日本文学史上最高の傑作のひとつ、源氏物語。その54帖を1帖ずつピアノ曲として作っていくプロジェクトの第一段CD。源氏と言うことで典雅な和風の調べが並ぶ、という訳ではなく、またピアニストのルーツでもあるジャズ的リハモも全くない訳ではないが、全体的にはメロディもしっかりしており耳なじみしやすい。桐壺での早くして亡くした母への憧憬、六条御息所の生霊とでもなる狂気、若紫のあどけなさ、どこか滑稽な末摘花、儚げで消えそうで可憐な夕顔、母性で包まれる花散里の暖かさ、空蝉の趣味の良さと矜持…稀代のプレイボーイ源氏の君の逢瀬が、千年の時を経て音で再構築されます。