この見た目にダマされるな! 時にパワフル、時に美麗な歌唱力お化けと、進化し続ける演奏陣!! このスリーピースが俺らの身体を揺さぶりにやってきた!!

BRADIO YES WARNER MUSIC JAPAN(2018)

うわっ! なんだか暑苦しいアーティスト写真! いやちょっと待って、だからと言ってこの文で読むのをやめないで! あなたはBRADIOをご存知ですか? 名前だけは聞いたことある? 知らない? いやいや彼らの音楽を聴いたことがないのは本当に勿体ない! この暑苦しい3人組が極上のファンク・ミュージックを聴かせてくれるのだから!

2010年に結成されたBRADIOは、〈日常に彩りを加えるエンターテインメント〉をコンセプトに活動するエンターテイナー集団。ロックバンドながらファンクやダンス、ブラック・ミュージックの要素を多分に取り入れ、これまで2枚のアルバムと2枚のミニアルバム、7枚のシングルをリリース。そして今回リリースされるのがメジャー初となるアルバム『YES』だ。そんなことより中央のアフロが気になるって? わかりますわかります。彼は名を真行寺貴秋と言い、芸人ではなくれっきとしたボーカリスト。しかもかなりの美声。YouTubeのコメント欄にも〈このアフロはマジ歌唱力お化け〉と書かれている通り、今の日本のファンク界で、こんな歌唱力の持ち主は彼か和田アキ子くらいのものでしょう!

そんな歌唱力お化け・真行寺を支える2人の演奏陣も素晴らしく、ワウやカッティングでファンクのリズムを彩りつつ出るところで出るギター・大山聡一、そしてスラップも飛び出す動きまくりベース・酒井亮輔のパフォーマンスは、これまで以上の進化を確実に遂げている。

本作は、ショータイムの幕開けにふさわしいファンファーレ的な“Funky Kitchen”に始まり、タイトルの通りドゥーワップなスキャットに乗せて真行寺が吠える“スキャット・ビート”、エロさを前面に押し出した歌詞の“Sexy Lover”、郷ひろみの“GOLDFINGER '99”にも匹敵する夏にピッタリの暑苦しいラテン・ファンク“Boom! Boom! ヘブン”へと続いていく。

ほかにも、アース・ウィンド&ファイアーや、あるいはドリカムの“決戦は金曜日”みたいなホーンセクションがカッコ良すぎる“きっと遠く キミともっと遠く”や、伝説のディスコ・ソング“ジンギスカン”やモーニング娘。の“恋のダンスサイト”に次ぐ〈ウーッ! ハーッ! 〉ソング“きらめきDancin’”など、偉大なるファンク・ソングの諸先輩方を想起させずにはいられない名曲たちが出揃っている。

その一方で、歌詞の通り波に揺られる船のようなスムース・ソウル“Sparkling Night”や、アコギを基調としたダークな世界観の“Shout To The Top”、疾走ロックナンバー“INAZUMAジャケット”など、ファンクやダンス・ミュージック以外の音楽的幅広さも提示。また“スキャット・ビート”や“Feel All Right”では絶妙なコード展開で〈ファンクって古い音楽でしょ?〉とでも言いそうな連中を一蹴するような現代流フューチャー・ファンクを見せつけてくれる。極めつきはアルバム・ラストを飾る“LA PA PARADISE”。全編通して流れる真行寺の美麗なファルセットを聴けば、貴方も間違いなくこのアフロのトリコになっているハズだ!

ファンクやディスコの全盛期を過ごした人はこれを機に青春時代を思い出すもよし。ファンクなんて聴いたことがないという人だってリズムに任せて身体を揺らしてみればいいじゃない。それがファンク! それが〈日常に彩りを加える〉BRADIOの音楽なのだから!