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『Pray For The Wicked』から連想するウィキッドな人たち

 デビュー時の印象があまりにも強烈だったせいか、こと日本におけるP!ATDのコアな支持層は干支がひと回りしたいまもパンク/エモ系な気がします。が、ソロ体制になり、フレディ・マーキュリーとフランク・シナトラに心酔するブレンドンの自我がどんどん膨れ上がっているいま、ビッケブランカやマイケル・ブーブレのファンもすっぽり射程圏内に入ってしまったことを、まずお伝えしておきましょう。

 で、『Pray For The Wicked』でのマカロニ・ウェスタンなムードを湛えた“Roaring 20s”や随所で現れる豪快な管/弦アレンジに、UKのヘヴィーを連想したのも束の間、声ネタの早回しを有効活用しながらジャイヴ、ファンク、バルカン・ビートなどの要素をザッピングしていくブレンドンの姿が、出自の似ているジェラルド・ウェイやイマジン・ドラゴンズはもちろん、何となくアウトキャストやN.E.R.D.、ゴリラズとも重なったり……。圧倒的な情報量をとことんキャッチーにまとめた娯楽超大作型のロック・サウンド、これをスルーするのはマジでもったいないです。 *山西絵美