INTERVIEW

PAYFORWARD『inflation』 理想と理解へ向かって己の哲学とメッセージを詰め込んだファースト・アルバム!

PAYFORWARD『inflation』 理想と理解へ向かって己の哲学とメッセージを詰め込んだファースト・アルバム!

 PAYFORWARDという音楽プロジェクトと、小西玲太朗という人間の極めてエネルギッシュな活動ぶりについては、知れば知るほど興味が尽きない。〈音楽とは人々の理解を繋ぐ哲学である〉というコンセプトを、心地良いサウンドとポップなメロディーに乗せて放つPAYFORWARDの音楽は、どこから生まれてくるのか。タイから届いたメールの文面は、ヴァイタリティー溢れるプロフィールそのままに、饒舌で力強いものだった。

 「いわゆる音楽業界の定説で言うのであれば僕はかなりの遅咲きです。だからこそ若い子たちよりも強い想いで、音楽に携われるということが自分にとっての幸せと完全なるイコールで結ばれていることを認識しているのかなと思っています。僕にとってPAYFORWARDを通して表現したいことというのは、最終的には価値観や生き方の提案だと定義付けてます。PAYFORWARDという音楽活動や発信活動を通して影響力を世界レヴェルにつけて、争いごとだとか啀み合いだとかそういうものが〈理解〉というフィルターを経由して溶かせるような影響力を持った存在になりたいなと思っています」。

PAYFORWARD inflation Light&Gravity Publishing(2018)

 ファースト・アルバム『inflation』は、東京に住むアレンジャー/ギタリストの乾修一郎とファイルをやり取りして制作されたもの。キラキラ輝く解放的ダンス・ロック“Monograph”で幕を開ける全6曲は、小西のフェイヴァリットであるMr.Childrenを筆頭に、90年代J-Popのフォーマットを現代に重ね合わせた普遍性が魅力的だ。

 「宇宙の創生における仮説にビッグバン理論というものがあるんですが、ビッグバンの前に起こったのが〈インフレーション〉という現象です。僕らはこの作品で音楽業界の揺らぎからインフレーションを起こし、次の作品でビッグバンを起こして僕らの存在領域を拡げていこうという思いを込めています。なので各楽曲は限りなくキャッチーなものを提案しているし、PAYFORWARD的ポップ・ミュージックというものを追求した内容になっています」。

 まるでショート・ムーヴィーのようなティーンズ・ラヴ・ロマンス“Monograph” があり、〈目に見えるものの裏側に真実がある〉〈今いる場所から飛び出す〉といった積極的メッセージを持つ“レシピ”や“NewORDER”があり、それぞれ個性を主張しながら調和する。PAYFORWARDの世界は強く、そして優しい。

 「ラヴソングとメッセージと、根底にあるものは完全に一緒です。最終的には世界が今より良くなってほしいと思ってるし、良くなるためには愛というものが必要だと思うし、愛を形成するものの最重要構成要素の一つとして平和というものが鍵を握っていると思うし、平和というものは理解によって作られると思っているので」。

 そんな哲学の総論ともいうべき一曲が、イントロに波の音や鳥の声を配したラスト・チューン“Collage”だろう。すべてを包み込む大きな愛の歌の中に、彼の言う〈理解〉の真意がある。

 「基本的に僕は今の日本の風潮が嫌いです。Twitterではあれこれ誰かが匿名で人の足を引っ張ったり攻撃をしていて、ある一方では攻撃を受けている誰かがまた誰かを攻撃しはじめるという連鎖があります。これって何で起こるんだろうなとずっと考えていて、きっと理解が足りないからなんだなという結論に至りました。理解というのは対象になる人物のバックボーンやそれまでの経緯・環境・状況がすべて折り重なってできているということを認識することだと思っていて、逆にそれができれば人は人に共感できるし、優しくなれると思っているんです。そして理解の文化が世界を包み込んだら、あらゆる争いごとがなくなっていくんだと信じています」。

 まだPAYFORWARDを知らなくても、潜在的に共感を覚えてくれるだろう多くの同志へ向け、〈まさにここから、PAYFORWARDという社会活動の側面を帯びた音楽活動を届けていきたいなと思っています〉というメッセージに迷いはない。来るべきビッグバンへの、この作品は大きなステップにきっとなる。

 


PAYFORWARD
小西玲太朗のソロ・プロジェクト。2004年にNO NAME DESIGNのヴォーカル/ギター担当として活動を開始。2007年に同バンドを解散した後、DAdDY WALK AROUNDを結成して2010年にファースト・ミニ・アルバム『Masterplan ONE』をリリースする。並行してデザイナーとして事業を開始し、2012年のバンド解散と同時に音楽活動を休止。起業を経て、キャサリン・ライアン・ハイドの小説「ペイ・フォワード」に感銘を受け、2016年7月よりPAYFORWARDを始動する。2017年1月に初ライヴを開催。乾修一郎をアレンジャーに迎えて楽曲制作を進め、ファースト・ミニ・アルバム『inflation』(Light&Gravity Publishing)を7月4日にリリースする。

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