アニメ好きな人もたぶんこの曲好きっていう人多いんじゃないかな?とか、若い女の子とかもここを入口にして他の曲も聴いてくれたら、もっと好きになってもらえるんじゃないかなって思います」

――リンリンさんは間奏のダンスでめっちゃフィーチャーされてますね。

リンリン「え、あんま踊ったことなかったんで、ちょっと怖かったんですけど。でも、レコーディングする前からめっちゃ好きって思えた曲で、あんまなかったんで、そういうの、いままで」

――あんまりなかったんですね(笑)。

リンリン「アイドルっぽい感じの可愛い曲が好きだから、これがちょっとそれに近いなって思って。だから楽しいです」

――このシングル2曲は両方ともタイアップですし、他にもキリンレモンのCMソングに抜擢されたり、メジャーなお仕事が続いてますよね。そうやって幅広い世間から求められる存在になるなかで、今回の2曲は特に象徴的だと思うんですけど、いつも以上に〈きれいなBiSH〉みたいな側面が前に出てきて、従来の姿を期待してる人からはどう見えてるのかな?とかちょっと思ったりもするんですけど。

チッチ「やっぱ王道を行ってるので、そうですよね。“Life is beautiful”のMVを公開した時も〈こんなのBiSHじゃない〉とかって意見もあったりして。でも、BiSHはずっと同じことをやってく人たちじゃないし、〈まあ、見てろよ〉っていう思いでいます。いろんなおもしろいことをやっていくから、BiSHは。〈染まっちまったな~〉とか思ってる人がいたら、それはその人の負けだなって思いますね(笑)」

――見られ方の変化は実感しますか?

アツコ「うん、でも、それポジティヴに考えると凄い良いことだなと思って。ビジネスでも〈安定=衰退〉って言うじゃないですか? 安定って良いことだけど、それだけだと衰退するし。だから違う側面を見せられたり、いろいろ挑戦できるのは良いことだな、って私はポジティヴに捉えてます」

――どんどん持ち札が増えるわけですからね。

アツコ「〈また一緒かよ~〉ってのよりも、〈え、また違う~〉みたいな感じ、私はおもしろいと思ってますね。いろんなBiSHが見られて、はい」